核兵器 核分裂・核融合反応を利用する兵器の総称。


解説                       総合索引

 ウラン235プルトニウム239の原子核の分裂、または重水素、三重水素の原子核の融合により発生するエネルギーを、極めて短時間に放出し、通常兵器に比べ、桁違いに大きな破壊力を有する兵器。
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通常兵器に使用される炸薬は、化学反応によるエネルギーを利用している。しかし、核兵器は、原子核の分裂、または、融合によるエネルギーを利用する。両者の、1原子核当たりのエネルギー量の差は、数百万倍以上である。

 原子力発電も、核分裂を利用している。しかし、使用されるウラン235等、核物質の濃度は3〜6%程度で、核兵器に比べ大幅に低い。また核分裂に要する時間も、核兵器では百万分の1秒以下の短い時間に、大量のエネルギーを放出するのに対して、原子力発電では、時間を掛けて、ゆっくりとエネルギーを取り出す。 



 本稿では、核分裂核融合兵器の構造、爆発過程被害に付いて述べる。



 
核分裂兵器 いわゆる「原爆」 

 核分裂兵器は、構造により2つに分類される。

  • 砲身型(ガン・バレル型)

    臨界量未満の半球形ウラン235を2つ、頑丈な砲身の両端に設置、外周をタンパーで覆い、半球形のウランの中心には、核分裂の引き金となる中性子発生装置を設置する。高性能爆薬により、片側のウラン235を撃ち出し、一気に合体させると、合体したウラン235は、臨界量を超え、中性子発生装置から放出される中性子により核分裂連鎖反応を起こす。構造は簡単で、信頼性も高い。米国が広島に投下した、核兵器リトル・ボーイ(原爆)も砲身型であり、爆発試験を行うことなく、実戦に投入された。
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    欠点としては、核物質の利用効率は低く、使用するウラン235の内、実際に核分裂に使用される量はリトル・ボーイでは約1%程度だったとされる。つまり使用されたウラン235の98%以上は、核分裂することなく飛散してしまったのである。また、構造上、小型化には制約がある。なお、自発核分裂の確率が高い、プルトニウム239では、所定の爆発力を発揮できない。



  • 爆縮型(インプロージョン型)
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    臨界量未満の球形プルトニウム239と、この中心部分に中性子発生装置を設置する。プルトニウム239の外周はタンパーで覆われる。この外側に、爆薬レンズと呼ばれる、2種類以上の爆発速度を有する爆薬を、特殊な形状に設置。これを同時に起爆(誤差:10万分の1秒以下)すると、プルトニウム239は衝撃波により、一気に圧縮され超臨界となる。同時に中心部に設置された、中性子発生装置から中性子が放出され、核分裂連鎖反応が始まる。
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    構造は複雑であるが、プルトニウム239は臨界未満の量で使用可能であり、小型化できる。またウラン235も利用可能である。ただし、球形を保ったまま、圧縮する爆薬レンズの設計には、高度な知識と技術が必要である。また、構造は複雑なため、爆発実験も必要だ。米国も砲身型の「原爆」は実験をせず、広島に投下したが、長崎に投下された爆縮型ファット・マンについては、爆発実験を行っている。

 核融合兵器(熱核兵器) いわゆる「水爆」

 核融合に使用されるのは、元素の中で最も軽い水素の同位体、重水素や三重水素である。これは、原子核の中の陽子数が少ないため、核同士の反発力が弱く、核融合させやすいからである。
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 核融合には、数千万度以上の超高温を必要とする。このため、核融合兵器は熱核兵器(ThermonuclearーWeapon)とも呼ばれる。この超高温を発生するため、先に述べた核分裂兵器を利用する。

 米国が最初に開発した水爆は、液体の重水素を利用したことから「湿式」と呼ばれる。超低温の重水素の蒸発を防ぐため、魔法瓶の様な真空の断熱層を必要とし、大型で、保守に手間が掛かり、実用的ではなかった。
 そこで、リチウムの同位元素であるリチウム6などに、重水素を化合させた金属結晶である、重水素化リチウムを利用した「乾式」と呼ばれる方式が開発され、現在の主流となっている。


 核融合兵器の構造は、起爆用の核分裂兵器と、ウラン238製容器に、核融合の燃料となる重水素化リチウムを収納する。


 核分裂の超高温と放射線により、重水素化リチウムは、重水素と三重水素に変化し、核融合反応が開始される。この時、放出される高速中性子により、容器のウラン238までもが核分裂を起こす。
 全体として発生するエネルギーは、核分裂兵器の数百倍以上とされ、58メガトン(TNT火薬5千8百万トン)の破壊力を有するタイプも製造された。


 ただし、あまりに破壊力の大きいタイプは、影響範囲が広く、大型となるため使い勝手が悪い。現在では命中精度の向上により弾道ミサイルでは、1メガトン(TNT換算で百万トン相当)以下のタイプが一般的である。


