IED  アイ・イー・ディーと読む。Improvised Explosive Deviceの頭文字を取った略語。直訳すれば即製爆発装置


解説.                            総合索引

 有り合わせの爆発物、または可燃物等の爆発により、人の殺傷もしくは、施設などの破壊を目的とする装置。道路脇に設置される場合が多いため、
路肩爆弾(Roadside bombs)との呼び方もある。
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 イラク、アフガニスタンなどにおいて、米国主導により行われている対テロ戦争で、戦闘による死者は3千3百名を超え、負傷者は約3万名(2008年6月3日現在)にのぼる。この半数以上は、IEDが原因である。また、市場、モスク(イスラム教寺院)などの攻撃にも使用され、一般市民の被害も多い。
 米国防省は、IED対策を最優先課題として取り組んでおり、統合IED対策組織(JIEDDO:Joint IED Defeat Organization)を立ち上げ、2006〜2008会計年度で、3兆円以上の予算投入を予定している。

 IEDは、決して新しい兵器ではなく、パレスチナ地域を占領するイスラエル軍や、北アイルランドに駐留するイギリス軍もIEDに悩まされて来た。

 IEDを使用するのは、主に反政府活動を行うゲリラ、テロリストである。これは人員、装備の充実した正規軍に対して、人員、装備も劣る集団が、正攻法では勝利の見込みのないため採用する場合が多い。

 IEDは、少人数で秘密裏に設置可能であり、離れた場所からも起爆できるため、犯人特定が困難な上、安価で、相手側に大きな人的、物理的損害を強要できる。また、兵士、一般市民に与える不安感など、心理的効果も大きい。IED攻撃を行うグループはイラクに100以上存在し、各グループは6〜10名で構成される。グループ間の繋がりは薄く、摘発は難しい。


本稿ではIEDの構造、殺傷力、攻撃対象、対抗策に付いて解説する。

IEDの構造

IEDの構造は、爆発物もしくは可燃物、
起爆(点火)装置、容器に分類される。

  • 爆発物もしくは可燃物
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    手榴弾、地雷、砲弾、ロケット弾、航空機用爆弾などの軍用弾薬の他、ダイナマイトなどの工業用爆薬、LP(液化石油)ガス、ガソリンなどの可燃物を使用する場合もある。

    2004年頃までは、60mmもしくは、81mmの迫撃砲弾が主流であった。しかし、2006年辺りからは大型の122mm、155mm砲弾を数珠繋ぎにしたタイプなど、殺傷力の大きなIEDが増えている。最近では装甲車輌、MRAP(耐地雷・待ち伏せ防御車両)にも有効な、EFP(爆発成形弾)を利用したIEDも増加傾向にある。

  • 起爆(点火)装置

    起爆装置には、電気雷管と、電源(電池)を組み合わせたタイプが一般的である。起爆方法は、様々で以下にその種類を挙げる。


    【指令起爆方式】
    有線、無線、赤外線などを利用し起爆する方法。無線を利用すれば、数百メートル離れた場所からでも起爆可能である。携帯電話、ポケベル、車庫扉用リモコンなどを使用する。
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    【時限起爆方式】
    時計、タイマーなどを利用して、希望する時間に起爆する。

    【仕掛起爆方式】
    圧力、人の動作などを利用して起爆する。人、車両の重量による圧力を感知して起爆するタイプや、ドアを開けると起爆するタイプなど。

  • 容器

    爆発物と起爆装置など収容し、その存在を覆い隠す。
    段ボール箱、缶、衣類、バッグ、ゴミ袋、麻袋、金属パイプ、コンクリートブロック、タイヤ、縁石、電柱、ガードレール、動物の死骸、車両、船舶、航空機まで多種多様である。
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    乗用車などの車両に爆発物を積み、警察署、軍施設、モスク(イスラム教寺院)、市場などへ警戒網を突破して突入し、爆発させる車載IED(VBIED:Vehicle Borne Improvised Explosive Device:)も多発している。


    車両だけではなく、2000年イエメンのアデン港において、米駆逐艦が小型ボートによる自爆攻撃により、死傷者を出し、船体を損傷した例にもあるように、船舶の他、航空機などを使用した自爆攻撃が行われる可能性もある。
     このタイプのIEDは、機動性を有し、突入阻止は困難であり、大量の爆発物の運搬、隠蔽も容易である上、搭載する燃料による焼夷効果で被害を拡大させる。


IEDの殺傷力

爆薬もしくは可燃物の爆発時に発生する、高温、高圧ガスによりIEDの殺傷力はもたらされ、主な要素を以下に挙げる。


  • 爆発時に発生する、高温ガスの温度は摂氏千度を超える。この熱により火傷、火災を発生させる。
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  • 爆風(衝撃波)
    爆発時に発生する高圧ガスは、周囲の空気を急激に圧縮、衝撃波を形成する。爆風は建物を破壊し、人、車両なども吹き飛ばす。また、耳、肺などの内臓器官にも損傷を与える。

