因数分解                                 戻る

 高校で学ぶ因数分解の最高峰は次の公式だろう。

  3+y3+z3−3xyz=(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yz−zx)

この公式は、式の値の計算や不等式の問題で活躍する。

 今まで、この公式の証明としては、次のような計算をするものとばかり思っていた。

(証明)

   x3+y3+z3−3xyz=(x+y)3−3xy(x+y)+z3−3xyz

               =(x+y)3+z3−3xy(x+y+z)

               =(x+y+z){(x+y)2−(x+y)z+z2}−3xy(x+y+z)

               =(x+y+z){(x+y)2−(x+y)z+z2−3xy}

               =(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yz−zx)   (終)

 このような解法に対して、次のような裏技があることを、当HPがいつもお世話になってい
るS(H)さんよりご教示いただいた。S(H)さんに感謝します。

(裏技)
      3つの数 x、y、z を零点に持つ3次式は、 (T−x)(T−y)(T−z) とおける。

     このとき、 (T−x)(T−y)(T−z)=T3−(x+y+z)T2+(xy+yz+zx)T−xyz

    において、Tに x、y、z をそれぞれ代入して、

         x3−(x+y+z)x2+(xy+yz+zx)x−xyz=0

         y3−(x+y+z)y2+(xy+yz+zx)y−xyz=0

         z3−(x+y+z)z2+(xy+yz+zx)z−xyz=0

    3つの式を辺々加えると、

     x3+y3+z3−(x+y+z)(x2+y2+z2)+(xy+yz+zx)(x+y+z)−3xyz=0

    よって、

     x3+y3+z3−3xyz=(x+y+z)(x2+y2+z2)−(xy+yz+zx)(x+y+z)

                  =(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yz−zx)


      (追記) 当HPがいつもお世話になっている GAI さんも同様な方法を推奨されて
          いる。(平成22年3月5日付け)

           x+y+z=a 、xy+yz+zx=b 、xyz=c とおくと、3つの数 x、y、z は、

          3次方程式 T3−aT2+bT−c=0 の解である。

           これから、   x3−ax2+bx−c=0

                    y3−ay2+by−c=0

                    z3−az2+bz−c=0

           これらの和をとって、

             x3+y3+z3−a(x2+y2+z2)+b(x+y+z)−3c=0

             x3+y3+z3−a(x2+y2+z2−b)−3c=0

             x3+y3+z3−3c=a(x2+y2+z2−b)

           よって、

             x3+y3+z3−3xyz=(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yz−zx)


(コメント) この裏技だと、難しい因数分解の公式には見えないですね!

 この裏技の手法を用いると、S(H)さんが平成21年7月16日付けで提供された公式

     x3+y3+z3+w3−3(xyz+xyw+xzw+yzw)

   =(x+y+z+w)(x2+y2+z2+w2−xy−xz−xw−yz−yw−zw)

を示すことも容易だろう。

 これは、読者のための練習問題としよう。

 この話題に関連して、HN「よおすけ」さんが当HPの掲示板「出会いの泉」に情報を寄せら
れた。よおすけさんに感謝します。

 この問題に関連した内容が、数学問題集「考える葦」の中の「高校1年の数学知識で解け
る数学問題集
」の問題6に載っているとのこと。

 全米数学オリンピック(1973年)

問4  次の連立方程式を解け。

    x+y+z=3 、 x2+y2+z2=3 、 x3+y3+z3=3

(解)  xy+yz+zx={(x+y+z)2−(x2+y2+z2)}/2=3

     xyz={(x3+y3+z3)−(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yz−zx)}/3=1

   より、 3つの数 x、y、z は3次方程式 t3−3t2+3t−1=0 の解である。

    よって、 (t−1)3=0 より、 t=1 すなわち、 x=y=z=1 である。 (終)

(コメント) 何か、易しかったですね...。


 当HPがいつもお世話になっているHN「空舟」さんからのコメントです。
                                     (平成25年4月25日付け)

 最近、もう1つの裏の視点を知りましたので紹介します。

 X3−1 、x・X2+y・X+z の終結式(→参考:「判別式と終結式」)を求めると、

3+y3+z3−3xyz です。すなわち、X3−1 と x・X2+y・X+z が共通根を持つ条件が

  x3+y3+z3−3xyz=0

です。X3−1 の根を a、b、c とすると、[実際には、 1、 (-1±)/2]

