前半規管型?

 日常の外来診療の中で、検査を行っている動画です。臥位や理学療法も、ベットではなく診察椅子を倒して簡易的に行っています。ゴーグルの固定が甘かったり、頭位眼振検査で、頭位を動かすのが早かったり、眼がちゃんと開いていなかったり色々問題はありますが、外来診療中のほぼ生の画像として見ていただければと思います。右上の体位を録画した画像は、リアルタイムのピクチャーインピクチャーで、後から合成したものではありません。

 BPPV難治例です。右下頭位変換眼振検査で、通常の右後半規管型と回旋方向が反対の方向交代性眼振を示しました。左下頭位では明らかな眼振はみられませんでした。右下からのSemont法を試しましたが、無効でした。

 再来時、症状は変わらず、右下頭位の眼振同じで、左下頭位で、左後半規管型の眼振と同様の眼振があり、左Epley法を施行しましたが、無効でした。


 自覚症状は軽くなってきていたものの、眼振所見は変わらず、左下からのSemont法を試みています。直後に、左下頭位の眼振は減っているよう見えます。


 この症例について、自分なりの考察を書いてみます。

 初診時の、右下懸垂頭位で時計回り、座位で反時計回りの眼振から、左前半規管の半規管結石症かクプラ結石症を疑いました。Semont法は無効でしたが、左下懸垂頭位でも眼振が出るようになりました。クプラ結石がSemont法によって剥がれた結果かもしれません。

 左の絵は、”aVOR”というアプリの画像です。iPhone, iPadのフリーアプリで、半規管の機能と眼振の関係を考えるのにとても便利です。左の前半規管結石症(膨大部側の脚に結石が入っている)想定です。大きな黒丸が結石。顔の向きを変えることもできます。左図は正面と側面の図。

 










 左前半器官の場合、右下懸垂頭位で結石がを動かすためには、相当過度な懸垂頭位を取る必要があります。眼振の方向は右側後半器官に結石があった時の場合と逆回転になるはずです。右下懸垂頭位で時計回り、座位で反時計回り。
(赤矢印が前半器官)真っ逆さまになるくらいの頭位は、診察椅子の上では難しいかもしれません。







 左懸垂頭位では、左前半規管の面に対して回旋する力はかからないため、正常であれば、クプラは刺激されませんが、面が傾くため、結石(赤矢印)があると眼振が起こり得ます。眼振の回転方向は、後半器官に結石があった場合と同じ向きになるはずです。(説明わかりづらいですね)

 もう一度。右下懸垂頭位で時計回りの眼振で、方向交代性を示す場合は、左前半器官の半規管結石症かクプラ結石症の可能性があると思われます。さらに、左下懸垂頭位で、同様の時計回りの眼振で、方向交代性を示す場合は、左前半器官の半規管結石症と考えられます。

 そこで、治療はどうしたら良いのでしょうか?ここら辺から、迷走し始めてしまいました。もう一度、右下頭位(過度な懸垂頭位)からSemont法をした方がよかったかもしれませんが、前回うまく行っていないので、左下からのEpley法を行いました。これでも良いはずなのですが、第3頭位から第4頭位になるところで、回転が逆転します。結石が元の方向へ戻っていると思われます。第2頭位から第3頭位の動きは、前半器官ではあまり意味がなく、かえって結石が逆流する可能性もありそうです。第2頭位からそのまま座位にした方がよかったかもしれません。

 苦肉の作の左下懸垂頭位からのSemont法ですが、うまくいったかは、患者さんが再来していないので、わかりません。結果がわかったら、ご報告いたします、なんだかんだ時間をかけているうちに自然に治ってしまうような気もします。

 今回の結論は、1)通常の後半器官型BPPVの眼振と逆回転する眼振を見たら、前半規管型を疑う。2)患側は逆回転をする方向の反対側。3)患側下でも同じ回転方向の眼振があれば、半規管結石症。4)理学療法は、患側下から始めるEpley法 第3頭位(135度)は飛ばす。または、健側下、過度な懸垂頭位からSemont法。

ent-yamaok@doctor.so-net.ne.jp   やまおか耳鼻咽喉科 2018