変形性股関節症について


変形性股関節症とは

関節軟骨の退行性変化(変性や破壊)に始まり、様々な関節変化が進行する疾患です。軟骨の変性・破壊は、人種、性別、加齢、肥満および遺伝などの素因下に、機械的負荷(活動性・運動、外傷、職業など)が加わり発生します。さらに機械的負荷により、軟骨細胞の代謝障害が起き軟骨破壊が進行し、滑膜炎、関節水腫、骨破壊の進行を引き起こします。この病変は進行性であり、それぞれの時期に応じた臨床像を呈します。


 分類 .
@一次性 明らかな原因疾患なしに股関節が変形したり、軟骨が擦り減ったりします。股関節本来の構造上の異常がありません。
A二次性 股関節に構造上の欠陥があり、それに続発するものです。我が国では、先天性股関節脱臼(生まれつき股関節が脱臼している)と臼蓋形成不全(股関節の屋根の部分の発育不良)に続発するものが大半を占めます。

二次性股関節症の原因
  先天性股関節脱臼
  臼蓋形成不全

  ペルテス病
  大腿骨頭壊死症
  外傷、感染症、
  先天性骨系統疾患、代謝性疾患
  など


  我が国ではほとんどが二次性で、圧倒的に女性に多いという特徴があります。先天性股関節脱臼の既往により、子供時代より股関節の変形・痛みが強い場合もありますが、中年以降になって痛みが出て整形外科を受診し、はじめて臼蓋形成不全の存在に気付く場合もあります。
 
それに対し欧米では、一次性が大半を占めています。



<二次性変形性股関節症の病態生理>



臼蓋形成不全

  臼蓋(=股関節の屋根の部分)の発育不良により、大体骨頭を十分被覆出来ていない状態です。成長過程で臼蓋の発育が正常に進まない「後天要因」と、先天性股関節脱臼に起因する「先天要因」の強いものとがあります。

<発育性股関節脱臼から臼蓋形成不全、変形性股関節症への進展経過>
  発育性股関節脱臼が初期治療により整復されても、その直後は、臼蓋形成不全、骨頭や大腿骨頸部の形態異常(扁平骨頭、外反股、前捻の過大など)、関節内介在物の存在(関節唇の内反、大腿骨頭靭帯の肥大延長など)、腸腰筋の緊張などの異常が直ちになくなるわけではありません。これらに起因する求心性不良(大腿骨頭が外側に偏位し、寛骨臼にきちんとはまっていない状態)・適合性不良(大腿骨頭と寛骨臼の曲率が違う状態)は、経過がよければその後徐々に自然矯正されていきますが、改善しない例も少なくありません。骨頭球心性不良(骨頭の外側偏位)が続くと、臼蓋(股関節の屋根)の骨化が障害され、臼蓋形成不全の状態になります。臼蓋形成不全股(股関節の屋根が足りない状態)では、臼蓋縁に集中的に負担がかかるため軟骨がすり減ったり、股関節の変形がさらに進み、変形性股関節症へと進展します。

 だから、発育性股関節脱臼の既往があれば、たとえその時きちんと治療され整復されたとしても、少なくとも小学校入学時、Y軟骨が閉鎖する12〜3才(中学校入学時)成人後に専門医を受診することが必要です。


両側発育性股関節脱臼(2歳女児)



CE角(central edge angle)
  臼蓋形成不全の診断に、CE角を用います。正常は、30°以上で、25°以下を臼蓋形成不全と診断します。CE角が小さいほど、臼蓋形成不全が強いことになります。

正常股関節 臼蓋形成不全
高度臼蓋形成不全


高度臼蓋形成不全の3次元CT像



臼蓋傾斜角
  臼蓋荷重部の水平面に対する角度です。正常は、0〜6°で、水平に荷重を受けています。臼蓋傾斜角が大きいと、荷重時に骨頭が上外方に亜脱臼していく力が働いてしまいます。

正常 .



