解の分離 
「解の分離」と聞いて、「あ〜、あれか!」と思われた方は、相当年配の方だろう。最近の
用語では、「解の配置」とか「解の符号」などと言われている。
(因みに、私は、「2根の配置」で学んだ世代です!)
2次方程式の解は、解の公式を用いれば完璧に求められる。次の話題は、その解が数
直線上でどのような位置にあるかを問うものだろう。これが、「解の配置」と言われる所以
だ。
例えば、「正の解と負の解を持つ」と言えば、「解の符号」問題だが、2つの解の間に「0」
が分け入って、2つの解を分離していると考えれば、「解の分離」問題になる。
次の問題は、「解の分離」という言葉を理解するには打って付けだろう。
定数 a>0 とする。2次方程式 x2+ax−1=0 の2つの実数解のうち、ちょうど
1つの解だけが、2次方程式 x2−x−a=0 の2つの実数解の間にあることを示せ。
(→証明はこちら)
このページでは、「解の分離」について世に知られている所を、まとめてみようと思う。
代表的例題
2次方程式 x2−2mx+m+2=0 が次のような解を持つように
定数 m の値の範囲を求めよ。
(1) 2つの解がともに正
(2) 異符号の解を持つ
解法は、いくつか考えられるが、代表的なものをあげておこう。
(解と係数の関係を利用する解)
(1) 題意を満たすためには判別式を D とすると、 D≧0 で、かつ、2つの解 α 、 β に
ついて、 α+β>0 、 αβ>0 であることが必要十分である。
よって、 D/4=m2−m−2=(m−2)(m+1)≧0 より、 m≦−1 、m≧2
解と係数の関係より、 α+β=2m>0 より、 m>0
αβ=m+2>0 より、 m>−2

よって、求めるmの値の範囲は、 m>2
(2) 題意を満たすためには、 αβ<0 であることが必要十分である。
よって、 m+2<0 より、 m<−2 (終)
(コメント) 私が解の分離問題を初めて学んだのは、高校1年の時。なかなか使いこなせ
なかった思い出がある。しかし、受験勉強で鍛えられたせいか、今は苦にならな
い。むしろ「解の分離」という言葉の響きを楽しめる境地になった。
解の分離問題は、関数のグラフを用いる解法が最も考えやすく分かり易いだろう。
(関数のグラフを利用する解)
(1) 2次関数 F(x)=x2−2mx+m+2=(x−m)2−m2+m+2 のグラフの軸の式は、
x=m である。題意を満たすためには、
軸 x=m>0 (あるいは、頂点の x 座標 m>0 )
頂点の y 座標 −m2+m+2≦0 (あるいは、判別式 D≧0 )
境界点での符号 F(0)=m+2>0
であることが必要十分である。
よって、
m>0
−m2+m+2≦0 より (m−2)(m+1)≧0 から、 m≦−1 、m≧2
m+2>0 より、 m>−2

よって、求めるmの値の範囲は、 m>2
(2) F(0)=m+2<0 であることが必要十分である。
よって、 m<−2 (終)
上記の代表的例題の解法を公式化すれば、下記のようになるだろう。
2次方程式
x2+ax+b=0 の2つの解がともに k より大きくなるための必要十分
条件は、
判別式 D≧0 、 (α−k)+(β−k)>0 、 (α−k)(β−k)>0
2次関数
F(x)=x2+ax+b のグラフを活用すれば、
軸の式 x=m>k 、 頂点の y 座標≦0 、 F(k)>0
である。

2次方程式 x2+ax+b=0
の2つの解の間に k があるための必要十分条件は、
(α−k)(β−k)<0
2次関数
F(x)=x2+ax+b のグラフを活用すれば、
F(k)<0
である。

