トマホーク巡航ミサイル  長距離巡航ミサイルの名称 本来はアメリカ・インディアンが戦闘に使用した斧の英語名


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 イージス艦などの水上艦艇および、潜水艦から発射可能な長距離巡航ミサイル。有人攻撃・爆撃機を危険にさらすことなく、敵地深くの指揮・通信施設、発電・変電所、石油精製・貯蔵施設などの戦略目標に攻撃を行なう精密誘導陸上攻撃兵器。湾岸戦争、コソボ紛争、アフガニスタンでの対テロ報復攻撃にも使用された。
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 トマホーク巡航ミサイルは核弾頭搭載、戦略兵器として1970年代前半に開発され、サイズは潜水艦の魚雷発射管から発射できるよう長さ6.25m、直径53cm重量1910kg以内とされた。制式名称は当初、BGM-109と呼ばれたが、後に変更され水上艦艇搭載型をRGM-109TLAM(Tomahawk Land Attack Missileトマホーク陸上攻撃ミサイル)、潜水艦搭載型をUGM-109と呼ぶ。両者共に搭載される弾頭により単一弾頭搭載型をC型(Block2A)、複合効果をもつ子弾搭載型をD型(Block2B)とした。なお、核弾頭搭載型、艦船攻撃型TASM(Tomahawk Anti Ship Missile)は、廃棄または現役を退いており、ここでは取り上げない。

 トマホーク巡航ミサイルは、小型軽量のターボ・ファン・エンジンを搭載して地上数10mを予め定められた飛行コースで飛行する。速度は最大でマッハ0.75と、ロケット推進のミサイルがマッハ2以上で飛行するのに比べれば遅い。しかし、燃費の良いターボファン・エンジンにより射程は1000kmを超える。小型で、低空を飛行するため、戦闘機や地対空ミサイルなどで迎撃するのは困難だ。

 トマホークは、ロケット・ブースターにより発射されると保護カバーが外れて、操舵翼と主翼、空気取り入れ口を展開、ロケット・ブースターは燃焼後投棄され、ターボ・ファン・エンジンを始動して巡航に移る。

 海上はINS(慣性航法装置)により飛行、陸上ではTERCOM(TERrain COntour Matching地形等高線照合方式)と呼ばれる、標高を数値化した電子マップ(地図)と、搭載する電波高度計から得られる地形データを照らし合わせて現在の位置を特定する、精度は80m前後とされる。

 最終段階ではDSMAC-2(Digital Scene-Matching Area Correlation デジタル式情景照合装置)と呼ばれる、電子光学センサーにより地上をスキャン、事前に用意された情景と比較して飛行コースの修正を行なう。なお夜間には地上を照らすための照明装置を作動させ、地上をストロボライトのような光で照らし出す。電子マップと情景イメージは目標に接近するに従い、範囲サイズが小さくなり約10mの精度を持つ。

目標突入方法は、以下の3種類の機動パターンから選択できる。

  • HAM(Horizontal Attack Maneuver水平攻撃機動) 目標の横から突入。
  • Pop−Up/Terminal-Dive Maneuver(ポップアップ、最終降下機動)目標直前で上昇して逆落としに目標の上面からほぼ垂直に突入
  • Programmed Warhead Detonation Maneuver(事前プログラム爆発機動)目標真上で弾頭を爆発させて、爆風と破片により目標を破壊する

 運用上の制約は、当初、飛行ルート計画作成が、戦域攻撃計画センターのみに限られ柔軟性に欠け、計画立案にも時間を要した。また、誘導装置の心臓部であるTERCOMは砂漠などの特徴の無い地形では信頼性が落ちるため、わざわざ山岳地帯を飛行させたり、飛行ルートが定型化、昼間、視界がよければ、自動小銃などの小型火器でも撃墜可能であった。DSMACも飛行ルート上で基準と成る建物が破壊されてしまうと、機能しなくなるので、他の建物や地形を利用したルートを再設定する必要があった。
 これらの制約を緩和するため、改良型ではGPS(全地球測位システム)を搭載して多彩な飛行コースの設定が可能となった。さらに飛行ルート計画立案も艦上で作成可能となり運用上の柔軟性が向上した。

  構造は、大きく5つに区分される。最前部にTERCOMや電波高度計、DSMAC、INSなどを収めた誘導セクション、この後方はペイロード・セクションとよばれ弾頭や燃料タンクを収納する。
 なお弾頭にはWDU−25/B 454kg爆風・破片炸薬を搭載する、単一弾頭タイプのC型と、BLU−97/B、CEB(Combined Effect Bomblets複合効果子弾)と呼ばれる、対装甲・破片・焼夷効果をもつ166個の子弾を搭載するD型があり、目標に応じて使い分けされる。
 ペイロード・セクション後方は中央胴体セクションで発射後展開される主翼と燃料タンクを収納する。その後方、後部胴体セクションは上下に分かれ、上部に燃料タンク、下部に発射後展開される空気取り入れ口があり、後方には推力270kgを発生するF107-WR-400小型ターボファン・エンジンと空力展開される4枚の操舵翼がある。
 最後部には106型発射用ロケット・ブースターがあり、推力2700kgを12秒間発生して初期加速を行なう。構造はモジュラー構造になっており簡単に改良が可能だ。

 登場以来、精度・信頼性向上のため改良が続けられており、新規製造だけでなく、旧型の改造も行なわれている。代表的なものはBlock3、タクティカル・トマホーク(Block4)などがあり、その概要は以下の通り。

