ASBM Anti-Ship Ballistic Missileの頭文字を取った略語 日本語に訳せば対艦弾道ミサイル


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 中国が開発したとされる対艦弾頭ミサイル、東風(Dong Fong:DF)21D。

 東風21Dは、中距離弾道ミサイル東風21に、レーダー誘導装置を追加したタイプで、最大射程は2000kmを超え、マスコミ等の報道では「空母キラー」と呼ばれており、米空母も攻撃可能とされる。
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 東風21Dに付いては、中国からの公式情報はなく、以下はWeapons Schoolの推測である。

 ミサイル本体は、全長12.3m、直径1.4m、発射重量は15トンを超える。温度、湿度、汚れなどからミサイルを保護するため、キャニスターと呼ばれる、円筒形の密閉容器に収納されており、
自走式発射機に搭載される。
  
 東風21Dの構造は、再突入体と、ロケット・モーターで構成される。

 
再突入体の先端部分はレドームで、アクティブ・レーダー・シーカー(探知機)を内蔵する。この後方は弾頭部分となっており、単一弾頭、または複数の子弾も搭載可能である。
 再突入体 後部はINS(慣性航法装置)、GPS(全地球測位システム)、軌道制御装置などを内蔵する誘導制御部分で、外側に4枚の操舵翼が取り付けられる。
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 ロケット・モーターは固体推進剤を使用する2段式である。固体推進剤は、液体推進剤に比べ、現場での推進剤注入の手間も不要で、即応性に優れ、長期間の保管に耐える。



 東風21Dは、発射指令を受けると、キャニスターを起立させ発射準備を行う。キャニスター下部には高圧ガス発生装置を内蔵しており、ガス圧力によりミサイルを上方に射出する。
 射出されたミサイルはロケット・モーターに点火し、上昇・加速を開始、第一段・第二段燃焼終了後、再突入体を分離する。
 その後、惰性で飛翔した再突入体は、所定の高度で、軌道制御を行い、レーダー・シーカーを作動させ艦船を捜索・攻撃する。

「空母キラー」その実力は?

最近、マスコミでは、中国が米空母攻撃可能なASBM(Anti-Ship Ballistic Missile:対艦弾道ミサイル)「空母キラー」を開発したと騒がれている。しかし、現時点ではその実用性に付いては疑問点が多い。

空母の位置を特定できるか?

海上を時速50km以上で移動する空母の位置を特定することは困難。偵察衛星は、狭い範囲を、限られた時間帯にしか捜索できない。また、航空機、船舶等を使用して空母を追跡するは可能である。しかし、戦時となれば空母側も、接近を妨害する。

終末誘導は問題山積!

空母の位置が特定できたとしても、発射から着弾までの間に空母は数km移動する。このため、
赤外線またはレーダー(電波)、による終末誘導が不可欠である。

東風21D
の2000kmを超える射程では、大気圏再突入時の速度は、秒速3〜4km(音速の10倍以上)となり、再突入体先端部の温度は空力加熱により700度を超える。この温度では、赤外線センサーは機能しない。

東風21Dではレーダーを
使用しているが、空力加熱による高温に耐え、電波を透過させるレドームの製造は困難なため、再突入体の速度を減少させて空力加熱を低減し、レーダー・シーカーの方向を、空母移動予測位置に向ける、複雑な軌道制御を行う必要がある。Copyright (c)2011   Weapons School  All rights reserved.

洋上目標に対する発射試験は確認されていない

本兵器の実用性を確認するため艦艇に対する発射試験を、少なくとも数回は実施する必要がある。しかし、中国がその種の試験を実施したとの情報は確認されていない。


ASBM開発の狙い


空母などの艦艇攻撃に、ASBMと対艦巡航ミサイルを同時使用すれば、イージス艦の防空能力を弾道ミサイル防衛に振り向けさせる事が出来る。これにより艦隊防空能力を低下させ、対艦巡航ミサイルによる艦艇攻撃を成功に導くことが、ASBM開発の真の目的であると考える。


 東風21には、SC-19と呼ばれるASAT(対衛星攻撃)や、人工衛星打上用に改造したKT-1と呼ばれるタイプも開発されている。

                             2017年 1月 7日 改訂


性能・諸元

 東風(DF)21D
全   長:12.3m
弾体直径:1.4m
重   量:15トン以上
射      程:2000km以上


参考文献

宇宙航行の理論と技術 河崎俊夫編著 地人書館
ミサイル入門教室ホームページ
JAXA 超音速風洞における空力加熱による模型/スティング変形について 藤井啓介他 JAXA(宇宙航空研究開発機構)
Atmospheric Re-Entry Author:JohnC.Adams,Jr
CHINA’S ANTISHIP BALLISTIC MISSILE Developments and Missing Links Eric Hagt and Matthew Durnin
China's Evolving Conventional Strategic Strike Capability The anti-ship ballistic missile challenge to U.S.maritime operations in
the Western Pacific and beyond Mark Stokes September 14th 2009 Project 2049 INSTITUTE
China looks to bolster maritime power By Sam LaGrone 07 January 2011 Jane's ホームページ
China Naval Modernization: Implications for U.S. Navy Capabilities Background and Issues for Congress Ronald O'Rourke Specialist in Naval Affairs December 23, 2010 Congressional Research Service
Design and Optimization of Reentry Trajectory of Maneuverable Warhead Kaibo Bi1, Xingbao Yang 2, Zhou Zhou3, and Chuangang Zhang 41,2,4Dalian Naval Academy/ Dept. of Missile and Shipborne Gun, Dalian,China; 3 Dalian Naval Academy/ International 
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Dong Feng 21 (CSS-5) Medium-Range Ballistic Missile SinoDefence.com.
Jane's STRATEGIC WEAPON SYSTEMS ISSUE THIRTY-SEVEN Jane's Information Group
Military Power of the People’s Republic of China 2009 ANNUAL REPORT TO CONGRESS Office of the Secretary of  Defense
Rocket Propulsion Elements Seventh Edition GEORGE P.SUTTON/OSCAR BIBLARZ A Wiley-Interscience Publication JOHN WILEY & SONS,INC.
Russian Strategic Nuclear Forces Oleg Bukharin他 The MTI Press
TM 9-1425-386-10-1 PERSHING II WEAPON SYSTEM HEADQUARTERS ,DEPARTMENT OF THE ARMY JUNE 1986
System Architecture for Anti-Ship Ballistic Missile Defense (ASBMD) by Jean Hobgood 他December 2009 NAVAL POST GRADUATE SCHOOL

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