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「少年倶楽部」編 異色の商品
 広告は、いわば時代を写し取る鏡と言えます。なぜなら、物が売れるということは、その商品が時代のニーズに合っていたからであり、広告を見れば、どのような世相であったのか、おおよそ伺われるからです。
 「少年倶楽部」にも、多数の広告が掲載されていました。中でも多く目を引くのが本の案内、それも戦記文学や愛国少年小説の類です。また、絵の具、鉛筆、ハーモニカ、学生帽などの学用品なども、少年向けの雑誌であることを考えれば、うなずけます。
 今回は、その中で、あえて異色のものをピックアップしてみました。これらの商品が売れたかどうかは不明ですが、この時代ならではの広告だと思います。
催眠術!僕は催眠術をやるよ!
催眠術!僕は催眠術をやるよ!
僕は学科の試験問題を催眠術の神通力によりて調べた処(ところ)、今日の試験にチヤンと合ふて居る為め教へた親友等は皆試験に満点だ。(大正5年4月号)
健脳器 「ピグマ」
健脳器 「ピグマ」
特殊な放熱作用により、頭がハツキリし、記憶がメキメキ良くなり、学科も進み、苦しい試験勉強等も楽に出来る実に珍しい器械です。(昭和15年6月号)
記憶増進薬「ソール」
記憶増進薬「ソール」
近代科学と頭脳生理学との学理的研究によつて「ソール」といふ頭脳強健記憶力増進のお薬が発明されて、学生の皆さんからとても喜ばれてゐます。(昭和15年6月号)
記憶力促進誘導法
記憶力促進誘導法
勉強しても直ぐ忘れる人、、良い成績で試験を突破したい人は申込次第最新考案三元法に依る科学的記憶促進法の美麗な説明書を御申込次第無料進呈(昭和17年2月号)
頭をよくする「鉢巻療法」
頭をよくする「鉢巻療法」
記憶力や勉強の能率をあげたい人は快晴陶バンドを用ひて新工夫鉢巻療法のお試しが一番!(昭和17年2月号)
中学校へ行かぬ人に「中学講座」
中学校へ行かぬ人に「中学講座」
中学へ行かれぬ方は、最も内容が新しく優れた「中学講座」で学べ。僅か一ヶ年で修行できる。(昭和16年頃)
解説
 「頭を良くしたい」「楽して試験を突破したい」という望みは、一見、安易に思えます。しかし、それだけ受験が過酷なものだったのでしょう。その突破のために頭脳が良くなる薬を飲み、挙げ句の果てに、頭脳健脳器、催眠術まで駆使をする。非科学的だと笑いとばすのは簡単ですが、「頭を良くしたい」という学生の切なる願いの反映ならば、その中になぜか悲哀さえ感じられます。なぜならば当時の中学は、今のように義務教育ではなく、難関の試験があったからです。それでも受験出来る者は、まだ幸せでした。どんなに能力があろうとも、学資を出せない者は、進学そのものをあきらめなければならなかったからです。
 そこで右下の広告にあるように、独学による「中学講座」の登場です。当時、文部省では、今の大検ならぬ高検試験を実施していました。しかし、現実問題として突破は難しく、大正13年の苦学少年の記事によると五百余名の受験中、合格はわずかに三十余名。実に合格率6パーセントという狭き門でした。
 ところで「健脳器ピグマ」ですが、、その商品名は、「ピグマリオン効果」の省略形ではないでしょうか。これはキプロス島のピグマリオンが、自ら創った象牙の女像に恋をした逸話から「人に対して抱く期待がその通りになる」という心理学用語になったものです。名は体を表すと言いますが、所詮は自己暗示頼みの商品だと思います。(愛用者の皆さん、販売者の方、申し訳ない)案外、販売者は、そんなことは百も承知で売っていたのかもしれませんね。 
 さて、これらの広告を、前時代の遺物と切り捨てるのは、実に簡単なことです。しかし、よくよく考えてみると、類似の商品は、今なお生き続けているではありませんか。何十年経とうとも、「記憶力を伸ばしたい」「頭を良くしたい」という人間の欲望がある限り、これらの商品は、名前や形を変えて、生き続けることでしょう。
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