MOAB モアブと読む。Massive Ordnance Air Blastの頭文字を取った名称。意訳すれば大規模爆風兵器。


解説                           総合索引
   
 GPS誘導の超大型爆弾。爆発時に発生する強力な爆風(衝撃波)により、広範囲に分散した部隊、施設、および地雷原などの無力化に使用される。
爆発力の大きさと、発生する巨大なキノコ雲が敵に与える心理的効果は大きい。制式名称GBU−43/B。
Copyright (c)2003-2008 Weapons School  All rights reserved.
 
MOABは、米空軍の現有する通常兵器では最大級の破壊力を持ち、重量9752kg、全長9.14m、弾体直径1.03mと超大型だ。空軍内部では語呂合わせでMother of All Bombs”「全ての爆弾の母」とも呼ばれている。

 MOABは、BLU-82/B、デイジー・カッターの後継として2002年開発に着手、2003年3月11日、初の実弾投下試験を行った。

 MOABは「戦術核に次ぐ威力」?

 一部のマスコミなどでは、MOABを「戦術核に次ぐ威力」であるとセンセーショナルな報道している。

 彼らの言う「戦術核」とは、TNT爆薬換算で0.3キロトン〜10キロトン程度の核兵器を指す様だが、MOABのTNT換算威力は約10トンで、0.3キロトンの「戦術核」ですら30倍、10キロトンでは1000倍と桁違いである。
Copyright (c)2003-2008 Weapons School  All rights reserved.


 また核兵器は、爆風(衝撃波)だけでなく、強力な熱線、放射線および放射性降下物など、通常兵器には無い、様々な被害を、広範囲かつ長期間に渡り及ぼす。核兵器は、通常兵器とは次元の異なる兵器であることを理解すべきであり、MOABを「戦術核に次ぐ威力」とする表現は、不適切である。

     

 構造に付いては、米空軍から公表された資料は無く、以下はWeapons Schoolの推測である。
   
 弾体は爆風効果を妨げない薄いアルミニウム製で、前部は円錐形をしており、2本の信管延長パイプが突き出している。この先端にはM904着発信管が取り付けられており、地面から約1mの高さで、MOABを起爆し、爆風を効果的に拡散させる。中央は8482kgのトリトナール炸薬を収容する弾頭部分で、外部には分厚い安定翼が取り付けられる。

 【 捕 捉 】

  • トリトナール
    TNT爆薬80%、アルミニウム粉末20%の軍用混合爆薬。
    蒸気などで加熱、溶解した状態で弾体に溶填(ようてん:溶かして流し込む)され、冷えると固体状となる。爆弾等に使用される。

 一部雑誌などでは、アルミニウム粉末が添加されていることから、これを空中に散布した後、粉塵爆発させるとの記述もある。しかし、トリトナールは、粉塵爆発を起こす爆薬ではない。
Copyright (c)2003-2008 Weapons School  All rights reserved.
 
爆薬と言う言葉に粉状をイメージする者も多いが、軍用爆薬の多くは固体状で使用される。

 爆薬に添加されるアルミニウム粉末は、粉塵爆発を起こすためではなく、爆発時に発生する熱量を増加させ、大きな爆風を発生させる役割を持つ。火薬類にアルミニウム粉末を添加するのは決して特別なことではない。
 また、アルミニウム粉末を空中に散布して爆発させるためには、濃度などの条件が厳しく、信頼性に欠け、実用兵器とはなり得ない。

 後部は、GPSなどの誘導装置および、飛行制御装置を内蔵する。最後部には格子状の操舵翼を装着しており、投下後展開される。
 格子状の操舵翼は、従来型に比べ小型ながら大きな操舵力を持ち、作動に必要な動力および操舵角も少ないなどの利点を持つ。このタイプの操舵面を使用している兵器は、ロシア製空対空ミサイルAA-12アダー、短距離弾道ミサイルSS-23スパイダーなどがある。

 なお、写真のMOABには4本の黒い帯があるが、これは単なるマーキングでは無く、詳細に観察すると、断面はL字型をしている。薄肉の弾体を強化するため取り付けられた補強材、もしくはMOABを搭載するパレット上で、自重を分散する役割を担っていると思われる。

 2003年3月11日の実弾投下試験では、特殊作戦機MC−130コンバット・タロンの、後部ランプから投下された。デイジー・カッターではパラシュートを使用して投下するため風に影響されやすく、ある程度高度を下げて投下する必要があった。しかし、GPS誘導を利用したMOABは、バラシュート無しで、比較的安全な高々度から投下可能となり、投下機の生存性を向上させ、運用面での柔軟性も増した。
Copyright (c)2003-2008 Weapons School  All rights reserved.
 投下後、パレットとMOABは切離され、GPS誘導により自律して目標に向け落下する。
CEP(半数必中界)は12.8mとされる。地面から約1mの高さで爆発して、強力な爆風により、周囲数kmに被害を与える。しかし、爆発力が余りに大きいため、市街地での使用は制限され、開発から4年以上経過しているにも拘わらず、実戦投入されていない。

 全長9.14m、翼幅3m(推定)のMOABを、機内爆弾倉に収容できる爆撃機は、米空軍には存在しない。B-1、B-52は爆弾倉の横幅が不足する。ただし、機体外部パイロンを使用すれば可能性はある。なお、B-2では爆弾倉の長さが8m以下のためMOABの搭載は不可能だ。

                                        2008年4月11日改訂


性能・諸元

全   長:9.14m
弾体直径:1.03m

翼   幅:3m(推定)

総 重 量:9752kg
炸薬重量:8482kgトリトナール


参考文献

イラク戦争 注目の航空兵器 野木恵一 雑誌航空ファン2003年6月号 株式会社文林堂
エネルギー物質ハンドブック 社団法人 火薬学会/編 共立出版株式会社
緊急企画「対イラク戦争とアメリカ軍」Vol2「衝撃と恐怖」の超兵器と汎地球輸送システム 軍事情報研究会 雑誌軍事研究 2003年5月号 株式会社ジャパン・ミリタリー・レビュー
火器弾薬技術ハンドブック(改訂版)弾道学研究会編 財団法人防衛技術協会
現代の驚異「進化する爆弾」 ヒストリーチャンネル
戦闘機年鑑 青木謙知 イカロス出版
燃料気化爆薬の原理とメカニズム 野木恵一 雑誌軍事研究 2002年4月号 株式会社ジャパン・ミリタリー・レビュー

フューチャーウェポン「恐怖の大規模爆弾」ディスカバリー・チャンネル
B-1 LANCER  The Most Complicated Warplane Ever Developed Dennis R.Jenkins McGraw-Hil
Bone in action B-1 Lancer Lou Drendel Aircraft Number179 squadron/signal publications
Global securityホームページ
Jane's Air-Lunched Weapons Issue Forty-nine Jane's Information Groups
Jane's Strategic Weapon Systems Jane's Information Groups
Tactical Missile Warheads Joseph Carleone  Volume155 PROGRESS IN ASTRONAUTICS AND AERONAUTICS
米国防省発表http://www.defenselink.mil/photos/Mar2003/030311-D-9085M-007.html

Aerospaceトップページへ

Top     Land      Sea     Others

 Copyright (c)2003-2008 Weapons School  All rights reserved.