高橋節のプロフィール


1971年10月16日横浜に生まれる。
幼少時代からピアノや合唱団などで音楽に慣れ親しむ。国立音大附属音楽高校の声楽専攻を卒業、国立音楽大学音楽教育学部を卒業。音大在学中、松野茂氏の指導のもと、初めてコントラバスに触れて低音弦楽器の魅力に取り憑かれ、卒業後、オーケストラや吹奏楽の演奏活動を行う傍らジャズベースも弾き始める。

ベース奏法を鈴木淳氏、中村照夫氏に師事。'98年より邦人ジャズベーシストによるライヴ『THE BASSIST FESTIVAL』『ベースマン銀座に大集合』等に出演。

'00年には田町の「女性と仕事の未来館」コンサートシリーズに、初のジャズコンサートの企画で自己のトリオ演奏が招致され、好評を博す。P・青木弘武氏、井上祐一氏、井上ゆかり女史、元岡一英氏、吉岡秀晃氏、Ts・高橋知己氏、山中良之氏、G・加藤泉氏、男性アカペラグループ「TIME FIVE」、B・水橋孝氏、Ds・小原哲次郎氏、Vo・ジョー・リー・ウィルソン氏、Ds・ジミー・ラブリィス氏等と共演。琵琶・塩高和之氏、楊琴(中国民族楽器)・張薇薇女史ともコラボレーション共演。現在、首都圏各所のライヴハウスやコンサートで、演奏活動を展開している。

その他、執筆活動なども好評で、自己のホームページにエッセイ等を紹介。楽器業界専門誌「ミュージックトレード(41巻'03年12月号)」にプレーヤーとしての視点を特別寄稿として取り上げられるなど、音楽で得たものを生かす活動にも意欲的に取り組んでいる。


楽器について


現在の私のパートナーとなっているベースは、ドイツ製の『ペルマン』という楽器(業界用語で『赤ペル』と呼ばれている)1966年製です。

自分持ちでは、大学卒業直後に購入した、同じくドイツ製の楽器『ルブナー』に続き二代目の相棒です。もともとクラシックを優雅に弾きたかった私が、ジャズもやりたいなぁと思い始めたときに現れた楽器で、鈴木淳氏の愛蔵品でした。鈴木氏にお逢いした頃、鈴木氏がご自慢のメイン楽器としてライヴで弾いていた楽器で、優雅なたたずまいと音の可能性から、どうしても欲しくなってしまい、一年掛かりで拝み倒し、二年掛かりで譲って貰いました(笑)。ボディーの縁に施された「お花(はっぱだな?)」の彫刻が特徴で、下半身デブらしい円やかな低音鳴りと、弓弾きにいたっては艶やかなベースの音色を損ねない頑固な頼もしさ。もはや切っても切れないパートナーシップの相棒なのです。

弦の変遷としては、『スピロコア』を使用し続けて来ましたが、スチール巻きのナイロンガット弦『オブリガート』に張り替え、E線とA線をまた『スピロコア』にチェンジしてミックスしていましたが、その後D線とG線の『オブリガート』をアメリカ製のプラスティック製のガット弦にチェンジして一年ほど弾いていました。しかしこの上二弦(G線とD線)が、下二弦(A線とE線)ほどに「ぶっとい」ので、なかなか扱いにくく、「同じようなフェイクガット弦で、何かないものか…」と探していたところ、ポーランド製のフェイクガット弦で「Presto」という弦を紹介され、上二弦をその弦に張り替えて現在に至っています。これもまたとても珍しい弦で、スチールの芯にプラスティックが巻いてあるもので、世界広しと言えども、なかなか使っている人にはお目に掛かれないとか…。これらのガット弦にしてからは、弾き方もスチール弦の弾き方から大幅に方針変更して、常にまろやかな「育つ音」というものを意識して弾いています。

ピックアップは『アンダーウッド(俗称・ウッディー)』を長年メインで使用してきましたが、2003年フィッシュマンの『フル・サークル(Full Circle)』というピックアップにチェンジ。これは駒のアジャスター(高さを調整するネジ)を利用するタイプで、低弦側のアジャスターがピエゾになっているタイプのピックアップです。クリアでカサつきの無い音を集められる、とても使いやすいピックアップです。これで通常はプリアンプに接続して音作りしながら使用。弓は『ペゾルト(大学時代に購入)』に黒い毛を張って使用しています。


ともちゃん


私の名前は『節』と書いて『とも』と読みます。
芸名ではなく、親がつけてくれたれっきとした本名です。もちろん今まで初っぱなで読めた人は皆無。はたして人名で同じ読み方を持つ名前の人がこの世に存在するのかは分りません。私の年代は『〜子』『〜美』などが命名のメインストリームだったので、昔は、おニューな場所で自己紹介をさせられる度に、子供心ながら「父母は一字加え忘れたのでは??」と恨んだものでした。