 核兵器爆発の過程

 核分裂または核融合により、超高温(数百万度以上)の火球が生成され、熱線、アルファ線、ベーター線、中性子線、ガンマ線などの強烈な電磁波および高速粒子線が放出される。
 
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  火球は、急速に膨張し、周りの空気を急激に圧縮するため、衝撃波が発生。建物などの施設および、人員に被害を与える。 衝撃波が拡散した後、
火球の温度は急速に低下、気圧は負圧となり、周囲から空気が押し寄せる。これに伴い、地上から破片等を巻き込む。火球は高温で空気より軽いため上昇するが、空気抵抗により扁平となり、キノコ雲を形成する。Copyrig

 核爆発時に放出された、核分裂生成物、未分裂の核物質および、中性子照射により放射性物質に変化した破片などの「死の灰」が時間経過と共に地上に落下する。


 


 核兵器による被害 大きく4つに分類される。

  • 熱線、可視光

     核爆発による、数百万度以上の超高温の火球から放射される熱線により、被害を与える。また火球から放射される閃光(可視光)は視力障害を引き起こす。
     
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  • 爆風(衝撃波)

     火球の急速な膨張により、周囲の空気が圧縮され、衝撃波が発生する。これは、爆心地から、ほぼ同心円状にひろがり、被害を与える。その後、火球付近の圧力は低下し、周囲より低くなる。周囲からは、空気が流れ込み、衝撃波とは逆方向に強烈な風が吹き、建物などの被害を拡大する。


    地上または地中で、核爆発が起きると、衝撃波により地中に建設された、司令部や兵器貯蔵施設なども破壊される。
     
  • 放射線

     核爆発により放出される放射線は、アルファ線、ベーター線、中性子線などの高速粒子線と、ガンマ線などの電磁波で構成される。


    この他、核分裂により発生する、セシウム137やストロンチウム90などの核分裂生成物、核分裂に利用されず、飛散した核物質、中性子照射により放射性物質に変化した破片など、「死の灰」と呼ばれる放射性降下物を大量に放出、周辺地域を長期に渡り汚染、放射線障害や癌の発生率も高くなる。

     
  • 電磁パルス(EMP:Electro-Magnetic Pulse)

    核爆発により放出された電磁波により、高電圧の電磁パルスが発生し、通信、送電、コンピュータ、レーダーなどの機能を一瞬で麻痺させる。特に成層圏で核爆発が発生した場合、影響は広範囲におよぶ。


 以上の被害の程度は、核兵器の威力、地表もしくは海面からの高度、天候、地形により影響を受ける。

 建物、人員などに被害を与え、使用後の放射能汚染を最小限にしたい場合は、高度数百mでの空中爆発を選択する。これに対して、地下司令部、ミサイル・サイロなどを目標とする場合には、地表もしくは、地下数10mで爆発させる、地表爆発を選択する。
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  また、核実験の場合、地下数百m以下で行う地下爆発などがある。この場合、地上のへの影響は比較的少ないが、土壌および地下水脈に、長期に渡り深刻な放射能汚染を引き起こす。



 以下に米国の現在保有する核兵器の一例を挙げる。

制式名称 B61 B83 W87
全  長m 3.6 3.6 1.8
弾体直径m 0.3 0.5 0.6
重  量kg 548 1088 不明
威  力キロトン 10、100〜500 1000〜2000 300〜475
備  考 航空機搭載型 航空機搭載型 ミニットマンIII
弾道ミサイル搭載型

 現在の核兵器保有国は、米国、ロシア、中国、イギリス、フランス、インド、パキスタンである。この他、イスラエル、北朝鮮なども核兵器を保有している可能性がある。

                          2012年11月 9日改訂


参考文献

核兵器のしくみ 山田克哉 講談社現代新書1700 株式会社 講談社
原子爆弾 山田克哉 ブルーバックス B−1128 株式会社 講談社
原子爆弾から原子力発電まで 原子力のことがわかる本 舘野淳監修 数研出版
原子力がひらく世紀 社団法人日本原子力学会編 
原爆から水爆へ 東西冷戦の知られざる内幕 上・下 リチャード・ローズ 訳:小沢千重子・神沼二真 株式会社 紀伊国屋書店
東京に核兵器テロ! 高田純 株式会社 講談社
生物・化学・核テロから身を守る方法 アンジェロ・アクィスタ 訳:楡井浩一 株式会社 草思社
よくわかる 核兵器 航空ジャーナル別冊 株式会社 航空ジャーナル社
U・S・ウエポン・ハンドブック 宮本勲編著 原書房
EXPLOSIVES,PROPELLANTS & PYROTECHINICS  A Bailery & S G Murray BRASSEY'S
Federation of American Scientistsホームページ
Jane's STRATEGIC WEAPON SYSTEMS ISSUE THIRTY-NINE Jane's Information Groups
 
U.S. Department of Energyホームページ

 

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