 症状 .

@股関節痛
 初期には重だるさ、運動や歩行時の軽い痛みで一晩寝たら消えてしまう程度です。徐々に増悪し、だんだん痛みの回復に時間がかかるようになり、最終的には安静時にも痛みを感じるようになります。
 主に大転子付近から鼡径部の疼痛ですが、殿部痛、大腿部痛を訴えることもあり、椎間板ヘルニアなどの腰椎疾患を鑑別する必要があります。
 
 <痛みの原因>@軟骨下骨の破壊
            A滑膜炎
            B股関節周囲筋の疲労
            C股関節唇の損傷


A
関節可動域制限
 早期には可動域制限はみられませんが、疼痛による運動制限が続くと、関節包や靭帯、筋肉などの軟部組織の伸長性の低下を生じ、股関節の動く範囲が徐々に減り、あぐら、靴下の着脱、足趾の爪切りが困難になってきます。末期になると、関節が全く動かない状態(拘縮、骨性強直)になることもあります。


B
跛行 
 痛みや、脚長差、筋力低下による跛行が生じ、徐々に強くなります。
 筋力低下による跛行は、主に股関節外転筋である中殿筋(お尻の筋肉の一つ)の筋力低下により起こります。これを
Trendelenburg跛行 と言います。中殿筋の筋力低下は、痛みによる活動性の低下や、股関節の変形(大転子高位など)により起こります。
 Trendelenburg跛行での骨盤の低下を代償するために、反対側の上体が傾斜し左右に揺れて歩く
Duchenne跛行もみられます。 
  

Trendelenburg(トレンデレンブルグ)徴候
患肢で片脚立ちをした時、中殿筋(=股関節外転筋)の筋力が弱いと、平衡を保つための代償として反体側の骨盤が下がる現象です。歩行時には、患肢に体重をかけた時に、尻を落とすような歩行(Trendelenburg跛行 )を呈します。



 亜脱臼や大腿骨頸部の短縮などの変形により、3cm以上の脚長差があると、患側の立脚期に体全体が下がり上下に動揺する硬性墜落跛行を呈します。



 診断 .

自覚症状(問診)、他覚所見、画像所見(X線、断層撮影、CT、MRI)より診断します。総合的な重傷度の判定は、JOAスコアとX線所見より行ないます。

        
JOAスコア(日本整形外科学会股関節機能判定基準)

股関節痛を生じる疾患は変形性股関節症だけではなく、以下の様な鑑別疾患を除外する必要があるため、股関節専門医の診察を受けて下さい。

鑑別疾患(他の、股関節痛を生じる疾患)
<小児期>
外傷性股関節脱臼、骨盤部裂離骨折、ペルテス病、単純性股関節炎、大腿骨頭すべり症、化膿性股関節炎、結核性股関節炎、若年性関節リウマチ、股関節部腫瘍、など

<成人> 
股関節脱臼骨折、大腿骨頚部骨折、化膿性股関節炎、石灰沈着性股関節周囲炎、股関節周囲滑液包炎、急速破壊性股関節炎、一過性大腿骨頭萎縮症、結核性股関節炎、慢性関節リウマチ、股関節部腫瘍、大腿骨頭壊死、、弾発股、腰椎疾患、など


<正常股関節>




X線所見による病期分類
@前股関節症 A初期股関節症
臼蓋形成不全(股関節の屋根の部分の発育障害)があるが、骨硬化や軟骨の変性摩耗などの関節症変化がほとんどない。 荷重部の骨硬化や、軟骨が部分的に障害される。

B進行期股関節症

<初期に近い進行期>

<末期に近い進行期>
軟骨が広範囲に変性摩耗し、骨頭や臼蓋の骨棘、嚢胞を認め、関節症変化が進行する

C末期股関節症
軟骨が摩耗しつくし、関節の隙間がなくなる。関節が高度に破壊された状態。



その他の画像検査

断層撮影 MRI


CT