GMD Ground-Based Midcourse Defense の頭文字を取った略語。
      直訳すれば「地上配備中間コース防衛」。


解説                    総合索引

 米国本土を、限定された数の長距離弾道ミサイルによる攻撃から、防衛するための弾道ミサイル防衛システム。
 
Copyright (c)2005 Weapons School  All rights reserved.
 
中間コース(Midcourse)とは、弾道ミサイルの飛翔経路中、ロケット推進装置の燃焼終了時点から、大気圏再突入直前までの大気圏外経路をさす。なお、本計画は以前、NMD(National Missile Defense:国家ミサイル防衛)と呼ばれていた。

 GMDは1998年正式開発に着手、2012年現在、アラスカ州フォート・グリーリー基地に24基、カリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地に6基の、合計30基の迎撃ミサイル(GBI)を実戦配備している。さらに、2013年3月に発表された、欧州PAA(Phased Adaptive Approach)第4段階の中止による、長距離弾道ミサイル迎撃能力の不足を補うため14基を追加配備する予定である。


 GMDは、GBIセンサーGFC/CおよびC2BMCから構成され概要を以下に挙げる。


■GBI(Ground-Based Intercepter:地上配備迎撃体)

 地下サイロから発射される3段式迎撃ミサイル
全長約16m、最大直径1.3m、重量は22トンを超える。Copyright (c)2005 Weapons School  All rights reserved.
 


 GBIの構造は、EKVとブースターに区分される。

  • EKV(Exoatmospheric Kill Vehicle:大気圏外迎撃体)

     多波長フォーカル・プレーン画像赤外線センサーを搭載しており、ブースターから分離した再突入体を、100km以上の距離から補足可能で、オトリなども識別可能である。
    (c) Weapons School  All rights reserved.
     センサー後方は慣性航法装置GPSや、地上レーダーからの目標情報を受信するデータ・リンク装置などを内蔵する誘導・制御部分だ。

     この後方はDACS(Divert and Attitude Control System 進路変更・姿勢制御システム)の噴射口が、中央部に4ヶ所、後部に2ヶ所あり、姿勢・機動制御をおこなう。
     最後部は小型推進用ロケット・モーターを装備する。全長1.4m、最大直径0.6m、重量約63kgである。

     現在、生産中のEKVは、CE(Capabilty Enhancement:能力向上)-U(2)と呼ばれ、初期型より信頼性、性能を向上させたタイプである。

     EKVには炸薬は搭載されておらず、目標に体当たりして、運動エネルギーにより破壊する。

     大気圏内飛翔中は、空力加重・加熱からEKVを保護するため、シュラウドと呼ばれる覆いが取り付けられる。

  • ブースター

     3段式固体推進剤ロケット・モーターで、EKVを秒速8km以上、高度200km以上にまで打ち上げる。

     また、3段式より加速力に優れた、2段式 固体推進剤ロケット・モーターの開発も進められている。

■センサー

 弾道ミサイルの飛翔経路全般に渡り、発射監視、追跡、識別を行い、正確な情報を提供する主なセンサーを紹介する。

  •  宇宙配備型赤外線センサー

    名称 主要搭載センサー 軌道要素 備考
    DSP
    (Defense Support Program:防衛支援計画)
    短波長赤外線センサー 高度約3万6千kmの静止軌道、および長楕円軌道 退役間近
    SBIRS-High
    (Space Based Infrared Systems-High:宇宙配備赤外線センサー高高度)
    多波長赤外線センサー

    (短波長赤外線・中波長赤外線)
    高度約3万6千kmの静止軌道、および長楕円軌道 DSP後継機
    STSS-D
    (Space Tracking and Surveilllance System-
    Demonstrators :宇宙追跡観測システム実証機)
    多波長赤外線センサー

    (短波長赤外線・中波長赤外線・可視光)
    高度約1300kmの低高度軌道 中間コース飛翔中の再突入体とオトリ等の識別も可能

     なお、STSS-Dの実証試験結果を基に、開発を進めていたPTSS(Precision Tracking Space System:精密追跡宇宙システム)は、予算削減により2013年に計画中止となった。





  • UEWR(Upgraded Early Warning Radar:改良型早期警戒レーダー)
    Copyright (c) Weapons School 
     従来からアラスカ州、カリフォルニア州、マサチューセッツ州、英国、グリーンランドに配備されている弾道ミサイル早期警戒用、大型フェーズド・アレイ・レーダーを改良して、弾道ミサイル発射の探知、識別、追尾を行う。捜索距離は4800km以上。





  •  SBX(Sea-Based X-Band Radar:
     海上配備、X波長帯レーダー)

    copyright (c) Weapons School
     海上原油掘削リグに改造を加え、長距離、多機能フェーズド・アレイ・レーダーを設置した海上レーダー施設。総重量約5万トン、自力航行可能で、必要に応じて移動する。アラスカ州エイダクを母港としている。しかし、現在は予算不足のため常時運用されていない。

     X波長帯(周波数:8〜12GHz、波長:約3cm)を使用しており、目標の補足、識別、追尾、射撃統制、迎撃効果判定を行う。オトリや、使用済みブースターなどに、紛れて飛翔する再突入体を識別する、高い角度分解能力を持つ。

