単位分数の和                             戻る

 単位分数とは、分子=1である分数のことをいう。古代のエジプトでは、互いに異なる単位
分数の和として分数を表した。そこで、このような表記の仕方は、エジプト分数と言われ、ヨ
ーロッパでは中世まで広く使われたらしい。

例 5/6=1/x+1/y を満たす異なる自然数 x、y を求めよ。

 多分計算が得意な方は、「1/2+1/3=5/6」から直ちに、x=2、y=3を見いだすことだ
ろう。

 一つの分数 m/n を単位分数の和として表すには、次の手順に従えばよい。

(手順) 1. m/n>1/x を満たす最大の単位分数1/x を見いだす。
     2. 新しい分数 m/n−1/x について、1.を行う。この操作を繰り返す。

例 5/6 を超えない最大の単位分数は、1/2で、5/6−1/2=2/6=1/3
  よって、5/6=1/2+1/3

例 8/11 を超えない最大の単位分数は、1/2で、8/11−1/2=5/22
  5/22 を超えない最大の単位分数は、1/5で、5/22−1/5=3/110
  3/110 を超えない最大の単位分数は、1/37で、3/110−1/37=1/4070
   以上から、 8/11=1/2+1/5+1/37+1/4070

 このような表し方は一意に定まるものではなく、 8/11=1/2+1/6+1/22+1/66 と
いう分解も考えられる。

 単位分数をいくらでも使ってよければ必ず一つの分数は単位分数の和として表される。

 それに対して、使える単位分数の個数を制限すると、問題は極端に難しくなる。

 2以上の全ての自然数 N について、等式

     

を満たす自然数 X、Y、Z が存在するかどうかは、まだ未解決の問題らしい。

 ものの本によると、1億より小さいNの値に対しては、自然数 X、Y、Z は必ず存在する
ことが知られている。

 「2以上の全ての自然数 N について、等式を満たす自然数 X、Y、Z は存在するだろう」
というのが、エルデスとシュトラウスの予想である。

 比較的小さいNの値に対して自然数 X、Y、Z の値を見つけることは、小学校程度の適
度な計算練習と言える。ただ、その計算方法は、日本の学校教育で与えられるものとは
違い、どちらかというと欧米的である。

 自分自身の脳の活性化のために、出来るところまで表を完成させようという気になった。
興味ある読者の方もご一緒にいかがだろうか?「エジプト分数で!」という条件を付けると
厳しそうなので、以下の表では同じ分母も可としよう。

 
 
10
14
10 10 10 11 33
12 12 12 13 26 52
14 14 14 15 10 10 15
16 16 16 17 17 102
18 18 18 19 38 57
20 10 20 20 21 14 14 21
22 11 22 22 23 12 12 138
24 12 24 24 25 10 25 50
26 13 26 26 27 18 18 27
28 14 28 28 29 116 232
30 15 30 30 31 16 16 248
32 16 32 32 33 22 22 33
34 17 34 34 35 14 35 70
36 18 36 36 37 10 185 370
38 19 38 38 39 26 26 39

 上記の表を埋めていく過程で、Nが偶数ならば、必ず等式を満たす自然数 X、Y、Z の値
が見つけられることに気がつく。しかし、Nが奇数のときは、とても不規則だ。Nの素因数分
解と密接に結ぶついていて、自然数 X、Y、Z の値が見つけられるかどうか、確信が持てな
い。エルデスとシュトラウスの予想を証明するには、Nが奇数のときを考えればよい。

 以下では、Nが奇数の場合のみを考えることにする。

 
 
41 12 123 164 43 12 172 258
45 30 30 45 47 14 94 329
49 28 28 98 51 34 34 51
53 14 371 742 55 22 55 110
57 38 38 57 59 30 30 885
61 18 122 549 63 42 42 63
65 26 65 130 67 18 402 603
69 46 46 69 71 20 284 355
73 20 292 730 75 50 50 75
77 44 44 154 79 21 474 1106
81 54 54 81 83 42 42 1743
85 30 102 255 87 58 58 87
89 24 534 712 91 52 52 182
93 62 62 93 95 38 95 190
97 28 194 2716 99 66 66 99

 とうとう100まで達成!日本100名山とか、100という数字は縁起がいいので、手計算
による方法はここで打ち切りにすることにしよう。

 上記の表からも分かるように、Nの値が素因数分解されるときは比較的平易に自然数 X、
Y、Z の値が見つけられる。それに対して、Nが素数のときは、意外に手強い。

 表では、解が一つしか示されていないが、もちろん、解は一つには定まらない。

例えば、次のような別解もある。

 
 
