・ ピックの定理                   S.H氏

 最近ひょんなことから、世の中に「ピックの定理」(G.Pick(墺) 1899年)なるものがあ
るということを知った。

 ピックの定理は、格子点を線分で結んで得られる図形の面積を求めるためにある。

 皆さんは、下図を見て素早く面積を言い当てることができるだろうか? ただし、単位正
方形の面積は「1」とする。

       

 ピックの定理を知らない、おそらく大多数の方は、何とか四苦八苦して、答えを出すのだ
ろう。または、面倒になって放り出すかのどちらかだろう。

 6×7 の長方形の面積から不要な部分の面積を引けばよいから、

 求める図形の面積は、

   6×7 − (2+1+3+2+3+1+5+1+9/2)=42−45/2=39/2

である。

 ピックの定理によれば、上記の図形の内部にある格子点の数(a)と上記の図形の辺上

にある格子点の数(b)が分かると、その面積 S は、

    

で与えられるという。

       

 上図において、 a=16 、 b=9 なので、 

       S=16+9/2−1=39/2

と簡単に図形の面積が求められる。

 このピックの定理を知ると、

       

のような、とんでもない図形の面積も求めてみようという気が起きるから、とても不思議だ!

(ピックの定理により、上図には内部に格子点がないので、辺上にある格子点の個数を数
 えて、面積は、16/2−1=7 である。皆さん、出来たかな?)


 ピックの定理の結果は、あまりに唐突すぎるので、少し考察を加えよう。

 明らかに、頂点のみが格子点(辺上にも内部にも格子点はない!)の三角形の面積は、
1/2 である。

 このような三角形のことを、基本三角形ということにする。

 ここで、基本三角形の面積が 1/2 であることを「明らか...」としたが、事はそう単純で
はないようだ。

 厳密には次のようにして示される。

 基本三角形ABCにおいて、A( 0 , 0 )、B( a , b )、C( c , d )としても一般性を失う
ことはないだろう。

 また、三角形ABCを含む長方形の内で最小の長方形を ADCE とする。

   このとき、長方形 ADCE の内部および辺上には格
  子点が (c+1)(d+1) 個ある。

   ここで、長方形の辺上には格子点が、2(c+d) 個
  あるので、長方形 ADCE の内部には、

   (c+1)(d+1)−2(c+d)=(c−1)(d−1)

  個の格子点がある。

 辺AC上には端点以外に格子点はないので、 △ADCの内部にある格子点の数は、

      (c−1)(d−1)/2 個

 ところで、△AFBの内部にある格子点の数は、上記と同様に考えて、

      (a−1)(b−1)/2 個

  線分BF上の端点以外の格子点の数は、 b−1 個

  長方形BFDGの内部にある格子点の数は、 (c−1−a)(b−1)

  線分BG上の端点以外の格子点の数は、 c−1−a 個

  △BGCの内部にある格子点の数は、 (c−1−a)(d−1−b)/2 個

 以上から、

 (c−1)(d−1)/2=(a−1)(b−1)/2+b−1+(c−1−a)(b−1)
                           +c−1−a+(c−1−a)(d−1−b)/2+1

が成り立つ。 よって、 ad−bc=1 となる。

 従って、基本三角形ABCの面積は、(1/2)|ad−bc|=1/2 である。


 冒頭で与えられた図形は次のようにいくつかの基本三角形に分割される。


   左図の基本三角形の数を
  数えれば、ちょうど39個ある。

   よって、図形の面積は、

      39/2

  となる。

   このような考え方をして、一
  般のピックの定理の結果が得
  られる。








 頂点がすべて格子点である図形 K は一体何個の基本三角形に分割されるのだろうか?
この問いに答えれば、ピックの定理は示されたことになる。

 図形 K の内部およびに辺上にある格子点の数をそれぞれ a 、b とする。図形K に含ま
れる格子点の個数は a+b である。これらが、基本三角形の頂点となる。

 図形 K を基本三角形に分割したときの、辺の数、三角形の数をそれぞれ e、f とする。

このとき、 3f =(図形 K の辺ではない辺の数)×2+(図形 K の辺の一部となる辺の数)

ここで、 (図形 K の辺の一部となる辺の数)= b で、

    3f = ( e − b )×2+b = 2e−b

が成り立つ。 すなわち、 e = (3f+b)/2 である。

オイラーの公式により、  (頂点の数)−(辺の数)+(三角形の数)= 1 なので、

     a+b−(3f+b)/2+f = 1

 よって、 f = 2a+b−2 が成り立つ。

したがって、図形 K の面積 S は、

    

で与えられる。

 これで、ピックの定理は証明された。


(追記) 平成26年6月19日付け

 上記のピックの定理の証明を見ていると、あまり実感がわかないというのが正直な感想で
ある。これに対し、ハーバード大学の

 時枝 正 著 「物理を数学へ応用する」 (数学セミナー’14 7月号(日本評論社))

におけるピックの定理の証明を拝見して、目が洗われるような思いをした。

 次のように説明されると、思わず納得!してしまう。

 平面の格子点に水を体積1だけ入れたコップを逆さに置く。一斉にコップを持ち上げると、
平面には深さ1の水がはられる。

     

 上記の図形をKとすれば、K上に収まる水の体積がKの面積を表す。

 Kの任意の辺の中点に関する対称移動(180°回転)を考えることにより、Kの内部にあ
る格子点上のコップの水は、K内に留まるとしてよい。

 よって、Kの内部にある格子点の数を、a 個とすれば、その部分の面積は、a となる。

 また、Kの辺上の格子点におけるコップの水は、内角θに対して、θ/(2π)だけP内に留
まる。Kの辺上の格子点の数を、b 個とすれば、Kはb角形とみなせ、b角形の内角の和は、
(b−2)πなので、その部分の面積は、(b−2)π/(2π)=b/2−1 となる。

 以上から、求めるPの面積は、 a+b/2−1 となる。

(コメント) こんなに簡単に示せるとは、まさに神業ですね!これが物理の数学への応用の
      威力なんですね。物理がますます好きになりました。


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