     データ・リンクにより、EKV(大気圏外迎撃体)および、C2BMCに目標情報を伝達する。探知距離は2000km以上とされる。


  • イージス艦

    改良型アーリー・バーク級駆逐艦および、タイコンディロガ級イージス巡洋艦

     搭載するAN/SPY-1レーダー、およびソフト・ウエアの改良を行い、弾道ミサイルの長距離捜索・追跡LRS&T(Long Range Surveillance and Track)能力を持つ。弾道ミサイル発射地点の周辺海域に展開する。
    (c) Weapons School  All rights reserved.
     弾道ミサイル発射の早期探知および、補足、追尾し、その情報をLINK16などのデータ・リンクを通じて、C2BMCに伝達する。





  • AN/TPY−2  

     前方展開 X波長帯レーダー
    (c) Weapons School  All rights reserved.
     THAADシステム用、可搬型、X波長帯フェーズド・アレイ・レーダーを使用する。

     弾道ミサイルの脅威に直面する地域に配備し、早期探知および追跡、目標識別などの情報を配信する。

     2013年 現在、イスラエル、トルコ、中東、及び日本にも展開中である。我が国に付いては、さらに1基の追加配備を計画している。




  • UAV(Unmanned Aerial Vehicles:無人航空機)

    弾道ミサイル発射が予想される地域付近を長時間飛行し、継続して監視を行う。

■GFC/C(GMD Fire Control and Communications:GMD射撃統制・通信) 
(c) Weapons School  All rights reserved.
 C2BMC
(Command, Control, Battle Management, and Communications:
   指揮・統制・戦闘管理・通信) 

 GMDの頭脳および中枢神経。

各種センサーからの情報を一元処理し、弾道ミサイル防衛の指揮・統制、戦闘管理および、GBI(地上配備迎撃体)との間に、データ・リンクによる目標の指示、飛翔経路指令等の射撃統制も行う。


 GBIは発射直前、STSS、UEWR、SBX等、外部センサーからの情報に基づき、飛行経路指示および目標位置情報を受け取り発射される。飛翔中は必要に応じ、データ・リンクにより目標情報を更新する。

 大気圏を抜けると、シュラウドが外れEKVを切り離す。EKVは搭載する赤外線センサーにより目標を捕捉し、DACSを使用して飛行経路を補正、目標に体当たりする。
Copyright (c)2007 Weapons School  All rights reserved.
 GMDの課題は、再突入体と、オトリ、分離したブースター等との識別である。再突入体に類似した外観、赤外線特性を持つ、高度なオトリが使用される可能性もあり、これに対処するためには、高精度な赤外線センサーおよび、外部センサーからの情報が不可欠である。


                                                                    
2014年7月 9日改訂


参考文献

A CBO STUDY Options for Deploying Missile Defenses in Europe February 2009 The Congress of the United States / Congressional Budget Office
Ballistic Missile Defense Review Report February 2010 DEPARTMENT OF DEFENSE
Global Ballistic Missile Defense A Layered Integrated Defense BMDS BOOKLET FOURTH EDITION MISSILE DEFENSE AGENCY
DEBATING SPACE SECURITY:CAPABILITIES AND VULNERABILITIES Jaganath Sankaran, Doctor of Philosophy, 2012

GROUND-BASED MIDCOURSE DEFENSE (GMD) INITIAL DEFENSIVE OPERATIONS CAPABILITY (IDOC) AT VANDENBERG AIR FORCE BASE ENVIRONMENTAL ASSESSMENT  MISSILE DEFENSE AGENCY 
Ground-Based Midcourse Defense (GMD)03 Aug 05 Presented by :David Hayes GMD JPO SBIR Administrator Ground-Based Midcourse Defense David Hayes GMD JPO SBIR Administrator Ground-Based Midcourse Defense Presented to:6thAnnual Small Business Day MDA

Jane's LAND-BASED AIR DEFENCE 2001-2002 Jane's Information Group
Jane's RADAR AND ELECTRONIC WARFARE SYSTEMS 1999-2000 Jane's Information Group
Jane's STRATEGIC WEAPON SYSTEMS ISSUE THIRTY-NINE Jane's Information Group
Military Space Programs :Issues Concerning DODs SBIRS and STSS Programs Congressional Research Service
Lieutenant General Henry A. Obering III, USAF Director, Missile Defense Agency 

MISSILE DEFENSE Opportunity to Reforcus on Strengthening Acquisition Management April 2013 United States Government Accountability Office

Missile Defense Program and Fiscal Year 2008 Budget Before the Strategic Forces Subcommittee House Armed Services Committee March 27, 2007 
Missile Defense Program Overview For The National Defense Industrial Association 5 MAR 07Lt Gen Trey Obering
Missile Defense Agencyホームページ
MKV Multiples Kill Vehicles UNITED STATES ARMY SPACE AND MISSILE DEFENSE COMMAND
NORTHROP GRUMMAN社ホームページ
Orbital Sciences社ホームページ
Raytheon社ホームページ
SPACE BASED INFRARED SYSTEMS FACT SHEET UNITED STATES AIR FORCE
The Proposed US Missile Defense in Europe: Technological Issues Relevant to Policy Theodore A. Postol他American Association for the Advancement of Science Washington, DC August 28, 2007 
US extends its ballistic missile defences with systems in Europe and Asia-Pacific Jane's INTERNATIONAL DEFENCE REVIEW APRIL 2007

 Aerospace トップページへ

Top     Land    Sea     Others

 Copyright (c)2002-2013 Weapons School  All rights reserved.