  (xa2+ya+z)(xb2+yb+z)(xc2+yc+z)=x3+y3+z3−3xyz

です。 x・X2+y・X+z の根を p、q とすると、 [実際には、(-y±√(y2-4xz)/2x]

  (p3−1)(q3−1) = (x3+y3+z3−3xyz)/x3 となる...はずです。


 空舟さんからのコメントです。(平成25年4月27日付け)

 なるほど、x3−1 と ax2+bx+c の終結式はシルベスター行列の方法によると

   a,b,c,0,0
   0,a,b,c,0
   0,0,a,b,c
   1 0,0,-1,0
   0,1,0,0,-1


の行列式ですが、第1列に第4列を足し、第2列に第5列を足して

   a,b,c
   c,a,b
   b,c,a


の行列式とも書けることを理解しました。すでに指摘した

 3−1 の根を a、b、c とすると、[実際には、 1、 (-1±)/2]

  (xa2+ya+z)(xb2+yb+z)(xc2+yc+z)=x3+y3+z3−3xyz

と合わせれば、CirculantMatrixの性質を理解できました。


 当HPがいつもお世話になっているHN「攻略法」さんが考察されました。
                                     (平成25年4月27日付け)

3+y3+z3−3xyz=(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yz−zx)
            =(x+y+z)((x+y+z)2−3xy−3yz−3zx)
            =(1/2)(x+y+z)((x−y)2+(y−z)2+(z−x)2
            =(x+y+z)(x+ωy+ω2z)(x+ω2y+ωz)
                         (ただし、ω=(-1+i)/2 ※1の虚数立方根)

を使ってミタ!

問題 a3+b3=(a+b)3−3ab(a+b)を使って、x3+y3+z3−3xyz を因数分解せよ。

(解答は、このページの冒頭参照)

問題 x3+y3+z3 を基本対称式で表せ。

(解答は、「対称式の真実」を参照)

問題 x3+y3+z3−3xyz を x、y、z の1次式の積の形に表せ。

(解答) x3+y3+z3−3xyz=(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yz−zx)
    ここで、 x2+y2+z2−xy−yz−zx=x2−(y+z)x+y2−yz+z2=0 を解くと、
     x=(y+z±(y−z)i)/2 より、1の虚数立方根をω=(-1+i)/2として、
      x=(y+z+(y−z)i)/2=−(ω2y+ωz)
      x=(y+z−(y−z)i)/2=−(ωy+ω2z)
  以上から、 x3+y3+z3−3xyz=(x+y+z)(x+ωy+ω2z)(x+ω2y+ωz) (終)

問題 x+y+z=0 とするとき、x3+y3+z3−3xyz=0 を示せ。

(解答) x3+y3+z3−3xyz=(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yz−zx) より明らか。 (終)

問題 (a−b)3+(b−c)3+(c−a)3 を因数分解せよ。

(解答は、3(a−b)(b−c)(c−a) )

問題 a+b+c=3、a2+b2+c2=5、a3+b3+c3=7 のとき、a4+b4+c4、a5+b5+c5
   の値を求めよ。

(解答は、「淡い期待」を参照)

問題 行列式
      | x y z |
      | z x y |
      | y z x |
   を求めよ。

(解答は、上記の空舟さんのコメント(4月27日付け)を参照)

問題 x、y、z を正の実数とするとき、x3+y3+z3−3xyz≧0 を示せ。

(解答) x3+y3+z3−3xyz=(1/2)(x+y+z)((x−y)2+(y−z)2+(z−x)2) より明ら
    か。 (終)

問題 3辺の長さが x、y、z の三角形で、x3+y3+z3−3xyz=0 が成り立つとき、この三
   角形はどんな三角形か?