しかし、人それぞれ顔やスタイルが違うように、誰も持っていないこの名前がとっても大切なものだと、今は誇らしく思えるようになりました。読み方自体は渾名のようであるこの名前が、ジャズを愛する人たちの親しみを込めて口にして貰えることを励みにしていきたいと思います。

かといって、全く難無しという訳ではありません。初対面の人には、ベーシストということから字面だけでは男性と思われていたということが殆どだし、名前を書かずに口頭で説明するとき、「小節の『節(せつ)』です」とうっかり言ってしまうと、「小説の『説(せつ)』か」と、思いっきり『高橋説』(どんな説なんだろ)と書かれてしまったことも、過去複数ありまして…(「しょうせつ」と聞くと、音楽関係者は「一小節、二小節」…とかの「しょうせつ」を先ず思いついちゃうのです)。
将来、かの理由で名字が変わったりしても、『黒田』さんや『やすき』さんは避けたいなぁ…。ちなみに『ともちゃん』という愛称では、スナック、焼き鳥屋などにその名称が多いことも注目に値します。


ベースを弾き始めた動機


昔に遡って思い出してみると、私が初めて手に入れたジャズのCDというのは Paul Chambers のリーダー・アルバム『Bass On Top』(誰が見ても、ウッドベースがメインだとわかるブルーノートの名盤)でした。
その頃は丁度コントラバスを齧り始めたばかりで、ジャズで言うところの Wood Bassというもの自体がどういう風にやって弾けるようになって、どういう風な役割を演奏で演じているものなのか、全く見当がついていた訳ではなく、たまたま「木のベースで出来ることを観聴きしてみたい」という動機ででした。

その頃周囲の友達は、他大学のジャズ研や母校のビッグバンドなどで、結構楽しげにセッションしたりしており、クラシック音楽のみにどっぷりと浸かって来た音楽歴の私には、友人がジャズを演奏している事自体が、目の前でイリュージョン・マジックを観せられている程に感じました。そんな友達に手を引かれて、今は無き新宿アルタ裏の「Dug」なんかに連れて行って貰い、時間の経つのも忘れて「世にも不思議な音楽」を摂取していたものです。全く、何が何に繋がるか解らないのが、この世の不思議です。しかも、音楽には人の人生まで左右してしまうような、影響力が存在するように思えます。「ジャズはやっぱりWood Bass が演奏の『要(かなめ)』だよね」…なんて、今思えば、本当に言った本人は解っていたのだか、誰かの受け売りだったのかは、今以て問いただしたことはないですが、そう聞かされてしまった日には「『要』って、どんなことをやっているんだろう」と、わくわく探らざるを得ないではないですか。

そんな一方、私自身、友人でグループを組んで、Duoで生演奏を聴かせる店で、交代制のピアノ伴奏をしていたりしたので、演奏レパートリー拡充の為に、ミュージカル映画やサントラ、グレン・ミラー、ベニー・グッドマン楽団など、私達親の世代の懐メロを聴き漁っていたことは、今でも功を奏しているのですが、自然とジャズへの敷居を通り易いものにしていたのかも知れません。

話を戻すと「ベースがじっくり聴けるCDを買おう」と思い立ち、JAZZのCDコーナーに足を向けた時は、自分が音大生として何か悪いことをしているようなくすぐったい気分だったのは、今でも鮮明に覚えている。早る気持ちを制してデッキにセットして聴いてみると、それはまさに「マジック」そのもの。フル編成のオーケストラで、上質な交響曲の演奏を聴き終えたような「心地よさ」「安定感」「充実感」が、たかが3〜4人のアンサンブルで可能にし、しかもそれが即興演奏だと言うのだから、これを「マジック」と言わずに何と言うのでしょうか。

勿論、この心地を支配しているのがPaul ChambersのWood Bass であったことは、ジャズのリスナー若葉マークの私にも直感的に理解できました。それがリズムが生み出す『グルーヴ感』というのだと知るのは、勿論もっと 後々の話ですが、蒸気機関車がシュッポシュッポと走っているような、重厚感を安定感を見せつけられたようでした。「そうか Paul Chambersという人がベースを弾いているCDを買えば、これをもっと聴くことが出来るのか」と思い立ち、50、60年代マイルスのCDを聴いたり しているうちに、どうしてもやってみたくなりました。後にその狙い所の価値を知る、師匠の鈴木淳氏との出逢いがあり、心の中ではいつも「いつかは自分が 得たような、『あの心地』を自分で実現してみたい」と思っていました。楽器を買う為に老舗のジャズ・クラブで膨大な時間をバイトに費やしたりもしましたが、毎日演奏を聴く事が出来ることのを、とても有り難い経験と感じていました。

その後、実際にPaul Chambers本人と交流があった、師匠の中村照夫氏に巡り逢い、現在に至ります。それはたかが十年ちょいくらいの期間に起こった出来事の話です。
まったく、我ながら頑固なベース歴です。全ては自分が感じた「これだ!」と思ったことを自分でやってみたい為に、続いて来て、これからも続くことのようです。

