「美しくなりたい」「楽してやせたい」という望みは、古今東西を問わず永遠のテーマです。一番下の段の基礎化粧品は、昭和初期の広告がどんなものであったのか、雰囲気をよく伝えていると思います。この広告は、「少女倶楽部」の裏表紙にカラーで掲載されました。
ところで、本当に効果があったのかが、よく分からない商品もありました。例えば上段の「すてゝおかれぬふとり過ぎ」は、井上医学博士、岡井医学博士による「肥満がいかに身体に負担をかけるか」というコメントをつけた上で、「中容丸」の効用を説いています。当時のお金で、10日分3円、20日分5円50銭、30日分7円10銭、40日分9円と、まとめ買いをするほど、お得になっているのは嬉しい限り。が、昭和10年当時で、白米10キロ当たり2円50銭だったことを考えると、かなり高額な商品であったことも確かです。それに、最近お腹が出てきた私にとって、「すてゝおかれぬ」と言われても困るのです。
その隣の「やせる」は、元陸軍軍医米国医学博士音尾先生が発見創製した「最新科学の療法」によるやせる薬とか。しかしそれが具体的に何なのか、全く分かりません。ただ、両者に共通しているのは、医学博士と言う権威にすがり、庶民に、よく分からないけれど、効きそうだと信じさせた時代の息吹を感じます。
一方、「ニキビ・・」の説明ですが、「皮膚を通して深く浸み込み脂肪線に直接作用して、ニキビを根本から治癒させ、同時に皮膚色素の分解作用によって肌を玉の様に色白く美しくします」とあります。この商品の「ユキワリミン」は専売特許を取っているとか。ただ肌について素人の私は、この説明書きを読んでも、なぜ効くのか、よく分かりませんでした。もっとも販売者側からすると、これでも消費者向けに易しく解説したのかもしれませんが。
最後に「メルス」ですが、昭和初期から、歯を白くしたいという需要があったことが伺われます。この商品は、ただ歯を白くするだけでなく、水に数滴たらすだけで殺菌作用によりうがい水にも使えるそうです。今日の商品のさきがけとも言えるでしょう。
さて、これらの広告を、「少年倶楽部」の広告同様に、前時代の遺物と切り捨てるのは、実に簡単なことです。しかし、よくよく考えてみると、類似の商品は、今なお販売されております。何十年経とうとも、「美しくなりたい」「楽をしてやせたい」という人間の欲望がある限り、これらの商品は、名前や形を変えて、生き続けることでしょう。 |