方程式の解のある性質                    戻る 

 方程式 X3+2X2+4X+8=0 の解は、(X+2)(X2+4)=0 から、X=−2、±2
となる。この3つの解は、絶対値がともに 1 より大きい。

 実は、
     方程式 F(X)=aX3+bX2+cX+d=0 (0<a<b<c<d) について、
    その解の絶対値は、1 より大きい。(掛谷の定理)


の成り立つことが知られている。この定理を用いれば、上記のことは明らかとなる。

(証明) X= 1 は、解でない。今、|X|≦ 1 (X≠1) とする。

    (X−1)F(X)=(X−1)(aX3+bX2+cX+d)

            =aX4+(b−a)X3+(c−b)X2+(d−c)X−d

    上式の X に 1 を代入して、

          0 =a+(b−a)+(c−b)+(d−c)−d

    2式を辺々引いて、

    (X−1)F(X)=a(X4−1)+(b−a)(X3−1)+(c−b)(X2−1)+(d−c)(X−1)

  ここで、|X|≦ 1 (X≠1) より、|X|≦ 1 (X≠1)  (k=1、2、3、4)

 なので、 X − 1  (k=1、2、3、4) は、虚軸の左側に存在する。

  よって、(X−1)F(X) も、虚軸の左側に存在するので、(X−1)F(X)≠0

  ゆえに、X≠1 より、F(X)≠0 となる。

 以上から、「|X|≦ 1 (X≠1) ならば、F(X)≠0 」がいえるので、この対偶をとって、

   「 F(X)=0 ならば、|X|> 1 」が成り立つ。 (証終)

(参考文献:高橋正明 著 複素数(科学新興社))

 上記と同様の問題が新潟大学の入試問題でも出題されている。

問 題  2次方程式 ax2+bx+c=0 (a>b>c>0) について、その解の絶対
     値は、1より小さいことを示せ。


(解) 2つの解を、α、β とすると、解と係数の関係から、

      α+β=−b/a  、  αβ=c/a

  (イ) 2つの解が実数のとき

       α+β<0 、αβ>0  より、 α<0 、β<0

     よって、 |α|+|β|=|α+β|=b/a<1 より

          |α|<1  、 |β|<1

  (ロ) 2つの解が虚数のとき、2つの解 α、β は互いに共役である。

     よって、 |α|2=αβ=c/a<1 より、 |α|<1

     同様にして、 |β|<1 である。 (終)

(コメント) 実数の場合と虚数の場合に分けて示すところがポイントですね。

    6x2+5x+1=0 の解は、−1/2 と −1/3 で確かに成り立っています...。


 上記の入試問題で、掛合の定理の証明を意識すれば、次のような別解も可能だろう。

(別解) x= 1 は、解でない。今、|x|≦ 1 ( x≠1 ) とする。

    (x−1)(cx2+bx+a)=cx3+(b−c)x2+(a−b)x−a

    上式の X に 1 を代入して、 0 =c+(b−c)+(a−b)−a

    2式を辺々引いて、

    (x−1)(cx2+bx+a)=c(x3−1)+(b−c)(x2−1)+(a−b)(x−1)

  ここで、|x|≦ 1 ( x≠1 ) より、|x|≦ 1 ( x≠1 )  (k=1、2、3)

 なので、 x − 1  (k=1、2、3) は、虚軸の左側に存在する。

  よって、(x−1)(cx2+bx+a) も、虚軸の左側に存在するので、

        (x−1)(cx2+bx+a)≠0

  ゆえに、x≠1 より、cx2+bx+a≠0 となる。

 以上から、「|x|≦ 1 ( x≠1 ) ならば、 cx2+bx+a≠0 」がいえるので、

 この対偶をとって、

   「 cx2+bx+a=0 (a>b>c>0) ならば、|x|> 1 」が成り立つ。

 そこで、方程式 ax2+bx+c=0 (a>b>c>0) において、 x=1/α とおくと、

  cα2+bα+a=0 (a>b>c>0) なので、|α|> 1 が成り立つ。

 よって、このとき、 x=1/α より、 |α|<1 となる。 (終)


 HN「H.I.」さんから次のような定理の存在をご教示頂いた。(平成21年11月13日付け)

    実係数代数方程式 x+axn-1+bxn-2+・・・+c=0 において、

   係数の絶対値の最大値をMとすると、解の絶対値αとの関係は、必ず、

       α≦M+1

   になる。



 n=2 のときは、随分昔の早稲田大学の入試問題である。

(証明) x2+ax+b=0 の解を α とし、係数の絶対値の最大値を M とすると、

    解の公式と絶対値の性質から、

        |α|≦{|b|+√(|b|2+4|c|)}/2

             <{|b|+√(|b|2+4|c|+4)}/2

             ≦{M+√(M2+4M+4)}/2

             =(M+M+2)/2

             =M+1  (証終)

(コメント) n=2 のときは易しかったが、一般の場合はどう証明するのだろう。一般には
      解の公式は存在しないわけだから、上記の証明とは違う考え方が必要だ。

