完全数 
ある数の約数(但し、自分自身は除く)の総和がある数自身に等しいとき、その数のこと
を、完全数という。
完全数で一番有名な数は、6 である。
実際に、6 の約数は、1、2、3 なので、1+2+3=6 が成り立っている。
6 という数は、神(1)・男(2)・女(3)を含む「世界」を表現しているので、完全数と呼ばれ
たらしい。
完全数は、6 以外に、28、496、...などが知られている。
この完全数を求める面白い方法があることを最近知ったので、ここで、まとめておきたい。
1ばかり並べた2進数を、メルセンヌ数という。
11、111、1111、11111、111111、1111111、...
これらを、十進数に直せば、次のようである。
11=1・2+1=3=22−1
111=1・22+1・2+1=7=23−1
1111=1・23+1・22+1・2+1=15=24−1
11111=1・24+1・23+1・22+1・2+1=31=25−1
111111=1・25+1・24+1・23+1・22+1・2+1=63=26−1
1111111=1・26+1・25+1・24+1・23+1・22+1・2+1=127=27−1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
メルセンヌ数は、一般に、Mn=2n−1 の形で知られている。
見て分かるように、メルセンヌ数には素数であるものと、そうでないものが混在している。
n が合成数のとき、明らかに、Mn は素数になりえない。Mn が素数となるためには、n
が素数であることが必要条件である。
特に、メルセンヌ数が素数となる場合、それは、メルセンヌ素数といわれる。(メルセンヌ
素数を、単に、メルセンヌ数という場合もある。)
メルセンヌ素数は、まだそれほど数多く(31個位?)は知られていない。
その数が素数かどうかを判定することは、一般に大変であるが、Lucasは、次の非常に
能率的なLucasの定理(ルカステスト)を発見し、その労力は大幅に緩和された。
Lucasの定理(1876年)
数列{an}を、a1=4、an+1=an2−2 により定義する。
4,14,194,37634,1416317954,・・・
このとき、Mn (n は3以上の素数)が素数であるための必要十分条件は、
an−1 がMn で割り切れることである。
例 a2÷M3=14÷7=2 で割り切れる。よって、M3 はメルセンヌ素数である。
a4÷M5=37634÷31=1214 で割り切れる。
よって、M5 はメルセンヌ素数である。
上の例では、実際に、a2、M3 などの値を求めて、割り算を実行したが、その方法は、あ
まり実戦的ではない。次のように計算するのが普通らしい。
M5=31 に注意して、a1=4
a2=16−2=14
a3=142−2=196−2=194≡8 (mod 31)
a4≡64−2=62≡0 (mod 31)
よって、a4 が、M5 で割り切れるので、Lucasの定理より、M5 はメルセンヌ素数である。
メルセンヌ素数を用いると、完全数は簡単に作られる。
定理(Euclid) Mn をメルセンヌ素数とすれば、Mn(Mn+1)/2 は完全数である。
(証明) Mn=2n−1 より、
Mn(Mn+1)/2=(2n−1)・2n/2=(2n−1)・2n−1 である。
この約数の総和は、2n−1 が素数であることに注意して、
(1+2+22+・・・+2n−1)(1+2n−1)=(2n−1)・2n
ここで、 S=1+2+・・・・・・+2n-1 とおくと、2S= 2+22+・・・+2n-1+2n より、
S=2n−1 である。(詳しくは、「約数の個数と和」を参照)
この和から、自分自身を差し引けば、
(2n−1)・2n−(2n−1)・2n−1=(2n−1)・2n−1・(2−1)=(2n−1)・2n−1
となって、自分自身と一致する。
したがって、Mn(Mn+1)/2 は、完全数である。(証終)
(注)この事実は、既にユークリッド原論で示されていることらしい。ギリシャ時代に完全数
は 6、28、496、8128 の4個が知られていたようだ。
例 冒頭であげた完全数は、次のようにして求められる。
M2=3 より、3・(3+1)/2=6
M3=7 より、7・(7+1)/2=28
M5=31 より、31・(31+1)/2=496
したがって、496の次の完全数も容易に求められる。
M7=127 より、127・(127+1)/2=8128
Euler によれば、偶数の完全数は必ずこの方法で求められるようだ。
ところで、奇数の完全数が存在するかどうかは、まだ分かっていないようだ。
(参考文献:小島寛之 著 数学の遺伝子(日本実業出版社)
和田秀男 著 数の世界 整数論への道(岩波書店)
M.ラインズ 著 片山孝次 訳 数 その意外な表情(岩波書店))
(追記) 広島工業大学の大川研究室から情報をいただいた。
2002年6月9日現在、39個のメルセンヌ素数が発見されている。従って、完全数
も39個あることになる。
最大のメルセンヌ素数は、現在、
213466917−1
で、4,053,496桁の数である。
