そろばんの数理                             戻る

 そろばんというと播州(兵庫県小野市)と思っていたが、雲州(島根県仁多郡奥出雲町)も、
そろばんの産地らしい。雲州そろばん職人さんの助っ人を得て、松江市内のそろばん教室
が作った長さ12.24mのそろばんが、「世界一長いそろばん」とギネスに認定(2007年)
されたようだ。「パチパチパチ」と珠をはじく音にちなんで「888」桁という、とてつもなくデカイ
そろばんのようである。

 そろばんは、中国から室町時代の末期に、長崎や堺の貿易商人の手によって運ばれた
ものらしい。(中国の「算盤」の中国読み「スアン パン」が訛ったものと言われる。)

 「塵劫記」(1627)を著した吉田光由もその本の中でそろばんの基本を説明しているとの
ことで、これまでの「塵劫記」に対するイメージが私自身の中で変わった。非常に商人のた
めに役立つ算術書だったわけで、今風に言えば、商売のための実学書ということだったの
だろう。

 その吉田光由の算学の先生が、日本で一番古いそろばんの本「割算書」を著した毛利重
能で、毛利の開いた算学の道場で学んだ高原吉種の弟子に、あの和算で有名な関 孝和
がいるという話を聞くと、脈々と算術の系譜が流れているという実感が湧き上がってくるから
不思議だ。

 中国のそろばんは、上が2つ珠、下が5つ珠だったというが、私が子供の頃、祖母の家で
そのようなそろばんを見たような覚えがある。商売をやっていたので多分使っていたのだろ
う。こんな感じだったかな?

         

(不遜にも、子供の頃は、そろばんをローラースケート代わりにして遊んでいて、よく祖母に
怒られた!昔のそろばんは底板がはってあって、格好の遊び道具だった。)

 このような使うこともない余分な珠の入ったそろばんは、明治時代の初めぐらいまで使わ
れていたようで、上が1つ珠、下が4つ珠になったのは、昭和13年以降とのことである。
大正時代は、上が1つ珠、下が5つ珠であったらしい。

         

 そろばんというのは、エジプトやギリシア、ローマなどの古代文明諸国でも使われていた
が、各桁の珠が10個もあったりして、構造的な欠陥と筆算の普及で、西欧では、17、8世
紀には姿を消したそうである。

 私の小学校時代に、算数の時間にそろばんの授業があって、「パチパチ」とやっていたよ
うな記憶が...。しかも、算数教育に熱心な小学校であったので、普通の算数の問題に加
えて、そろばんの校内級位認定試験というものもやっていたっけ! 今だから正直に告白す
ると、そろばんの読み上げ算、実は...暗算でやっていました。そろばんの珠をはじくポー
ズはとっていましたが、暗算でやった方が速かったもので、...。

 因みに、学校教育にそろばんが取り入れられたのは、昭和10年(1935年)からで、小学
4年生に教えられたそうである。

 でも今思うと、もっとそろばんのことに熱心に取り組めば良かったと後悔している。私の数
学の先生も、小学生の頃そろばんに没頭していた時期があると聞いた。そろばんの訓練は、
数学の学習に何らかの影響を及ぼすことは間違いない。

 このページでは、過去の悔恨の気持ちも込めて、そろばんにまつわる話題を取り上げよう
と思う。

 私の子供の頃は地域には必ずと言って良いほど珠算塾があったが、最近はあまり見かけ
ない。学習塾に淘汰されたのかもしれない。しかし、最近はまた珠算ブームということで、そ
ろばんを学ぶ子供が増えているとも聞く。

 今の家庭に「そろばん」があることは期待できないので、とりあえずそろばんの構造をおさ
らいしておこう。

     

 定位点は目安とも言われ、一つの定位点を「一の位」に定めれば、その左隣の定位点は
「千の位」を表す。

基本的なそろばんの運珠法

(1) 数の置き方(布数法) ・・・ 下図は、「107」という数を表す。

         

(2) 数の払い方 ・・・ 全ての珠を初期状態:

         

       に戻すことを、「ご破算(ごわさん)」という。

   通常は、そろばんを手前に傾けてから静かに机に置き、人差し指で左から右に一気
  に五珠を上に押し上げるか、あるいは、梁を親指と人差し指ではさみ右から左へ一気
  に一珠と五珠を押し分ける方法がとられる。

   この方法は、オールクリアの場合はいいが、たとえば、計算の途中で「999999」な
  ど一部分だけをクリアする方法としてはあまり得策ではないと、私の大学院の数学の
  先生が仰っている。一つ一つの桁毎左からはじいていく方が、「遅いようで」速く確実で
  手の動きに無駄がなく合理的なのだという。

  「ご破算で願いましては〜」という名口調がなぜかどこかしこから聞こえてきそうである。

 筆算では、繰り上がり、繰り下がりなど下位の数から計算するのに対して、そろばんでは、
逆に、上位から下位の数へ計算していく。私自身の暗算も、そろばんの影響だろうか、繰
り上がり、繰り下がりなども含めて上位の数から始めていることに気がついた。
                                        (こんな私って変!?


(参考文献:山中武夫 著  実用 珠算入門  (文研出版))

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