 一般の場合は、高木貞治 著 「代数学講義」(共立出版) でその証明がなされている。
(手持ちの改訂新版だと、「根の限界」の105頁)

 そこではとても難しい証明になっているので、高校生レベルの証明を考えてみた。

(証明)  x+axn-1+bxn-2+・・・+c=0 より、 x=−axn-1−bxn-2−・・・−c

 題意より、解 x が 0 でない場合を考えても一般性を失わない。

 そこで、両辺を xn-1 で割ると、 x=−a−b/x−・・・−c/xn-1 となる。

 両辺の絶対値をとって、

 |x|≦|a+b/x+・・・+c/xn-1|≦|a|+|b|/|x|+・・・+|c|/|x|n-1

 係数の絶対値の最大値を M とし、また、 |x|>M+1 とすると、

   M+1<|x|≦M(1+1/(M+1)+1/(M+1)2+・・・+1/(M+1)n-1

            <M(1+1/(M+1)+1/(M+1)2+・・・+1/(M+1)n-1+・・・)

            =M・(M+1)/M

            =M+1

 これは矛盾である。 したがって、 |x|≦M+1 でなければならない。 (証終)

(コメント) 高木先生の、数列の和を級数の和に転換している部分は知ってしまえば何でも
      ないが、なかなか浮かばない発想ですね!とても感動的です。


 上記の解の限界よりも緩い限界の場合として、次の事実が知られている

  実係数代数方程式 x+axn-1+bxn-2+・・・+c=0 において、

      M=max( 1 ,|a|+|b|+・・・+|c| )

 とすると、解の絶対値αとの関係は、必ず、|α|≦M になる。


(証明) M≧1 に注意する。いま、|α|>M と仮定すると、

    |α+aαn-1+bαn-2+・・・+c|

   ≧|α|−|aαn-1+bαn-2+・・・+c|

   ≧|α|−|aαn-1|−|bαn-2|−・・・−|c|

   ≧|α|−|aαn-1|−|bαn-1|−・・・−|cαn-1

   ≧|αn-1|(|α|−|a|−|b|−・・・−|c|)

   >Mn-1(M−|a|−|b|−・・・−|c|)≧0

  これは、 α+aαn-1+bαn-2+・・・+c=0 であることに矛盾する。

  よって、 |α|≦M が成り立つ。  (証終)


(追記) 平成22年1月2日付け

 当HPがいつもお世話になっているHN「zk43」さんから、この話題に関連して、次のよう
なご教示をいただいた。(当HP掲示板「出会いの泉」より)

 F(x)=a+・・・+a1x+a0=0 の解の絶対値は、max(|a|,・・・,|a1|,|a0|)+1 を
超えないというのは非常に面白いと思いましたが、

  F’(x)=0 の解は、F(x)=0 の解をすべて含む凸領域内にある

というのを知りまして、これも非常に面白いと思いました。

F(x)=0 が単根 c1,・・・,cn のみを持つ場合の証明

 F(x)=a(x−c1)・・・(x−cn) より、F’(x)=F(x)・{1/(x−c1)+・・・+1/(x−cn)}

 ここで、F(x)=0 となるのは、x=c (k=1,2,・・・,n) のときで、このとき、

F’(c)≠0 だから、F’(x)=0 となる x においては、 F(x)≠0 である。

 よって、 F’(x)=0  ⇔ 1/(x−c1)+・・・+1/(x−cn)=0

この複素共役を考えることにより、

   s1(x−c1)+・・・+s(x−cn)=0  ただし、 s=1/|x−c|2

これより、 x=(s11+・・・+sn)/(s1+・・・+s) を得る。

ここで、 t=s/(s1+・・・+s) とおけば、

  x=t11+・・・+tn  ただし、 t1+・・・+t=1 、 t>0 (k=1,2,・・・,n)

となる。

 これは、F’(x)=0 となる x が c1,・・・,cn を含む凸領域内にあることを示す。(証終)

 ところで、F(x)=0 が、重根と単根を併せ持つ時、上のことを正確に証明するにはどうす
ればよいのだろうか?

(コメント) なるほど!解の重複度 1 ということを本質的に用いた証明だったので、重根の
      場合は同じようにはいかないわけですね...。

 しかし、上の証明を少し工夫すれば回避できそうな...予感。

(別証) F(x)=a(x−c1)・・・(x−cn) とする。ただし、c1,・・・,cn の中には同じ数があ

    ってもよいものとする。このとき、 F’(x)=F(x)・{1/(x−c1)+・・・+1/(x−cn)}

     ここで、F’(x)=0 で、F(x)=0 となる x については命題は成り立つ。

    そこで、F’(x)=0 で、F(x)≠0 である x については、上記の証明と同様にして

      x=t11+・・・+tn  ただし、t1+・・・+t=1 、t>0 (k=1,2,・・・,n)

    と書くことができ、やはり命題は成り立つ。(別証終)

(コメント) こんな感じで駄目ですか