これらは、スーパーパソコンを用いて計算したのではなく、世界中の20万台以上
のパソコンが参加して発見されたとのことである。「すごい!」の一語である。
(参照HP:http://www2.biglobe.ne.jp/~ytajima/perfect_number.html)
(追々記) 2003年12月3日、過去最大の素数が発見された(検証により、確認)。
220996011−1
632万430桁の数で、40番目のメルセンヌ数だという。
ミシガン州立大学の大学院生マイケル・シェイファー(Michael Shafer)さんが
中心となって、世界中の200万台を越えるパソコンを結んで、2年がかりの計算
で発見されたとのことである。
(追々々記) 平成19年12月20日付け
メルセンヌ数
Mn の n の部分を一覧にすると、下記のようになる。
(参考:「メルセンヌ素数について」)
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||||
| 2 | 3 | 5 | 7 | 13 | ||||
| 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | ||||
| 17 | 19 | 31 | 61 | 89 | ||||
| 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | ||||
| 107 | 127 | 521 | 607 | 1279 | ||||
| 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | ||||
| 2203 | 2281 | 3217 | 4253 | 4423 | ||||
| 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | ||||
| 9689 | 9941 | 11213 | 19937 | 21701 | ||||
| 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | ||||
| 23209 | 44497 | 86243 | 110503 | 132049 | ||||
| 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | ||||
| 216091 | 756839 | 859433 | 1257787 | 1398269 | ||||
| 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | ||||
| 2976221 | 3021377 | 6972593 | 13466917 | 20996011 | ||||
| 41 | ? | ? | ? | |||||
| 24036583 | 25964951 | 30402457 | 32582657 |
?のものは、まだ何番目かが確定していないらしい。(発見者は上記HPを参照)
41番目のメルセンヌ数は、2004年に発見された。723万5783桁と聞いても、あまり
ピンとこないが、1桁当たり4mmの文字の幅(今、この文章を書いている文字の幅!)と
して、1直線にすべて書き並べると、その長さは、
7235783×4÷10÷100÷1000=28.943132 (km)
から、およそ 29 km ほどにもなる。
この距離は、東京都中央区日本橋から第一京浜国道に沿って、ちょうど横浜市神奈川
区までにほぼ等しい。(大体の長さの感覚が掴めたかな?)
(コメント) 1km3分の人が走っても、1時間27分もかかる(!)し、普通に歩いて(分速
80m)も6時間くらいかかる距離ですね。非常に長い数の並びということがイメ
ージできます。
(追記) 平成21年5月9日付け
ゴールデンウィーク中、あまり晴天に恵まれなかったが、今日は久しぶりの好天が望め
そうである。当HPがいつもお世話になっているHN「zk43」さんから、次のような事実を
ご教示いただいた。
6以外の完全数は、1から始まる連続する奇数の立方和で表せる
例えば、
28=13+33(=1+27) 、496=13+33+53+73(=1+27+125+343)
8128=13+33+53+73+93+113+133+153
(=1+27+125+343+729+1331+2197+3375)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(う〜む、なるほど!)
zk43さんによれば、
13+33+53+・・・+(2n−1)3

において、
とすると、右辺が 2p-1(2p−1) となり、これは、メルセンヌ数
Mp=2p−1 に対して、Mp(Mp+1)/2=2p−1(2p−1) が完全数であることから
6以外の偶数の完全数は、必ず、1から始まる連続する奇数の立方和で表せる
ことが示された。
(コメント) 奇数の完全数の存在は、まだ不明だが、奇数の完全数についてはどうなんで
しょうかね?
