賞金の分配                                 戻る

 1654年にパスカルとフェルマーの間で取り交わされた往復書簡が近代確率論の始まりと
言われる。その際に、次のような分配問題が扱われた。

問題 A、Bの2人が交互に1枚の硬貨を投げる。表が先にn回出ればAの勝ち、裏が先に
   n回出ればBの勝ちとし、勝った方が賞金を総取りする。

    ところが、ある事情により、表があと1回出ればAの勝ち、裏があと2回出ればBの勝
   ちという時点で硬貨投げは中止となってしまった。

    このとき、確率的に賞金を公平に分配するにはどうしたらいいだろうか?


 問題の意味を理解するために、n=2として問題を考えてみよう。

 問題の状況から、硬貨を1回投げて表が出た時点で中止となった場合である。

(パスカル風の考え方) 2回目の硬貨を投げて表が出ればAの勝ちだし、裏が出れば、3回
              目の硬貨で表が出ればAの勝ち、裏が出ればBの勝ちとなるので、
              Aが期待できる賞金額は、
               2回目の結果から、賞金額の1/2をもらい、3回目の結果から、賞
              金額の1/2のさらに1/2をもらう。
               すなわち、 1/2+(1/2)×(1/2)=3/4 より、賞金額の3/4を
              もらう。

 この考え方を現代風に計算すれば次のようになるであろう。

  3回硬貨を投げれば勝負は決する。

 1回目表が出る確率は、1/2 で、2回目も表が出る確率は、(1/2)×(1/2)=1/4

  2回目が裏で3回目に表が出る確率は、(1/2)×(1/2)×(1/2)=1/8

 よって、Aが勝つ確率は、 1/4+1/8=3/8 である。

 ところが、問題文から、1回目が表と判明しているので、

 1回目が表であるときのAが勝つ条件付き確率は、 (3/8)/(1/2)=3/4 となる。

 したがって、賞金額の3/4をAがもらうのが確率的に公平である。


 この(パスカル風の考え方)に対して、フェルマーは次のように解いたと言われる。

(フェルマー風の考え方) 硬貨を高々2回投げれば勝負は決する。実際に、起こり得る場合
               は、 表表、表裏、裏表、裏裏 の4通りで、何れも同様に確からし
               い。
                Aが賞金をもらえるのは、 表表、表裏、裏表 の3通りあるので、
               賞金額の3/4をAがもらうのが確率的に公平である。


 フェルマー風の鮮やかな解答に感嘆される方が多かろう。私自身そうだからである。

 読者のために練習問題を残しておこう。パスカルやフェルマーになったつもりで解いてみて
ください。

練習問題 1個のさいころを投げる。その際、3人A、B、Cの得点を次のように定める。

       目が1、2ならば、Aに1点、目が3、4ならBに1点、目が5、6ならCに1点

      得点合計が先にn点になった人の勝ちで、勝った者が賞金を総取りする。

       ところが、ある事情により、Aはあと1点、B、Cはあと2点とれば勝ちという時点
      でさいころ投げは中止となってしまった。

       このとき、確率的に賞金を公平に分配するにはどうしたらいいだろうか?



 問題の意味を理解するために、n=2として問題を考えてみよう。

 問題の状況から、さいころを1回投げて、目が1(または2)が出た時点で中止となった場
合である。

(パスカル風の考え方) 4回さいころを投げれば勝負は決する。各回の得点者を、例えば、
              1回目A、2回目Bのときは、ABと書くことにする。

 1回目に1、2の目が出る確率は、1/3 で、2回目も1、2の目が出る確率、即ち、AAの確
率は、(1/3)×(1/3)=1/9・・・Aの勝ち

  A(BまたはC)A の確率は、(1/3)×(2/3)×(1/3)=2/27
  ABCA または ACBA の確率は、 (1/3)×(1/3)×(1/3)×(1/3)×2=2/81

 よって、Aが勝つ確率は、 1/9+2/27+2/81=17/81 である。

 ところが、問題文から、1回目の目が1(または2)と判明しているので、1回目の目が1(ま
たは2)であるときのAが勝つ条件付き確率は、(17/81)/(1/3)=17/27 となる。

 したがって、賞金額の17/27をAがもらうのが確率的に公平である。B、Cは確率的に同
等なので、残りの賞金額を折半すればよい。すなわち、B、Cはそれぞれ賞金額の5/27を
もらえばよい。


(フェルマー風の考え方) さいころを高々3回投げれば勝負は決する。実際に、Bが勝者と
               なる場合は、BBA、BBB、BBC、BCB、CBBの5通りで、Cが勝
               者となる場合も5通り。よって、Aが勝者となる場合の数は、
                33−5−5=17(通り)で、何れも同様に確からしい。
                よって、賞金額の17/27をAがもらい、賞金額の5/27をB、Cが
               それぞれもらうのが確率的に公平である。


(参考文献) 岩沢宏和 著 「続 確率パズルの迷宮 パスカル対フェルマー」
                           (数学セミナー ’12.4月号 (日本評論社))



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