このような考え方を会得すれば、様々な問題に対処できるようになる。
解の分離問題は受験数学のいろいろなところで登場するが次の問題がその代表だろう。
問 題 m>0 のとき、直線 y=2mx+m2 が通過する範囲を求めよ。
直線の方程式 y=2mx+m2 を、m に関する2次方程式 m2+2mx−y=0 と考え
るところがポイントである。そして、
定数 m0>0 が定まる
↓
等式 m02+2m0x−y=0 を満たす点( x , y )が存在する
↓
実数 x 、 y に対して、2次方程式 m2+2mx−y=0 は、正の解 m0 を持つ
と考えられることから、下記のような解答を得ることが出来る。
(解) m に関する2次方程式 m2+2mx−y=0 が少なくとも一つ正の解を持つ条件を
求めればよい。
(イ) 2つとも正の解のとき、
F(m)=m2+2mx−y=(m+x)2−x2−y とおくと、求める条件は、
−x2−y≦0 、 −x>0 、 −y>0
すなわち、
y≧−x2 、 x<0 、 y<0
(ロ) 1つが正で、他の解が0のとき、
F(m)=m2+2mx−y において、 F(0)=0 より、 y=0
このとき、 m2+2mx=m(m+2x)=0 より、 m=−2x>0
よって、求める条件は、 x<0 、 y=0
(ハ) 異符号の解を持つとき、
F(m)=m2+2mx−y において、 F(0)<0 より、 −y<0
よって、求める条件は、 y>0
以上から、求める直線の通過範囲は、

となる。ただし、境界線のうち放物線 y=−x2 (x<0)は含み、直線y=0 (x≧0)は含
まない。 (終)
上記では解の符号に注意して場合分けをしたが煩雑になるという弱点がある。軸の位置
によって場合分けする方が実戦的かもしれない。
実数 x 、 y に対して、2次方程式 m2+2mx−y=0 が正の解 m0 を持つため
の条件を求め、この条件を満たす点 ( x 、 y ) の存在範囲を図示せよ。
(別解) F(m)= m2+2mx−y = (m+x)2−x2−y とおくと、軸の式は、 m=−x
(1) −x >0 すなわち、 x <0 のとき、題意を満たすためには、判別式を
D として、
D/4=x2+y≧0 すなわち、 y≧−x2 であればよい。
(2) −x≦0 すなわち、 x ≧0 のとき、題意を満たすためには、 F(0)=−y<0
すなわち、 y>0 であればよい。
以上から、求める領域は、

となる。ただし、境界線のうち放物線 y=−x2 (x<0)は含み、直線y=0 (x≧0)は含
まない。 (終)
(コメント) 解法が随分スッキリしましたね!予備校などでは、この別解の方で教えられてい
るようである。このタイプの例題はこちらを参照(→大学入試問題探訪 「013」)
冒頭で保留していた問題を証明しておこう。
問 題 定数 a>0 とする。2次方程式 x2+ax−1=0 の2つの実数解のうち、
ちょうど1つの解だけが、2次方程式 x2−x−a=0 の2つの実数解の間
にあることを示せ。
(証明) F(x)=x2−x−a とおく。x2+ax−1=0 の2つの実数解を α、β(α<β)とし、
2次方程式 x2−x−a=0 の2つの実数解を γ、δ(γ<δ)とする。
このとき、題意を満たすためには、 F(α)F(β)<0 であることを示せばよい。
F(α)F(β)
=(α2−α−a)(β2−β−a)
=(αβ)2−αβ(α+β)+αβ+a(α+β)−a(α+β)2+2aαβ+a2
=(−1)2−(−1)(−a)+(−1)+a(−a)−a(−a)2+2a(−1)+a2
=1−a−1−a2−a3−2a+a2
=−3a−a3<0 (証終)
正の解を何個持つかはいろいろな場面で問われる基本問題である。方程式の係数から、
その傾向を伺う方法として、デカルト(Descartes)の符号法則が有名である。
(→ 参考:「高次方程式の解の近似計算」)
例えば、2次方程式 X2+2X−3=0 の左辺の係数だけを左から順に書き並べると、
下表のようになる。
| 1 | 2 | −3 |
| + | + | − |
左の表で、符号の変化は、( + → − )の1箇所ある。
このとき、符号変化数は1である、という。
係数の符号の変化数に着目して、次の公式が知られている。
デカルト(Descartes)の符号法則
方程式 F(X)=0 の正の解の個数は、符号変化数より、偶数個(0も含む)少ない
上の例であげた2次方程式 X2+2X−3=0 の符号変化数は、1 なので、デカルトの
符号法則によれば、正の解を必ず1個持つことが分かる。当然残りの解は負の解である。
このデカルトの符号法則は、2次方程式に適用するには大袈裟すぎるが、3次以上の方
程式に対しては、簡便に正の解の個数を判断する方法として有効だろう。
例 3次方程式 X3+2X−3=0 の符号変化数は、1。 よって、正の解は1個。
実際に、 X3+2X−3=(X−1)(X2+X+3) から明らかだろう。
(注意) この例からも分かるように、係数が 0 の項(つまり、その項がない!)は、それを
飛ばして符号の変化数を数える。
解の分離問題をひねったものとして、次の例題も重要だろう。
例 題 実数係数の2次方程式 F(x)=x2+ax+b=0 が 0<x<1 を満たす
解を少なくとも1つもつための条件を求め、この条件を満たす点(
a , b )の
存在範囲を図示せよ。
(解) 2次方程式の2つの解を α 、 β (ただし、 0<α<1)とおく。
また、 F(x)=x2+ax+b=(x+a/2)2+b−a2/4 より、軸の式は、x=−a/2
(1) β<0 のとき、題意を満たすためには、 F(0)<0 、F(1)>0
すなわち、 b<0 、 1+a+b>0
(2) β=0 のとき、 b=0 で、このとき、 α=−a
題意を満たすためには、 0<−a<1 すなわち、 −1<a<0
(3) 0<β<1 のとき、2つの解がともに 0 と 1 の間なので、
頂点の y 座標=b−a2/4≦0 、 軸 0<−a/2<1 、
F(0)>0 、 F(1)>0
すなわち、 b≦a2/4 、−2<a<0 、 b>0 、 1+a+b>0
(4) β=1 のとき、 1+a+b=0 で、このとき、α=−a−1
題意を満たすためには、 0<−a−1<1 すなわち、 −2<a<−1
(5) β>1 のとき、題意を満たすためには、 F(0)>0 、F(1)<0
すなわち、 b>0 、 1+a+b<0
以上から、求める領域は、

