隣り合う分数                           戻る

 整数の世界では、2 と 3 は「隣り合っている」、3 と 5 は「隣り合っていない」だろうとい
うことは直感的に理解できる。

 整数論で、「連続する3整数の積は、6 の倍数である」という定理があるが、これは正確
には「隣り合う3つの整数の積は、6 の倍数である。」とすべきだろう。

 ところが、分数の世界に数の範囲を拡げた場合、「隣り合う」という感覚が不明確になる。

 例えば、

   分数の 1/3 と 1/2 は、果たして隣り合っているのだろうか?
   分数の 1/3 と 2/3 は、どうなんだろうか?
      ......... 疑問は尽きない。

 この問題に対して、次のような考え方があることを最近知った。

定義  2つの分数 a/b 、c/d (a,b,c,d は整数で、b,d>0)に対して、

          ad−bc=±1

    が成り立つとき、2つの分数 a/b 、c/d は隣り合うという。

 b=d=1 すなわち 2つの数が、ともに整数の場合は、我々の今までの直感的理解と
一致する。

 この定義を用いると、1/3 と 1/2 は、隣り合っていると言えるが、1/3 と 2/3 は、隣り
合っているとは言えないことになる。

 1/2 と 2/3 については、1/3<1/2<2/3 なので、「あ〜そうかな〜」という感じなのだ
が、1/3<9/20<1/2 である 9/20 が 1/3 とは隣り合っていないことを思うと、とても
不思議な感覚だといえる。

 下図に、分数を並べてみた。

       

 分数全体が、加算集合を示すには上図で十分であるが、「隣り合う」という感覚を説明す
るには不十分である。

 定義によれば、2つの列ベクトル    によって生成される平行四辺形の面積
が 1 であるときに、2つの分数は「隣り合う」ことになる。

 このことを言い換えれば、面積 1 の正方形に一次変換を施して、面積が不変な場合、そ
の1次変換を表す行列の列ベクトルは、隣り合う分数を生成することになる。
 (もちろん、行列の成分は全て整数とする。)

 隣り合う分数には、次のような面白い性質もあるらしい。

性質(1) 2つの分数 a/b 、c/d (a,b,c,d は整数で、b,d>0)が隣り合う分数
     であるとき、2つの分数は既約分数でなければならない。


    (証明) 分数 a/b が既約分数でないと仮定すると、最大公約数 (a,b)は1とは異
        なる。
         条件より、ad−bc=±1 で、左辺が (a,b) で割り切れることになり、矛盾。
        よって、分数 a/b は既約分数。分数 c/d についても同様である。

性質(2) 2つの分数 a/b 、c/d (a,b,c,d は整数で、b,d>0)が隣り合う分数
     であるとき、分数 (a+c)/(b+d) は、これらの間にあって、両方に隣り合う
     分数となる。


    (証明) 2つの分数 a/b 、c/d は隣り合う分数であるので、ad−bc=±1
        (a+c)/(b+d) と a/b について、(a+c)b−(b+d)a=bc−ad=±1
       なので、分数 (a+c)/(b+d) と a/b は隣り合う分数である。
        同様にして、
        (a+c)/(b+d) と c/d について、(a+c)d−(b+d)c=ad−bc=±1
       なので、分数 (a+c)/(b+d) と c/d は隣り合う分数である。
        また、
        ((a+c)/(b+d)−a/b)((a+c)/(b+d)−c/d)=−1/b2(b+d)2<0
       より、(a+c)/(b+d) は、2つの分数 a/b 、c/d の間にある。

 この性質(2)から、1/3 と 1/2 は、隣り合う分数なので、

           1/3<3/8<2/5<3/7<1/2

と次々に隣り合う分数ができるかにみえるが、それは、隣り合う三者間の関係であって、
離れた数同士は、やはり隣り合わないもの

     上の場合だと、1/3 と 3/7,3/8 と 3/7,・・・

も出てくる。なんか収拾がつかない感じだ。

 この「隣り合う分数」という概念から、どのような数学が展開されるのか、とても興味がある。

(参考文献:I.M.ゲルファント A.シュン 著 富永 星 赤尾和男 訳
        ゲルファント先生の学校に行かずにわかる数学 3 代数(岩波書店))

