第1回:「街を守る伝説の戦士」の物語
文:桂令夫&藤浪智之



イラスト:佐々木亮



●解題
 あらゆるテーブルトークRPGにはイメージの源泉となった作品が存在します。たとえば今年で誕生40周年を迎える元祖RPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』ならば(その他も無数の作品が元になっているのは勿論として)ロバート・E・ハワードの〈コナン〉シリーズ、マイケル・ムアコックの〈エルリック・サーガ〉、そしてJ・R・R・トールキンの『指輪物語』『ホビットの冒険』がそれにあたるでしょう。
 近年の国産TRPGにおいては、往々にしてイメージの源泉となった作品が「参考作品」として直接紹介されており、ユーザーがイメージを理解する上でも大変親切です。
 この『駅前魔法学園!!』も、それを踏襲しております(ルールブックp40)。
 さて、この「参考作品」。ゲームマスター諸氏にとっては、どう役に立つでしょうか。もちろん、セッションに参加するプレイヤーに「観ておいてもらう」ことや「例に出す」ことによって、イメージを伝えるのに大変有効です。しかし、ゲームマスターならば、自作シナリオの役に立たせたいもの。
 参考作品欄にあがった作品を見たり読んだりし、時間を置いたとき、頭の中でとつぜん配線がつながって素晴しいシナリオが組み上がる「魔法」のような瞬間を待つのもひとつの方法でしょう。
 しかし、もっと短時間に効率的に行う方法も心得ておいて損はありません。「魔法」は、タネと仕掛けを心得て、効率よく使えば、効果も大きいというものです。
 そこで、当記事では、参考作品欄にあげられた個々の作品について、『駅前魔法学園!!の共通点と相違点に注目しつつ、より実践的に解説しようというものです。
 自作シナリオを作りたいゲームマスターはもちろん、プレイヤーの皆さんにも、少なからず役に立つことでしょう。
 3回の連載で『駅前魔法学園!!』のイメージの源泉となった作品中、特に参考にしやすい(と私どもが考える)3作品についてこれらの思考実験をおこないます。この実験が単に『駅前魔法学園!!』だけでなく、参考作品欄のあるすべてのTRPGに役立つものとなっていれば幸いです。

【「参考作品」を分析する】

 本記事では「参考作品」個々の作品と『駅前魔法学園!!』のあいだの
 (1)共通点と、
 (2)相違点、を分析し、
 (3)その作品を直接的に参考にし、
 (4)あるいは一ヒネリして、どんなシナリオを組めるかを考え、
 (5)どんなキャンペーンを組めるかを考え、
 (6)もしキャンペーン途中でなく新規キャンペーン立ち上げや単発なら、
プレイヤーたちに提示すべき「ふさわしいサンプルキャラクター」を考える

……という方法を紹介していきます。

 第1回目は、『駅前魔法学園!!』参考作品欄の一番目に紹介されている〈プリキュア〉シリーズを取り上げます。
 そもそも「魔法使い」が主人公でもなく「魔法学園」が舞台でもない作品が『ナイトウィザード』や〈ハリー・ポッター〉を差し置き、トップに記載されていたのは、どういうわけでしょうか。


●〈プリキュア〉シリーズとは
〈プリキュア〉シリーズは、かの『マジンガーZ』や『魔法使いサリー』を生み出した東映アニメーション製作による、日曜朝8時半からの放映枠(東映特撮戦隊シリーズ、平成仮面ライダーシリーズ枠に続く、人気放映時間帯、いわゆる「ニチアサ」)で放映されている人気アニメシリーズです。
 1作目『ふたりはプリキュア』(2004年)を嚆矢とし、今年で10年目となる人気のロングシリーズとなっています。ちょうどこの原稿を書いてる頃、シリーズ10作目『ドキドキ!プリキュア』が最終回を迎え、新作『ハピネスチャージプリキュア!』が開始されました。
 ありていに言いますと「キュートでかっちょいいコスチュームの変身ヒロイン」である「プリキュア」が、異世界を滅ぼしたり、地球上から希望を奪おうとする大変悪い連中と戦って毎回大活躍するという話です。
(「プリキュア」というのは、何やらすごい力を持つ変身戦士を意味する概念で、すなわち平成時代「仮面ライダー」みたいなものです。1作品ごとに意味するところに差違はありますが、大まかにプリティでキュアな戦士です。劇場版では集結して共闘するのも仮面ライダー的です)
 筆者は寡聞にして詳しくはないのですが、幼稚園児〜小学生低学年の女子と、高校生〜30代の男性から大変な人気があるそうです。
 プリキュアである主人公たちは、だいたい中学生に設定されているのですが、前者の視聴者層からは「格好いいお姉さん」という憧れの対象に見え、後者の層からは清純可憐なアイドルだったり「理想の娘や妹」に見えるのかも知れません。


●プリキュアと『駅まほ』の共通点
 まずは共通点から見ていきましょう。
 前述の説明を見て、ハテどこが『駅まほ』と似てるのか?と首をひねった方々も、以下の点に注目してください。