28 28
12 16 12 12 12
19 190 190 20 15 15 15

 当HPがいつもお世話になっている「らすかる」さんが1000までの素数について調べられ
た。(平成17年11月19日付け)

 それをまとめたものが下表である。らすかるさんに感謝します。

 
101 28 404 707 103 28 412 1442
107 30 321 1070 109 30 545 654
113 30 678 1695 127 64 64 4064
131 36 524 1179 137 36 1233 1644
139 36 1668 2502 149 38 2831 5662
151 40 1208 1510 157 40 3768 4710
163 42 2282 3423 167 70 105 7014
173 48 519 2768 179 70 126 8055
181 48 1086 2896 191 52 764 2483
193 50 1930 4825 197 50 4925 9850
199 100 100 9950 211 54 3798 5697
223 60 1115 2676 227 60 1362 4540
229 60 2290 2748 233 60 3495 4660
239 66 717 5258 241 66 723 15906
251 68 1004 4267 257 74 514 9509
263 70 1841 2630 269 68 9146 18292
271 72 2168 2439 277 72 2493 6648
281 76 1124 5339 283 78 849 7358
293 78 1758 3809 307 80 3070 4912
311 80 4976 6220 313 80 5008 12520
317 84 2219 3804 331 84 9268 13902
337 90 1685 6066 347 90 3123 10410
349 90 5235 6282 353 90 7060 12708
359 91 10052 18668 367 184 184 33764
373 96 4476 11936 379 96 12128 18192
383 98 5362 18767 389 102 2334 19839
397 114 794 22629 401 108 1604 10827
409 105 5726 12270 419 110 4190 4609
421 108 5052 22734 431 114 2586 8189
433 112 6062 6928 439 112 7024 24584
443 112 18606 21264 449 114 8531 51186
457 120 3656 6855 461 120 3688 13830
463 120 4630 11112 467 120 7005 11208
479 126 3353 8622 487 126 4383 20454
491 126 8838 10311 499 126 20958 31437
503 132 3018 22132 509 146 1018 37157
521 140 2084 18235 523 138 3138 12029
541 140 5410 15148 547 150 1641 27350
557 144 5013 26736 563 144 9008 20268
569 150 3414 14225 571 144 27408 41112
577 145 33466 167330 587 154 4109 12914
593 150 17790 44475 599 156 7188 7787
601 154 6611 92554 607 156 7284 23673
613 168 1839 34328 617 156 24063 32084
619 160 6190 19808 631 160 20192 25240
641 168 4487 15384 643 168 5144 13503
647 165 14234 19410 653 170 6530 11101
659 168 15816 18452 661 174 3966 19169
673 170 22882 57205 677 176 7447 10832
683 342 342 116793 691 180 6219 13820
701 182 9113 9814 709 180 21270 25524
719 182 28041 30198 727 186 8724 90148
733 192 4398 46912 739 189 10346 39906
743 310 465 138198 751 189 40554 94626
757 192 18168 48448 761 198 6849 16742
769 201 4614 103046 773 196 21644 37877
787 204 9444 13379 797 205 7970 65354
809 210 8090 16989 811 210 11354 12165
821 209 18062 31198 823 210 17283 24690
827 210 24810 28945 829 216 6632 22383
839 336 560 176190 853 220 8530 37532
857 224 5999 27424 859 220 17180 18898
863 360 540 186408 877 240 2631 70160
881 228 10572 16739 883 225 15894 44150
887 230 8870 20401 907 20 4535 43536
911 238 6377 30974 919 231 60654 141526
929 240 13935 14864 937 240 14992 28110
941 240 15056 56460 947 240 28410 45456
953 248 7624 29543 967 484 484 234014
971 252 8739 27188 977 252 8793 82068
983 252 13762 35388 991 252 17838 83244
997 252 35892 62811        

 平成17年11月19日12時11分現在、らすかるさんは、 最終的なプログラムで、今1億
までを確認しているそうである。今のペースで行けば、3時間後ぐらいには1億までの確認
が終わるとのことで、らすかるさんからの新しい知らせが今から楽しみである。

 (実際には、5時間半かかったそうです!らすかるさん、お疲れ様でした!!)