●Block3

  • 有人攻撃機の攻撃開始直前に、敵防空網を無力化するため、秒単位の弾着時間設定が可能となる。
  • DSMAC-2のメモリーを増設して、多彩な飛行経路を選択可能にしたDSMAC-2Aを搭載。
  • GPSを追加して攻撃精度を向上。場合によっては、GPSだけも飛行コースを設定可能となり、運用面での柔軟性を向上させた。
  • C型は弾頭を小型のWDU-36B、318kg爆風・破片炸薬に変更。信管は建物の壁・屋根等を貫通してから爆発させるように遅延信管を装備。炸薬は熱や衝撃に鈍感なものに変更され安全性が向上した。
  • 弾頭の小型化により空いたスペースに燃料105kgを搭載、航続距離を最大1600kmとした。
  • ターボ・ファン・エンジンをF107-WR-402に変更、推力は10%以上向上、燃費は3%減少した。点検・整備間隔を6年として整備・維持経費の削減。
  • 潜水艦発射型では、推力を増加した新型111型ブースターロケット・ブースターを搭載。
  • 戦域攻撃計画センターでの飛行ルート計画立案のスピード・アップ。
  • 潜水艦や空母、指揮艦などでもトマホークの飛行ルート計画立案のできるAfloat Planning Systemの搭載で運用面での柔軟性を向上。

●タクティカル・トマホークTactical TomahawkTACTOM またはBlock4

  • 前方監視テレビカメラを搭載、衛星経由のデータ・リンクで発射後の攻撃目標の変更・再設定や、陸上・海上の移動目標も攻撃可能となる。弾着直前の画像から攻撃の成果を予測可能。
  • 長い航続距離を生かして目標地域上空で長時間滞空可能。
  • 電子妨害に強いGPSを採用。
  • 搭載する艦艇で目標設定可能となり、運用上の柔軟性を向上。
  • 高価なターボ・ファン・エンジンから、燃料効率はやや落ちるが、価格の安いターボ・ジェットに変更。
  • 燃料タンクを大型化して、航続距離を最大で3000kmとした。
  • エンジン給油方法改良と、補正不要なリング・レーザー・ジャイロの採用で点検・整備間隔を15年間とし整備・維持経費を削減。
  • 弾頭に自律誘導型弾頭も計画中。
  • 価格低減および整備維持費用の低減のため、既存部品を多用、部品点数も35%削減。
  • 価格はBlock3の1億7500万円から7100万円(概算値)となった。
名称 RGM-109C/D(水上艦艇発射型)
UGM-109C/D(潜水艦発射型)
TLAM-C/D
タクティカル・トマホーク
Tactical Tomahawk
TACTOM
Block4
Block2A/B Block3
用途  C:陸上ピンポイント攻撃  D:陸上広域目標攻撃 陸上・海上、固定・移動目標攻撃
誘導
装置
TERCOM
INS
DSMAC-2
TERCOM
INS
GPS
DSMAC-2A
前方監視テレビカメラ
画像伝送用衛星データ・リンク装置
INS
GPS
DSMAC-2A
弾頭 C型 WDU−25/B 454kg爆風・破片炸薬 WDU-36/B、318kg爆風・破片炸薬に変更、貫通効果もあり WDU-36/B 
D型 166個CEB(複合効果子弾)
BLU−97/B
炭素繊維放出型もあり
射程km 1120 1600(C型のみ) 3000
目標地域上空での長時間待機も可能
攻撃精度 10m前後 数m
全長m 6.25←
翼幅m 2.67
弾体
直径m
0.52←
エンジン F107-WR-400 F107-WR-402 F122ターボジェットエンジンに変更
重量
kg
C型 1560(水上艦艇発射型)
1500(潜水艦発射型)
1588 1500
D型 1465(水上艦艇発射型)
1510(潜水艦発射型)
不明
速度km/h 880
備考 D型は子弾を散布した後は空のミサイルをそのまま他の目標に突入させたり、囮として使用することも可能 弾着時刻指定を秒単位で可能に
C型燃料搭載量を105kg増加
Afloat Planning Systemで運用面での柔軟性が高まる
衛星経由で発射後の攻撃目標の変更・再設定や戦場監視機能
価格・整備維持費用低減のため、商用品多用、部品点数を35%削減
燃料タンクを大型化
エンジン給油方法の改良、補正の不要なリング・レーザー・ジャイロの採用で点検・整備間隔は15年間

                                                            2006年 6月12日 改訂


性能・諸元
RGM-109C(水上艦艇発射型)Block3
全長:6.25m
翼幅:2.67m
弾体直径:0.52m
射程:1600km
重量:1588kg
弾頭:WDU-36/B、318kg爆風・破片炸薬
誘導方式:TERCOM・INS・GPS・DSMAC-2A
速度:600−900km
メーカー:レイセオン社


参考文献

艦載兵器ハンドブック 世界の艦船別冊 海人社
雑誌 軍事研究 2000年7月号 艦載陸上攻撃武器 多田智彦
雑誌 軍事研究 2001年6月号 近未来/遠未来の艦載兵器 多田智彦
雑誌 世界の艦船 1990.8号 米海軍のウエポン・システムA対空兵器 野木恵一
大図解 世界のミサイル・ロケット兵器 坂本明 グリーンアロー出版社
兵器最先端3太平洋艦隊読売新聞社編 読売新聞社
米軍最新兵器1500 成美堂出版社編 成美堂出版
世界の近未来兵器カタログ 日本兵器研究会編 アリアドネ企画
世界のミサイル 弾道ミサイルと巡航ミサイル 小都元著 新紀元社
CARRIER A Guided Tour of an Aircraft Carrier Tom Clancy BERKLEY BOOKS
Federation of American Scientistsホームページ
Raytheon社ホームページ
 TOMAHAWK CRUISE MISSILE MIL-TECH SERIES Nigel Macknight Mortorbooks International

Tomahawk line under Threat Jane's Defence Weekly 19 March 2014
U.S Navy Fact File

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