(A)「ひとつの街」が舞台である
(B)基本的に1話のなかに「クライマックスの戦闘」が1回必ずあるという形式である

 また、プリキュアや『駅まほ』に限ったことではなく多くのドラマがそうですが、
(C)「敵」は、主人公たちの力でしか対抗できない
……ということも挙げられます。
 プリキュアシリーズ全ての共通というわけではありませんが、敵が「街の人々の精神面につけいる」攻撃や侵略手段をとる」のも、『駅まほ』の敵「常闇」と共通しています。
 基本的に、ご町内レベルの侵略行為をふだんはやってる、どこかホノボノした敵であるのに、力が増大すると世界を滅ぼすほどになる(プリキュアの最終回近くでは、だいたい地球全体が壊滅の危機となります)……というのも、常闇(ゲーム内歴史では前世紀末に世界を滅亡の危機に追い込みました)と似た設定です。

 さて、これら(A)(C)の共通点はまことに意味が大きいことにTRPGプレイヤー諸氏なら気がつくでしょう。
 まず、舞台は「現代日本の身近な街」です。むろん女の子向けアニメなので、その街というのはオシャレな花屋さんやプティックが多めだったり、喫茶店やカフェーにはいつもイケメン店員がいたりしますが、概ねイメージしやすい日本の街です。
 起こる事件の多くは「街」で発生します。公園やら遊園地やらTV局など「街のどこかの場所(『駅まほ』でいう「プレイス」)」でイベントが起こるわけですね。
 (A)(B)の組み合わせにより、クライマックスは、その「身近な日常の風景に異質な怪物が現れて戦う」という展開になります。
 また対象視聴者を考慮してか、その敵や戦闘風景があまり殺伐としておらず、どこかユーモラスであるのも『駅まほ』と似ています。

 プリキュアシリーズの戦闘場面は、『駅まほ』のクライマックス戦闘のイメージとして思い浮かべても、大きな誤解にはならないでしょう。

 また、プリキュアシリーズでは共通して、敵が「その場にあるものに、邪悪な力を吹きこんで怪人にして襲わせる」という攻撃手段を取るのですが、それによって建機や遊具、ステージの音響機材などの大道具に手足が生えて暴れ出したり、あるいは玩具や楽器などの小道具が巨大化して暴れ出す、という光景が出現します。
(そして、それを倒すと「元の姿」に戻るわけですね。戦闘が終わると邪悪な力がなくなり、それによって壊された街並みも元に戻るという演出がとられています)
 この情景は、『駅まほ』の戦闘をイメージしたり描写するのに大変有効でしょう。
「日常から異形の風景」に移行したさまと、そこから再び「日常の風景」に戻る演出として、そのまま活用できるぐらいです。
『駅まほ』の戦闘の場となる「マキア空間」は「一種の精神空間」と定義されており、所謂「結界」のような概念でありますが、プリキュアシリーズのように現実の風景とシームレスな存在と解釈し、「常闇の出現によって、その風景にあったものが怪物化する」演出や「常闇を倒したら、破壊されていたものが夢だったように元に戻る」という演出で描くのも、効果的でありましょう。


●プリキュアと『駅まほ』の相違点
 では相違点のほうを見ていきましょう。
 プリキュアシリーズのほうは……

(ア)主人公が基本的に中学生女子
(イ)「選ばれた伝説の戦士」である
(ウ)正体を隠している
(エ)武器を使わず肉弾戦を主とする


 ……結構ありますね。
 しかし、逆にいえばこの相違を認識しておきさえすれば、活用するのも難しくありません。
 まず(ア)ですが、女子中学生だという差違は、現代日本に暮らす人間であるという共通点に比べれば、些事といえます。
 現代日本人の感覚で物事を考えるわけで、どんなことに憤ったりどんなことで困るかは共通しているわけですから。
(もうちょっと書くと、幼稚園の女子や、30代のおっさんが見ても理解できる「女子中学生」像であり、実際の女子中学生しか理解や共感ができないキャラクター像ではないと思います)
 プリキュアたちも「街の人が困っているのを助ける」とか「泣いてる迷子や動物を助ける」とか「人々の幸福を邪魔するのは許せない」という行動原理で動くことが多く、それはあなたのキャラクターも(まっとうな倫理観と常識を持ってるならば)年齢性別に関係なく共感できるでしょう。

(イ)も『駅まほ』と一見異なりますが、『駅まほ』設定の「魔法使い」は、ご町内レベルでいえば「特別な力を持つ守護者」であり、選ばれし戦士と言えます。

(ウ)が最も異なる相違点でしょう。ただし、プリキュアシリーズは(設定面はともかく感覚的に)「正体を隠す」ことが深刻な事柄ではないようです。正体が露見したからといって、目撃した人間が精神崩壊したり、主人公たちが街を去らねばならないような世界設定では断じてなく、その意味で(例えば『ダブルクロス』などの、正体の露見が深刻なTRPGに対して)『駅まほ』に近いと言えるでしょう。

(エ)は、プリキュアシリーズの重要なコンセプトのようで、チームで戦うプリキュアの場合も、役割分担(防御役や後方支援、頭脳担当など)の能力とは別に、全員格闘戦闘能力を必ず持っています。アニメ作品としては「敵と徒手空拳で戦う」アクションに妙味があるのですが、TRPG参考作品として視聴する場合、魔剣などで戦わないことや「全員が一度は前線に出て敵と殴り合う」戦闘形式であることには注意しておくべきでしょう。
 なお、狭義の武器は使いませんが「何やら不思議でファンシーなアイテム」は使用するので、魔法のバリヤーやら遠距離支援するようなマギアーツの参考にはなります。


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本ページは、著者・藤浪智之が、私的に行っているもので、
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