 らすかるさんが作られたプログラムでは、10億とかでも一瞬で解が出るそうである。
例えば、こんな感じになるらしい。

4/1000000007=1/250000002+1/250000003750000015
                   +1/62500001875000021312500108750000210

4/1000000009=1/250000003+1/83333335083333346
                    +1/1893939473484849812500010340909122

4/1000000021=1/250000006+1/83333337083333376
                   +1/10416667604166698343750476250002688

4/1000000033=1/250000010+1/35714288321428620
                     +1/892857273214292865178746107144460

4/1000000087=1/250000022+1/250000043750001915
                   +1/62500021875002871312667518753665310

4/1000000093=1/250000024+1/83333349083334078
                   +1/10416670604167224843785169750831048

4/1000000097=1/250000025+1/83333349750000810
                    +1/4166668308333575954182607250392850



 ところで、らすかるさんは、いろいろ試行錯誤している間に、次のような面白い事実に気
付かれたとのことである。

 まず、Nが合成数については、素因数の場合の分母を定数倍すれば良い。

たとえば、 4/3=1/2+1/2+1/3  より、 4/15=1/10+1/10+1/15

一般には、素数 p に対して、 4/p=1/x+1/y+1/z のとき

                   4/N=4/np=1/nx+1/ny+1/nz

となるので、素数の場合のみを調べればよいが、4n+3型の素数については、実は次の
ような恒等式が成り立ち、等式を満たす自然数 X、Y、Z は必ず存在する。

     

     

 また、同様に、4n+1型の素数のうち、8m+5型の素数については

     

8m+1型の素数のうち、24k+17型の素数については

     

が成り立つので、等式を満たす自然数 X、Y、Z は必ず存在する。

 結局は、24k+1型の素数のみを調べれば十分ということになる。

(因みに、100未満の24k+1型の素数は、実は、73と97のみであり、この2つについて
のみ調べて、後の数は上記の恒等式を用いればよかったということになる。)

 ところで、この問題は、MathworldUnsolved Problems の中で詳しく述べられて
いるそうである。1億どころか、1014=100兆まで予想の成り立つことが既に確かめられて
いるとか...。

 エルデスとシュトラウスの予想
が1014=100兆まで成り立つことは、Swett(1999)に
よる。

 参考文献が20年前のもので、らすかるさんにはご迷惑をおかけしました!

 Swett の「The Erdos-Strauss Conjecture」の冒頭にある恒等式

    

もスゴイですね!どうしたらこんな恒等式が見つけられるのでしょうか?

 こんな風に、24k+1型の素数についても恒等式が見つかるといいですネ。


(参考文献: 吉永良正 著  数学のセンス  (ダイヤモンド社))


(追記) 平成24年12月23日付け

 任意の有理数 a/b (a、bはa<bなる自然数)は、異なる単位分数の和として

    a/b=1/k1+1/k2+1/k3+・・・+1/kn

   (k1、k2、k3、・・・、kn は、k1<k2<k3<・・・<kn を満たす自然数)

と表すことができる。与えられた有理数を超えない最大の単位分数を引くという操作を繰り
返せばよい。

 このような入試問題が、愛知教育大学(2003)で出題された。

例 3/7、12/13をそれぞれ異なる単位分数の和として表せ。

 1/3=3/9<3/7<1/2 より、 3/7−1/3=2/21

 1/11=2/22<2/21<1/10 より、 2/21−1/11=1/231

  よって、 3/7−1/3−1/11=1/231 より、 3/7=1/3+1/11+1/231

 同様にして、 1/2=12/24<12/13<1 より、 12/13−1/2=11/26

 1/3=11/33<11/26<1/2 より、 11/26−1/3=7/78

 1/12=7/84<7/78<1/11 より、 7/78−1/12=6/936=1/156

  よって、 12/13−1/2−1/3−1/12=1/156 より、

      12/13=1/2+1/3+1/12+1/156


 このような考え方を用いて、

    

と書けることを示そうとして、いろいろ計算を行ったが、結局、文字が入っているので、

4/(3n+2)を超えない最大の単位分数は何かがわからず...挫折!

 でも、そんなことにお構いなしに、

   4/(3n+2)−1/(n+1)=(n+2)/{(3n+2)(n+1)}

   (n+2)/{(3n+2)(n+1)}=1/(3n+2)+1/{(3n+2)(n+1)}

と分解されるので、

   

は成り立つ!結局、この等式の出自は謎のままだ。


 ところで、任意の有理数 a/b (a、bはa<bなる自然数)は、異なる単位分数の和として

    a/b=1/k1+1/k2+1/k3+・・・+1/kn

   (k1、k2、k3、・・・、kn は、k1<k2<k3<・・・<kn を満たす自然数)

と表すことができることの証明を考えてみよう。証明してみて、上記のスッキリしない原因が
どこにあるのか分かるかもしれないので...。

(証明) まず、単位分数でない有理数 a/b (a、bはa<bなる自然数)に対して、

    ある自然数 k1 (k1>1)が存在して、 1/k1<a/b<1/(k1−1)

  ここで、 a/b−1/k1=a1/b1 とおくと、 a1=ak1−b 、b1=bk1

   a/b<1/(k1−1) より、 a(k1−1)<b すなわち ak1−b<a なので、 a1<a

  a1=1 ならば、 a/b=1/k1+1/b1

  a1>1 ならば、ある自然数 k2 (k2>1)が存在して、 1/k2<a1/b1<1/(k2−1)

  ここで、 a1/b1−1/k2=a2/b2 とおくと、 a2<a1

 この操作を続けていくと、何れは 1=a<an-1<・・・<a2<a1 となり成り立つ。 (証終)


(コメント) 理論的には納得できるのだが、具体的にと問われると途方に暮れてしまいます
      ね!