    衝撃波は障害物がなければ、ほぼ球形に広がる。しかし、建物、地形により、反射もしくは、回り込むため、被害が特定の場所に集中する場合もある。

  • 破片
    砲弾などの破片が秒速1500m以上で放出される。また、衝撃波により破壊された建物の破片や、土砂なども飛び散り危険である。破片の飛翔距離は爆薬の種類、量、破片の重量、形状により変化する。

 以上の要素が複合して人員、車両、施設等に被害を及ぼす。被害の及ぶ範囲は、使用される爆薬量・種類により変化するが、TNT爆薬に換算した場合の最小避難距離を示す。

IEDの種類 TNT換算の爆薬重量kg 屋外最小避難距離 m
パイプ爆弾 2.3 259
小型車 車載型爆弾 227 457
ワゴン車 車載型爆弾 1814 838
配送用トラック 車載型爆弾 4536 1143
タンクローリー 車載型爆弾 13608 1982
セミトレーラー 車載型爆弾 27216 2134


IDEの攻撃対象

 パトロール部隊、輸送部隊、検問所、モスク(イスラム教寺院)、市場、警察署、軍施設など。この他、IEDの処理に当たる爆発物処理班および、IEDによる負傷者を運ぶ為、現場に飛来する、急患輸送用ヘリコプターも攻撃対象となっている。


IEDへの対抗策

 IEDへの対抗策としては、兵士に対処方法を訓練するのは勿論、爆風・破片に耐えるMRAP等の装甲車両を配備し、防弾チョッキ、ヘルメット、保護メガネ、耐火服、耳栓の着用により、死傷率を減少させる。不審物の調査、およびIEDの処分には遠隔操作ロボットを使用し、爆発物処理班の安全を確保する。
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 設置されたIEDを探知するには、人の目だけでなく
、金属探知機、爆薬探知犬、火薬探知センサー、地中レーダー、光学・赤外線センサー、航空機搭載SAR(合成開口レーダー)なども使用される。

 IEDは、無線による指令起爆方式が大半を占めるため、妨害電波もしくは、指向性高出力電磁パルスによりIEDを構成する電子回路を無力化する。ただし、このような装置は味方の通信に妨害を与える可能性もある。


 発見されたIEDを処理するだけでは不十分で、パトロール部隊、監視ポスト、検問所、無人偵察機などを利用した継続的な監視を行い、IED攻撃を行うグループの活動を阻止する。また、武器・弾薬等の隠匿場所を捜索し、IED材料の供給を止める必要がある。

 兵士のIEDに対する心構え    一例

常に警戒を怠るな、周囲を注意深く観察せよ

防弾チョッキ、ヘルメット、保護メガネを着用せよ
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装甲車両、MRAPを活用せよ

同じルートを通るな、定型化された行動は攻撃対象となりやすい

不審物に近づくな、爆発物処理班に任せろ

橋、交差点、交通渋滞に注意

車両の速度を落とすな

車両の間隔を空けよ

IEDを発見しても気を緩めるな、第二・第三のIEDが仕掛けられていると思え

IED攻撃に遭遇しても、停止するな、一刻も早く危険地帯から退避せよ

直感を信じろ

地域住民の行動が何時もと違う場合は要注意

無線や、携帯電話は、IEDを起爆させる場合がある

 IEDには様々な種類があり、本稿に取り上げたタイプは、その一部に過ぎない。今後も更に強力で、処分の困難なIEDが出現するだろう。
                                      2008年6月7日作成


参考文献

図説イラク戦争とアメリカ占領軍 河津幸英 アリアドネ企画
IED(即製爆弾)の脅威 野木恵一 軍事研究2006年3月号 ジャパンミリタリーレビュー社
A Military Guide to Terrorism in the Twenty-First Century U.S. Army DCSINT Handbook No. 1 (Version 3.0) 
Countering the IED Threat Military Technology 6/2006
C
urbing the roadside bomber Rupert Pengelley JANE'S INTERNATIONAL DEFENCE REVIEW January 2006 Jane's Information Groups
FORCE PROTECTION WORKING GROUP16 January 2004 COALITION PROVISIONAL AUTHORITY
FY 2008 GLOBAL WAR ON TERROR AMENDMENT Department of  Defense October 2007
IMPROVISED EXPLOSIVE DEVICE DEFEAT September 2005 FMI 3-34.119/MCIP 3-17.01 HEADQUARTERS, DEPARTMENT OF THE ARMY UNITED STATES MARINE CORPS 
Procurement Policy for Armored Vehicles  Report No.D-2007-107 June 27, 2007 Department of Defense Office of Inspector General
Multi-Nationa
l Force -Iraq 28 Nov 2004 Operation Al FajrRoll Up
Joint Improvised Explosive Device Defeat Organization (JIEDDO): Tactical Successes Mired in Organizational Chaos; Roadblock in the Counter-IED Fight LTC Richard F. Ellis, USA Maj Richard D. Rogers, USAF LCDR Bryan M. Cochran, USN Joint Forces Staff College Joint and Combined Warfighting School - Intermediate Class # 07-02 13 March 2007 
Report to Congress on the Situation in Iraq General David H. Petraeus Commander, Multi-National Force-Iraq 10-11 September 2007 


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