境界線は、放物線 b=a2/4 (−2<a<0)の部分のみ含み、他は含まない。
この例題の応用として、次の問題があげられる。
問 題 直線 y=x と y=−x の上にそれぞれ点A( a , a )、B( b ,
−b )を、
OA+0B=
であるようにとる。この条件を満たしながら、2点 A、B がそ
れぞれの直線上を動くとき、線分ABが通過する領域を図示せよ。
この問題のいやらしいところは、直線 AB ではなくて、線分 AB であるという点である。
(何となく、面倒っち〜ような...予感)
(解) 条件から、
|a|+
|b|=
より、 |a|+|b|=1 である。
この図形はひし形で上下左右対称なので、一般性を失うことなく、 a≧0 、 b≦0 の
場合を調べれば十分である。
このとき、 a−b=1 より、 b=a−1≦0 で、 0 ≦ a ≦ 1 である。
線分 AB の方程式は、
(a+b)(x−a)−(a−b)(y−a)=0 ただし、 b
≦ x ≦ a
a−b=1 なので、 (2a−1)(x−a)−(y−a)=0 すなわち、
F(a)=2a2−2(x+1)a+x+y=0 軸の式は、 a=(x+1)/2
この2次方程式の解で、「 0 ≦ a ≦ 1 、 a−1 ≦ x ≦ a 」という条件を満たすもの
が存在するように、点( x , y )が満たすべき条件を定めればよい。
ここで、 a−1 ≦ x ≦ a より、 x ≦ a ≦ x+1 、 0 ≦
a ≦ 1 なので、
(1) −1 ≦ x < 0 のとき、 0 ≦ a ≦ x+1 で、軸はこの区間の中点である。
よって、題意を満たすためには、判別式を D として、
D/4=(x+1)2−2(x+y)=x2+1−2y ≧ 0 、 F(0) = x+y ≧ 0
であればよい。
すなわち、 y ≦ (1/2)(x2+1) 、 y ≧ −x 、 −1 ≦ x < 0
(2) 0 ≦ x ≦ 1 のとき、 x ≦ a ≦ 1 で、軸はこの区間の中点である。
よって、題意を満たすためには、判別式を D として、
D/4=(x+1)2−2(x+y)=x2+1−2y ≧ 0 、 F(1) = −x+y ≧ 0
であればよい。
すなわち、 y ≦ (1/2)(x2+1) 、 y ≧ x 、 0 ≦ x ≦ 1
以上から、a≧0 、 b≦0 とした場合の領域は、

ただし、境界線も含む。
よって、求める領域は、

となる。
以下、工事中