πの歴史                          戻る

 新学習指導要領で、ひところ「π」のことが話題になった。今までは、π といえば、3.14
と覚えて使っていたが、これからは、時によっては、3 として使ってもよいとのことであった。
 このことに関して、いろいろ賛成・反対の意見がある。確かに、7世紀頃のインドの数学者
ブラフマグプタは、「実用的な」 π の値は、3であると書いているが、π の歴史・神秘性を考
えるとき、やはり、個人的には、人類固有の財産として、「π =3.14」と覚えて、使って欲し
いものと考える。

 π は、円の直径に対する円周の比率を表す。円が大きくなるにつれ、その円周と直径が
一定の比率で長くなることを、人類が初めて発見したのがいつかは不明であるが、少なくと
も紀元前2000年頃には、問題意識が持たれていたようである。因みに、円周率の記号と
して、現代の我々は、π を用いるが、その歴史は、実は浅い。π を、円周率の記号として
初めて用いたのは1706年ウィリアム・ジョーンズで、まだ300年ほどの歴史でしかない。

π 
を小数点以下100桁まで表示すると、次のようである。

π 3. 1415 9265 3589 7932 3846 2643 3832 7950 2884 1971 6939
9375 1058 2097 4944 5923 0781 6406 2862 0899 8628 0348
2534 2117 0679 ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・

 人類が初めてこの数字を手にしたのは 1706年で、ジョン・マチンによる。

 世の中には、πの値を朗々と諳んじる方もおられるが、実用的にはそれほど多くの桁を
要しない。

 例えば、惑星探査機「はやぶさ」でプログラムされた円周率の値は、「3.141592653589793」
のわずか16桁である。「はやぶさ」は3億キロの宇宙の旅から無事帰還することができまし
た。円周率が「3.14」だと、何と15万キロも誤差がでてしまうそうである。

 その他、指輪の製作工房では「3.14」が使われ、陸上競技場の円周率は「3.1416」とルール
ブックに決められている。

π の覚え方として、次のものが知られている。
(参考文献:佐藤修一 著 自然にひそむ数学 (講談社))

3.
一つ 一つ

 この続きは、・・・

3.141592653589793238462643383279・・・
「身一つ世一つ生くに無意味、曰く、泣く身に宮城(みやしろ)に虫さんざん、闇に泣く・・・」

だそうである。「産医師、異国に・・・」という覚え方も捨てがたいかな...。

 英語圏では日本語での覚え方とは違って、単語の長さで数字を表して覚えるらしい。

How want drink, alcoholic of course,
3.
after the heavy lectures involving quantum mechanics!
(量子力学を使う骨の折れる授業の後には、もちろん酒を一杯飲みたいよ!)

 次のような覚え方もあるらしい。

Can ride horse? Certainly of course.
3.

 次に、π の歴史を年表で見てみよう。

 年 号    歴    史    的    事    柄 
紀元前2000年頃 バビロニア人は、π=25/8=3.125  エジプト人は、π =256/81=3.1605
紀元前3世紀頃 アルキメデスは、223/71<π<22/7 により、π ≒3.14 を知る
2世紀頃 クラウディウス・プトレマイオスは、π =377/120=3.14166
3世紀頃 王蕃は、π =142/45=3.1555
263年 劉徽は、π =157/50=3.14
450年頃 祖冲之は、π =355/113=3.1415929
530年頃 アールヤバタは、π =62832/20000=3.1416
650年頃 ブラフマグプタは、π =平方根10=3.1622
1220年 フィボナッチは、π =864/275=3.141818
1593年 アドリアン・ロマヌスは、π を15桁まで計算
1596年 ルドルフ・ファンケーレンは、π を32桁まで計算
1610年 ルドルフ・ファンケーレンは、π を35桁まで計算
1663年 日本の村松茂清は、π を7桁まで計算
1699年 エイブラハム・シャープは、π を72桁まで計算
1706年 ジョン・マチンは、π を100桁まで計算
1719年 トマス・ファンテ・ド・ラグニーは、π を127桁まで計算
1722年 日本の建部賢弘は、π を40桁まで計算
1761年 ヨハン・ハインリッヒ・ランベルトは、π が無理数であることを証明
1794年 ゲオルグ・ベガは、π を140桁まで計算
1844年 L・K・シュルツ・フォン・ショタスニッキーとヨハン・ダーゼは、π を 200桁まで計算   
1855年 リヒターは、π を500桁まで計算
1873〜74年 ウィリアム・シャンクスは、π を707桁まで計算
1945年D.F.ファーガソンは、527桁以降の計算ミスを指摘
1874年 曾紀鴻は、π を100桁まで計算
1882年 フェルディナント・フォン・リンデマンは、π が超越数であることを証明
1947年 D・F・ファーガソンは、π を808桁まで計算(卓上計算機で1年を要した)
1949年 コンピュータENIACは、π を2037桁まで計算(70時間)

 コンピュータの登場により、π の計算は、飛躍的な進歩を遂げた。π の計算は、コンピュ
ータにとって、究極の体力テストと言わしめるほどである。(イバース・ピーターソン「真実の島」より

1999年段階で、日本の金田康正・高橋大介は日立SR8000を用いて、πの値を687億
1947万桁まで計算している。

 以上のように、π の値はかなり詳しく求められるようになったが、実際問題として、π の値
はそれほど正確な値は必要とされない。小数点以下10桁の数字があれば、地球の外周を、
わずかの誤差で求めることができるというし、30桁あれば、目に見える全宇宙の外周を、世
界最高の顕微鏡でもみえないくらいの細かさでだすことができるといわれている。

 それなのに、人類が、π の計算にひかれたのは、何故なのだろうか。アルフレッド・ヒッチ
コックの1966年の映画「引き裂かれたカーテン」には、「π」という名のスパイ組織が登場
する。その理由を、その組織に是非問うてみたいものだ。

 最後に、3月14日を「π の日」というそうだ。1897年3月14日に、相対性理論で有名な
アルバート・アインシュタインが誕生していることは、特筆すべきことだろう。

(参考文献:デビッド・ブラットナー著 浅尾敦則 訳 π[パイ]の神秘(アーティストハウス))

(追記) 2002年12月7日特報  π の値を 1兆2千億桁まで計算と発表
                          (東京大学情報基盤センター教授 金田康正)

    使用されたスーパーコンピュータは、日立SR8000/MPP(日立製作所)で、1秒間
   に2兆回の計算が可能という。実際の計算が確認されたのは2002年11月24日11
   時39分。ちょうど1兆桁目は 2 で、最後の1兆2411億7730万桁目は 0 とのこ
   とである。(2002年12月8日17時30分 TBS報道特集「新記録樹立!円周率計算の挑戦」より