8128 の次の完全数は、M13=213−1=8191 (1456年 発見者不明)を用いて、
8191×8192÷2=33550336
である。
理論的には明白だが、具体的に確かめてみよう。
33550336=212・8191 なので、約数は全部で、(12+1)(1+1)=26(個)
あり、その約数は、
1、2、4、8、16、32、64、128、256、512、1024、2048、4096、
8191、16382、32764、65528、131056、262112、524224、1048448、
2096896、4193792、8387584、16775168、33550336
で、その総和は、 67100672 で、 67100672÷2=33550336 より、確かに
33550336 は完全数である。
このとき、zk43さんの解法の指針に従えば、n=26=64 なので、
33550336=13+33+53+・・・+1273
と書けることが分かる。
(コメント) とても面白い性質ですね!zk43さんに感謝します。
また、S(H)さんからの情報によれば、偶数の完全数には次の性質もあるそうだ。
偶数の完全数は、三角数である
証明は易しい。
偶数の完全数は、素数 p を用いて、2p−1(2p−1) と表せる(Euler)ので、
2p−1(2p−1)=2p(2p−1)/2=1+2+3+・・・+(2p−1)
より明らかだろう。
さらに、
偶数の完全数の末尾は、必ず、6 または 8 である
という事実も興味深い。
これは、2より大きい素数が、4n+1型か、4n+3型の何れかであることから簡単に示
される。
実際に、 p=4n+1 (n は自然数) のとき、
2p−1(2p−1)=16n(2・16n−1)
ここで、 16n=(10+6)n≡6n≡6 (mod 10) なので、
2p−1(2p−1)=16n(2・16n−1)≡6(2・6−1)≡6 (mod 10)
同様にして、 p=4n+3 (n は自然数) のとき、
2p−1(2p−1)=4・16n(8・16n−1)
ここで、 16n=(10+6)n≡6n≡6 (mod 10) なので、
2p−1(2p−1)=4・16n(8・16n−1)≡4・6(8・6−1)≡4・7≡8 (mod 10)
である。 p=2 のときの完全数は6なので、もちろん命題は成り立っている!
(コメント) S(H)さんの情報検索はスゴイですね!いつも感謝しています。
奇数の完全数の存在は、まだ不明らしいが、奇数の完全数に関して、zk43さんより情報
をいただいた。(平成21年5月13日付け)
素因数の種類が2種類の奇数は完全数ではない
(証明) N=pm・qn (p、q は奇素数で、p<q、m、n は自然数)とする。
このとき、Nの正の約数の総和 S は、
S=(1+p+p2+・・・+pm)(1+q+q2+・・・+qn)
そこで、
S/N=(1/pm+1/pm-1+・・・+1/p+1)(1/qn+1/qn-1+・・・+1/q+1)
<(1+1/p+1/p2+・・・+1/pm+・・・)(1+1/q+1/q2+・・・+1/qn+・・・)
≦(1+1/3+1/32+・・・+1/3m+・・・)(1+1/5+1/52+・・・+1/5n+・・・)
よって、
S/N<{1/(1−1/3)}・{1/(1−1/5)}=15/8<2
もし、Nが完全数ならば、 S=2N でなければならないので、このことから、
素因数の種類が2種類の奇数は完全数にはなり得ない
ことが示された。 (証終)
(コメント) zk43さん、ありがとうございます。奇数の完全数って、本当に存在するのでしょ
うか?