(解答は、正三角形)

問題 3次方程式 x3+3px+q=0 の解を求めよ。

(解答は、「3次方程式の解2」、「方程式」やカルダノの公式、フォンタナ(タルタリア)の公式
を参照)

問題(2006年度 東京大学 文系 第3問) nを正の整数とする。実数x、y、zに対する方程式
   xn+yn+zn=xyz ・・・(*) を考える。
(1) n=1のとき、(*)を満たす正の整数の組(x,y,z)で、x≦y≦zとなるものをすべて求めよ。
(2) n=3のとき、(*)を満たす正の整数の組(x,y,z)は存在しないことを示せ。

(解答) (1) (x,y,z)=(1,2,3) のみ
     (2) 解が存在すると仮定する。x≦y≦z としても一般性は失われない。このとき、
          x3+y3+z3=xyz≦z3 より、 x3+y3≦0
        しかるに、x、yは正の整数なので、 x3+y3>0 これは矛盾である。
         よって、(*)を満たす正の整数の組(x,y,z)は存在しない。 (終)


(コメント) 懐かしい問題ばかりですね!でも、最後の東大の問題は趣旨が違うような...
      そんな雰囲気 f(^^;)


 攻略法さんからの続報です。(平成25年4月28日付け)

問題 a+b+c=0 のとき、a3+b3+c3=−3(a+b)(b+c)(c+a) を示せ。

(解答) a3+b3+c3−3abc=0 から明らか。 (終)

問題 a+b+c=0 のとき、次の式の値を求めよ。
(1) (a3+b3+c3)/(abc)
(2) (a2+b2+c2)/(a3+b3+c3)+(2/3)(1/a+1/b+1/c)

(解答) (1) 3 (2) 0

問題 a、b、c、p、q、r を正の実数とするとき、次を示せ。
(1) p≠q のとき、(p+q+r)/3>(pqr)1/3 である。
(2) x を未知数とする方程式 x3−3ax2+3b2x−c3=0 が相異なる3つの正の実数解を
  もつならば、a>b>c である。

(解答) (1) x、y、z を正の実数とするとき、x3+y3+z3−3xyz≧0 から明らか。
     (2) 相異なる3つの正の実数解をα、β、γとすると、
       解と係数の関係から、
        α+β+γ=3a、αβ+βγ+γα=3b2、αβγ=c3
       このとき、(1)より、 (αβ+βγ+γα)/3>(α2β2γ2)1/3 なので、
        b2>c2 から、b>c
       また、 (α+β+γ){(α+β+γ)2−3(αβ+βγ+γα)}
          =α3+β3+γ3−3αβγ>0 なので、
          3a(9a2−9b2)>0 から、 a>b
       以上から、a>b>c である。 (終)


 攻略法さんからの続報です。(平成25年4月29日付け)

問題 x3+y3+3z2=u3+v3 の整数解を求めよ。

(解答) a3+b3+c3−3abc=(a+b+c)((a+b+c)2−3ab−3bc−3ca) において、
    ab+bc+ca=0 になるようにすると、a3+b3+c3−3abc=(a+b+c)3
   a+b≠0 の条件で、c=−ab/(a+b) となるので、代入して、
     a3+b3+{−ab/(a+b)}3−3ab{−ab/(a+b)}={a+b−ab/(a+b)}3
   両辺に (a+b)3 を掛けると、
     a3(a+b)3+b3(a+b)3−(ab)3+3(ab)2(a+b)2=(a2+ab+b23
    よって、x=a(a+b)、y=b(a+b)、z=ab(a+b)、u=a2+ab+b2、v=ab とす
   ればよい。 (終)

類題 x2+y2=z2 の整数解を求めよ。

(解答) (a+b)2=(a−b)2+4ab より、a=m2、b=n2 とすると、
    (m2+n2)2=(m2−n2)2+(2mn)2 (終)


 よおすけさんからの出題です。(平成25年5月28日付け)

 x3+y3+z3−3xyz の因数分解を使った問題があります・・・・。

 u=log(x3+y3+z3−3xyz) のとき、u+u+u=3/(x+y+z) と

なることを証明せよ。(出典:朝倉数学講座5 微分学  能代 清 著)


 S(H)さんが考察されました。(平成25年5月29日付け)

 左辺=(3y2 - 3xz)/(x3 + y3 - 3xyz + z3) + (3x2 - 3yz)/(x3 + y3 - 3xyz + z3)
                                  + (-3xy + 3z2)/(x3 + y3 - 3xyz + z3)

=(3y2 - 3xz + 3x2 - 3yz - 3xy + 3z2)/(x3 + y3 - 3xyz + z3)

=3(x2 + y2 + z2 - xy - yz - xz)/(x + y + z)(x2 + y2 + z2 - xy - yz - xz)

=3/(x + y + z)  QED。

 上記の計算では面白くなく興ざめと言う方を満足させる証明をお願いします。(→ 参考