初めて自分で買ったジャズのCD。
誰がどう見ても、ベースが主役であることが一目瞭然なアルバムで面目ない…。
初めてのウォーキング教材は「C Jam Blues」でした。 ベースを習い始めた時には既に持っていたアルバム。
ジャズを志す全ての人に、愛聴して欲しい一枚です。


ピックアップ考


私の使っているものは『アンダーウッド(もしくは、ウッディー)』というものです。
ベースのピックアップの定番ですが、駒の両脇の隙間に挟んで拾うものです。
同じタイプでは、低音片側のみから拾う『バーカスベリー』というものがありますが、会社が無くなってしまったらしく入手しにくいかも。

経験上から言うと、駒の振動から拾うタイプのものが扱いやすいです。
ピックアップの取り付け位置が弦に近づく程、ピエゾタイプのピックアップは音自体の質感情報を正確に拾うからです。

弦に近いものとして、『フィッシュマン(弦の乗っている駒の隙間二箇所から拾うタイプ)』や『ウィルソン(各弦の下あたりの駒に穴を空けて取り付けるもの)』などが挙げられます。 フィッシュマンもリーズナブルで定番のピックアップです。但し、ある程度音量を必要とされる場合に大きなスピーカーを鳴らす必要があるとき、あくまでも振動から拾っている為「カリカリ」とした高音域の情報が多いので、それを調節するプリアンプを通して音作りをする必要が出てきます。
その場合は別売(「バーカスベリーは付属品として付いてくる」)のプリアンプを用意するか、ボディーの振動(低音域情報)を同時に拾うタイプのものを使うかミックスするのが良いと思います。

ボディーの振動を拾うタイプのものとしては『リアリスト(駒とボディーの隙間に挟んで使う)』や『ポリトーン』などがあげられます。但しボディーの振動を拾うタイプのピックアップは質感情報を正確に捉えにくく、振動で音の輪郭を不鮮明にする場合があるので、音質の面から見るとモコモコとした感じになり、実践では扱いにくいと言えますが、「ボディーの振動を含めてベースの音」というナチュラルさを再現しようとするコンセプトだと想像出来ます。

音作りにマイクを使う手法は、ハウリングを起こしやすいので細心の注意が必要です。基本ルールとしては単一指向性のマイクを使うこと、楽器に向けての位置がなるべく動かないことです。
マイクの指向性が単一でないと、周囲の音圧に影響されてマスキング(音が消えてしまったりする)が起きます。楽器に向けての距離や位置が動くと、強弱や音質に影響してしまい、一定の感覚で発音することが出来なくなります。
以上のことを踏まえてマイクのみで音を拡音することは、ナチュラルな状態なのでソロには向いていますが、アンサンブルになると立ち上がりに弱点があるので、状況に応じてピエゾタイプのピックアップとのミックスが良く、いずれにしてもとても難しい分野ではあります。



お薦めCD(夏)


『All The Way(Jimmy Scott)』(1992年  ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-10707)

珠玉のバラード曲集と言って過言ではありません。
はかなく、美しく、そして希望を込めたスタンダードの味わいが満喫出来ます。
ロン・カーターのシンプル且つクールなベースも、ベーシスト的には注目。ナイトキャップ代わりにどうぞ。
<入手困難な方はコチラ>



『What A Difference A Day Makes !(Dinah Washington)』Echo EJC735

アレサ・フランクリンも『Unforgettable: A Tribute To Dinah Washington』というアルバムを出しています。
先輩に敬意を払い、受け継いでいく覚悟は、ジャズやR&Bという勝手に作られた「垣根」なんか無く「良いものは良い!!」。影響を受けたR&B や Jazzの女性歌手は数多です。その歌に込められたエネルギーは凄いです。
<入手困難な方はコチラ>




『Green Onions(Booker T. & The M.G.'s)』(アトランティック/1962年)

R&Bに通じるこのグルーヴ感は、ぜひジャズを愛する人たち必聴です。オルガンのかっこよさを凝縮させたような一枚。ロック系の音楽ファンにも信奉者が多い、伝説的アルバム。
メンバーは、ブッカー・T・ジョーンズ(org) スティーブ・クロッパー(g) アル・ジャクソン(ds) ルイス・スタインバーグ(b)。
<廃盤・コレクターズアイテムに近いかも…>



『Blue & Sentimental(Arnett Cobb & Red Garland)』(1960年 Prestige-025218512220)

「こういう風に吹けたら、サックスも吹いてみたいなぁ」という、『歌うサックス』。収められた曲も馴染みの深いものです。ジャズはブルースから発生したのだと知らしめる、正統派。
レッド・ガーランド(p)トリオのサポートも素晴らしい。
他メンバーはGeorge Tucker (b) J.C. Heard (ds)。
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