屈折する理由                          戻る

 いつも会合に使っている所が使えず、今日(2003.8.18)は、横浜ランドマークタワーに
会場を移して会合をもった。朝から雨模様で、桜木町駅をおりて動く歩道前でランドマークタ
ワーを見上げたら、中層階位から雲ですっぽり覆われていて、最上階が見えなかった。もし、
晴れていたら、最上階の展望室に行って(有料)、横浜の景観を楽しもうと計画していたが、
残念ながら出来なかった。

 会合の休み時間に、ふとしたことがきっかけで、「なぜ、光は屈折するのか?」ということが
話題になった。数学的にも興味あるテーマなので、ここで、まとめておきたいと思う。

 光は、2つの異なった媒質の境界面に到達すると、一般にはその境界面で方向を変えて
進む。これが、光の屈折という現象である。

 このような現象は、水の入ったコップの中に箸を入れたときとかでも観察することができる。

             

 いくつか言葉を確認しよう。

  左図において、

  (1) 入射光線と屈折光線は同一平面上。
  
  (2) 入射角と屈折角の正弦比は一定。
     (比例定数を、(相対)屈折率という。)

  が言える。(屈折の法則)

   この屈折の法則は、Snell により、17世
  紀初頭に発見された。




  媒質Tを空気(真空)としたとき、媒質Uが水の場合の屈折率は、大体 4/3 ぐらい
 ガラスの場合は、大体 3/2 ぐらいである。

 光の屈折は、どうして起こるのか、そして、屈折の法則(2)はなぜ成り立つのか、などは、
実は、次のホイヘンス(Huygens)の原理によって説明される。

 この原理は、光は波であるという立場で述べられる。(ホイヘンスの波動説)
上記で述べた屈折の法則は、経験的法則であるが、この法則を合理的に説明するために、
ホイヘンスは、この原理を提唱した。(1678年)
 1807年のヤングの干渉実験により、光の波動性が確認されている。
           (参考文献:小澤秀雄 著 光学と眼科機器から未来へ (学士会会報))


  ホイヘンス(Huygens)の原理

   波は波源から媒質を通して伝搬されるが、
  1つの波面上の全ての点は、新たな波源
  となって、同じ速度、同じ振動数の小波を
  出す。個々の小波は観測されず、これら
  の小波の波面に共通に接する曲面が、そ
  の後の波面として観測される。

   波の進行方向は波面を垂直につないだ
  線になる。









 このホイヘンスの原理を用いれば、波の伝搬速度の変化として、屈折の起こる理由が説明
される。

 一般に、波源に対して、その波面は球面(球面波)であるが、波源が十分遠くにある、または、
波面の十分小さい部分で考えるとすれば、波面は平面(平面波)であるとしてよい。

           

 上図は、光が境界面上の点Aに達してから、Aと同じ波面上にあった点Dが境界面上の点B
に達するまでの波の伝搬の様子を模したものである。

 上図から分かるように、媒質Uにおける波の伝搬速度が、媒質Tにおけるものと同じならば、
点Aは点Cに伝わり、屈折は起こらない。

 これに対して、媒質Uにおける波の伝搬速度が、遅ければ、点Eに伝わり、速ければ、点F
に伝わり、明らかに屈折している。詳しくは、円と接線の関係により説明される。

 いま、屈折光線が直線AEの場合を考える。
入射角を θ、屈折角を r とすると、上図において、∠BAD=θ、∠ABE=r であるので、

     

   よって、
            

  各媒質中の波の伝搬速度は一定なので、上式の右辺は定数となる。
 したがって、入射角と屈折角の正弦比は一定であることが示された。

 空気中と水中との速さを比べると、光は水中の方が遅く、音は水中の方が速い。

 したがって、光が空気中から水の中へ進むとき、上図で言えば、点Aから点Eへ至る軌跡を
描くことになる。また、プールで水中に潜っているとき、割と近くで水上から声を掛けられても、
遠くからのものと感じられるということにも合点がいく。

 ところで、冒頭のコップの中の箸は、水中部分が浮き上がって見える。
これは、次のように説明される。

   光線逆進の原理から、水中部分の箸は、左図の
  ように屈折して、目に達する。このとき、人間の脳
  は、目に入ってきた光線の方向から、その延長線
  上(赤い部分)に箸の先があるものと錯覚する。
  それで、水中部分が浮き上がっているように見え
  たわけである。






(参考文献:金原寿郎 著 物理の研究(旺文社)
       力武常次・北村良夫・清水光治 著 物理T・U(数研出版))

(追記) 光に対するフェルマー(1601〜1665)の考察から、光は通過に要する距離が最小と
    なるような経路に沿って進む。このことを確認してみよう。

  左図のように、2点A、Bを光が通過する場合を
 考える。AB間の水平距離を L とすると、光の経
 路の光学距離 M は、

  

 の最小値により与えられる。実際に、

  


  このとき、
          

  なので、
          

  ところで、屈折の法則    が成り立つとき、

  なので、
          

  となる。また、任意のXにおいて、

          
  が成り立つ。

  以上から、屈折の法則が成り立つ光の経路において、Mは極小かつ最小となる。

 このことを、逆に考えれば、Mが最小となるような経路を光が通過するとき、自然に屈折
の法則が成り立つことになる。

(参考文献:戸田盛和 著 最小原理(数学100の問題より) (日本評論社))

(追々記) 光の屈折・反射について、大変驚くべき事実が解明された。

 今まで、光の入射地点と同じ場所から、反射・屈折していると考えられてきたが、事実は
違うとのことである。産業技術研究所と東大のグループの研究により突き止められた。
                              (朝日新聞2004年9月9日付け朝刊)

      

 ずれはごく僅かで、光学製品(レンズなど)では無視できる範囲らしいが、光通信には影
響があるらしい。