合同数                                  戻る

 当HPの「お茶の時間−クイズ&パズル」の中の「素朴な長さの計算」に関連して、当HP
がいつもお世話になっているS(H)さんが、平成21年6月10日〜11日付けで、「合同数」
の話題に触れられている。

 合同数 n とは、下図において、有理数 a 、 b 、 c に対して、

     2+b2=c2  、  ab/2=n

   となるような自然数 n のことを言う。





 すなわち、有理数を3辺の長さとする直角三角形の面積が自然数になる場合を言う。

 直ぐに思いつく合同数は、「6」だろう。

 「3、4、5」という有名なピタゴラス数で得られる直角三角形の面積がちょうど、6 である。

 「6」以外に、1000までのうち合同数は、361個あるという。(結構あるんですね!)

 これらを、次のように書き並べると、その特徴が分かるかな?

13 14 15
21 22 23
29 30 31
   ・・・・・・・・・・・・・・

 ただ、この表から、合同数の分布を類推することは危険である。

なぜなら、 8で割って2余る自然数「34」は、合同数 だからである。

 実際に、 a=24 、b=17/6 、c=145/6 について、

    a2+b2=576+289/36=21025/36=(145/6)2=c2

 が成り立ち、 n=ab/2=34 であるので、34は合同数である。

 面積が「5」になる場合として、 ( a , b , c )=( 3/2 , 20/3 , 41/6 ) が知られて
いる。

 また、( a , b , c )=( 3 , 4 , 5 ) 以外に面積が「6」になる場合として、

    ( a , b , c )=( 7/10 , 120/7 , 1201/70 )

もあるらしい。計算すれば確かに当てはまるが、理論的裏付けなしに、このような数を発見
することは難しいような...予感。

 同様に、面積が「7」になる場合として、

    ( a , b , c )=( 35/12 , 24/5 , 337/60 )

も然り。(この例は、オイラーが発見したと言われる。)

 残念ながら、「1」は、合同数にはならない。このことは、フェルマーが無限降下法を用い
て証明しているそうだ。

 この合同数の問題は、楕円曲線の理論とも関係があるらしい。

 有理数 a 、 b 、 c に対して、 a2+b2=c2 、 ab/2=n となるような自然数

n が存在するとき、 x=a(a+c)/2 、y=a2(a+c)/2 とおくと、

点( x , y ) (y≠0) は、楕円曲線 y2=x3−n2x 上の点である。


 実際に、 x3−n2x=a3(a+c)3/8−a32(a+c)/8

             =a3(a+c)/8・{(a+c)2−b2

             =a3(a+c)/8・{(a+c)2−c2+a2

             =a4(a+c)2/4

             =y2
である。逆に、

 点( x , y )を、楕円曲線 y2=x3−n2x 上の有理点で、 y≠0 とすると、

     a=y/x 、 b=2nx/y 、 c=(x2+n2)/y

は、関係式 a2+b2=c2 、 ab/2=n を満たし、n は、合同数となる。


 「1」が合同数でないことは、次の事実から明らかである。

  左図において、楕円曲線 y2=x3−x の有理

 点は、

   ( 0 , 0 ) 、( 1 , 0 ) 、( −1 , 0 )

 の3点しかない。

  y≠0 なる有理点が存在しないので、1は合同

 数にはなり得ない。

  楕円曲線の一般形は、

 2=x3+ax+b  (ただし、 4a3+27b2≠0

で与えられる。数学の世界では、直線や2次曲線

の次に基本的な曲線として知られる。



(追記) 平成28年8月6日、日本大学文理学部数学教室主催のサマースクールで、上記
    の話題に関連するテーマについて、渡辺敬一先生からお話をお伺いする機会を持つ
    ことができた。(渡辺先生は、平成5年に日本数学会・代数学賞を受賞され、平成26
    年9月に日本大学文理学部数学教室を定年退職された。)

 有理数を長さに持つ直角三角形の面積Nが自然数のとき、Nは合同数と呼ばれる。

 Nが合同数のとき、自然数kに対して、k2Nも合同数である。

 逆に、自然数Nに対して、k2Nが合同数ならば、Nも合同数である。

 これらは、三角形の相似を考えれば自明だろう。

例 (a,b,c)=(3,4,5)の場合、N=は合同数である。
  (a,b,c)=(5,12,13)の場合、N=30は合同数である。
  (a,b,c)=(15,8,17)の場合、N=60は合同数である。60=22・15なので、15
 は合同数である。

 以下同様にして、

(a,b,c)=(7,24,25)、(21,20,29)、(9,40,41)、(35,12,37)、(11,60,61)、
    (45,28,53)、(33,56,65)、(13,84,85)、(63,16,65)、(55,48,73)、
    (39,80,89)、(77,36,85)、(65,72,97)

から、N=84=2221、N=210、N=180=62、N=210、N=330

   N=630=3270、N=924=22231、N=546、N=504=6214

   N=1320=22330、N=1560=22390、N=1386=32154

   N=2340=6265

となるので、合同数として次の自然数があげられる。

  5、6、14、15、21、30、60、65、70、・・・

問題 7は合同数であることを示せ。

(解) α=16、β=9 とすると、 a=162−92=175、b=288、c=337

   このとき、 面積は、 175×288÷2=25200=602・7 と書けるので、

   602・7 すなわち、7は合同数である。  (終)

問題 1、2、3、4 は合同数ではないことを示せ。

#1が合同数でないことは上記で既に示されているが、別な視点で...。


 ある自然数が合同数かどうかは悩ましい問題だが、実は、Tunnell(タネル)の定理(1984
年)が知られていて、合同数であるかどうかを判定するアルゴリズムを与える。これは合同数
の必要十分条件ではないものの、合同数の特徴づけには役に立つものである。

定理(Tunnell) 自然数nに対して、次の整数の組の集合を考える。

 A={(x,y,z)|n=x2+2y2+32z2} 、B={(x,y,z)|n=x2+2y2+8z2

 C={(x,y,z)|n=2x2+8y2+64z2} 、D={(x,y,z)|n=2x2+8y2+16z2

 n(A)で、集合Aの要素の個数を表すことにする。

もし、nが奇数の合同数ならば、 n(B)=2n(A) が成り立つ。

もし、nが偶数の合同数ならば、 n(D)=2n(C) が成り立つ。

 この定理を活用すると、

  A1={(x,y,z)|1=x2+2y2+32z2}={(±1,0,0)}
  B1={(x,y,z)|1=x2+2y2+8z2}={(±1,0,0)}

より、 n(B1)≠2n(A1) が成り立つので、1は合同数ではない。

  C2={(x,y,z)|2=2x2+8y2+64z2}={(±1,0,0)}
  D2={(x,y,z)|2=2x2+8y2+16z2}={(±1,0,0)}

より、 n(D2)≠2n(C2) が成り立つので、2は合同数ではない。

  A3={(x,y,z)|3=x2+2y2+32z2}={(±1,±1,0)}
  B3={(x,y,z)|3=x2+2y2+8z2}={(±1,±1,0)}

より、 n(B3)≠2n(A3) が成り立つので、3は合同数ではない。

  C4={(x,y,z)|4=2x2+8y2+64z2}=φ
  D4={(x,y,z)|4=2x2+8y2+16z2}=φ

より、 n(D4)=2n(C4) が成り立つが、これから、4が合同数かどうかは判定できない。

 4が合同数と仮定すると、4=22・1 より、1が合同数となり、これは矛盾である。

 よって、4は合同数でない。



   以下、工事中