(追記) 平成25年7月29日付け

 数年前からエルデスーシュトラウスの予想の完全解決に心血を注いでいられるという大学
生の方からメールを頂いた。

 行き詰った頃に、このページを見つけました。その中にあったらすかるさんの作ったプログ
ラムに興味を引かれました。このプログラムで行き詰まりが解消できるかもしれないと思った
からです。らすかるさんの作られたプログラムのソースをお教えいただけないでしょうか。



(追記) 平成26年9月7日付け

 真分数を2個の単位分数の和で表すことについて、都立三田高校の佐々木正敏先生が取
り組まれている。(数研通信 No.80 (数研出版))

 真分数とは、値が1より小さい分数のことである。すなわち、

  m/n ( m、n は互いに素な自然数で、m<n)

 このとき、 m/n=1/x+1/y (x≦y) となる自然数 x、y を求めたい。

 ここで、m/n を、2個の単位分数を用いて表す場合の数を、φ(m/n )と表すことにする。

例 φ(5/6)=1

例 5/66=1/14+1/231=1/15+1/990=1/22+1/33 なので、φ(5/66)=3

 まず、m=1 のとき、 1/n=1/x+1/y は、(x−n)(y−n)=n2 と式変形され、その
構造は単純である。

 n=pαβ・・・rγ と素因数分解して、n2=p・・・r より、

 x−n=pα1β1・・・rγ1 、y−n=pα2β2・・・rγ2 と書ける。

 0≦α≦2α、0≦β≦2β、・・・、0≦γ≦2γ なので、x≦y を満たす自然数解の
組の個数は、

{(2α+1)(2β+1)・・・(2γ+1)−1}/2+1={(2α+1)(2β+1)・・・(2γ+1)+1}/2

 したがって、 φ(1/n)=(n2の約数の個数+1)/2 であることが分かる。

例 n=4のとき、 n2=24の約数の個数は、5個なので、φ(1/4)=(5+1)/2=3

 実際に、1/4=1/x+1/y において、(x−4)(y−4)=16 (x≦y) を満たす自然数解は、

(x−4,y−4)=(1,16)、(2,8)、(4,4) 即ち、 (x,y)=(5,20)、(6,12)、(8,8)

の3個あり、 1/4=1/5+1/20=1/6+1/12=1/8+1/8 と分解される

例 nが素数のとき、n2の約数の個数は、3個なので、φ(1/n)=2 となる。

 次に、m=2 のとき、必然的に、nは奇数となる。このとき、

 2/n=1/x+1/y は、(2x−n)(2y−n)=n2 と式変形され、その構造は、m=1の場合
と同様である。すなわち、

     φ(2/n)=φ(1/n)

が成り立つ。

例 1/4=1/5+1/20=1/6+1/12=1/8+1/8 において、両辺を2倍すれば、

  1/2=2/5+1/10=1/3+1/6=1/4+1/4

 ここで、2/5は単位分数ではないので不適となり、 1/2=1/3+1/6=1/4+1/4

即ち、確かに、φ(1/2)=2 となっている。

 一般のmについても同様の議論が可能である。

 m/n=1/x+1/y は、(mx−n)(my−n)=n2 と式変形され、x≦y を満たす自然数解

を求めればよい。

 特に、nが素数のとき、 (mx−n,my−n)=(1,n2)、(n,n) 即ち、

   (x,y)=((n+1)/m,(n+n2)/m)、(2n/m,2n/m)

例 m=3、n=5 のとき、 (x,y)=(2,10) で、 3/5=1/2+1/10 と分解される。

  すなわち、 φ(3/5)=1

例 m=5、n=6 のとき、 (5x−6)(5y−6)=36 の自然数解は、

 (5x−6,5y−6)=(1,36)、(2,18)、(3,12)、(4,9)、(6,6) を解いて、

   (x,y)=(2,3) のみ。

 したがって、 5/6=1/2+1/3 と一意に分解される。

 単位分数として、「1/2」、「1/3」は最大の2つであるので、上記から、2つの単位分数の
和で表される真分数の最大のものが、「5/6」であることが分かる。