(追記) 平成19年5月19日付け

 平成19年5月8日付けで、当HPの掲示板「出会いの泉」に、HN「数学はとことん難しい」
さんから書き込みがあった。

  テレビ番組をみていると、どうも「予告→本編」の連鎖を客観的な文体で宣伝コードを要
 所要所に埋め込んでいるとみられ、これらを探求していくと、一年間を12区画に分割でき、
 「6 5/6 5 4/5 4 3/4 3 2/3 2 1/2 1 0/1 0」(0は6にまた6は0に置き換え、数列
 の輪で考える)のテーマで数列を構成している雰囲気である。特に分数の並びが妙なので
 インターネット検索をすると「ファレイ数列」「既約分数」「スターン=ブロコット木」を割り出
 したが、これ以上の資料は見当たらない。これらの数列は何を意味しているのだろうか。


 「隣り合う分数」というページは平成15年6月頃アップしたもので、常々「隣り合う分数」や、
分数の合理的な番号の付け方をどうするかなど頭の片隅にあった。掲示板の書き込みを
見てほぼ4年ぶりの見直しをしようと思い立った。

 ところで、数学セミナー(日本評論社) 2005年2月号〜4月号で、京都大学教授であら
れた岩井齊良さんが「分数の世界」と題して連載されている。また、数学セミナー 2007年
3月号で、浅井哲也さんが「エレガントな解答をもとむ」で隣り合う分数を話題にされている。
時は正に「隣り合う分数」で熟したかのようである。

 いま、このページを読み返していて、

性質(2) 2つの分数 a/b 、c/d (a,b,c,d は整数で、b,d>0)が隣り合う分数
     であるとき、分数 (a+c)/(b+d) は、これらの間にあって、両方に隣り合う
     分数となる。


から作られたであろう問題

  a,b,c,d が正の数で、 a/b < c/d ならば、

     a/b < (a+c)/(b+d) <c/d 

 が成り立つことを証明せよ。

が脳裏をかすめる。この問題は古くは福岡教育大学で出題されたものだが、教科傍用の
問題集で解いた覚えがある方がほとんどだろう。

 私自身、この問題を高校1年の不等式の証明の時間に解いた覚えがあるが、この問題
が「隣り合う分数」の話題に関係しているとは、その当時、微塵も思わなかった!

 自然数 n 以下の分母を持つ 0 以上 1 以下の既約分数を大きさの順に小さい方から並
べた数列を、ファレイ(Farey)数列という。ファレイ数列を、 と表すことにする。

例 数列 1 は、 0/1 , 1/1  (数 0 を分数 0/1 で表す。)

例 数列 2 は、 0/1 , 1/2 , 1/1

例 数列 3 は、 0/1 , 1/3 , 1/2 , 2/3 , 1/1

例 数列 は、 0/1 , 1/4 , 1/3 , 1/2 , 2/3 , 3/4 , 1/1

例 数列 は、 0/1 , 1/5 , 1/4 , 1/3 , 2/5 , 1/2 , 3/5 , 2/3 , 3/4 , 4/5 , 1/1

例 数列 は、 0/1 , 1/6 , 1/5 , 1/4 , 1/3 , 2/5 , 1/2 , 3/5 , 2/3 , 3/4 , 4/5 , 5/6 , 1/1


 上記例の数列において新しい項が、前段の2つの分数 a/b ,  c/d から、

            (a+c)/(b+d)

という形の中間分数により与えられている点が面白い。換言すれば、隣り合う分数の話題
に関係するということだ。

 ファレイ数列 が、いくつの項からなる数列かという問いに対して、次の事実が知られ
ている。ファレイ数列の特徴から明らかだろう。

 オイラーの関数 φ(n) に対して、ファレイ数列 F の項数は、

     1+φ(1)+φ(2)+・・・+φ(n)

により与えられる。

 但し、φ(n)=(1 から n までの自然数のうち n と互いに素なものの個数)



例 φ(1)=1 、φ(2)=1 、 φ(3)=2 、φ(4)=2 、・・・ なので、

     ファレイ数列1 の項数は、 1+φ(1)=2

     ファレイ数列2 の項数は、 1+φ(1)+φ(2)=3

     ファレイ数列3 の項数は、 1+φ(1)+φ(2)+φ(3)=5

 以下、同様にして、

     ファレイ数列4 の項数は、7

     ファレイ数列5 の項数は、11

     ファレイ数列6 の項数は、13

     ファレイ数列7 の項数は、19

     ファレイ数列8 の項数は、23

       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

である。

 一般に、ファレイ数列 の項数は、大体 3n22 位であることが知られている。

  n=1 のとき、 3n22=3/π2≒0.3  (実際の項数は、2)

  n=2 のとき、 3n22=12/π2≒1.2  (実際の項数は、3)

  n=3 のとき、 3n22=27/π2≒2.7  (実際の項数は、5)

  n=4 のとき、 3n22=48/π2≒4.9  (実際の項数は、7)

  n=5 のとき、 3n22=75/π2≒7.6  (実際の項数は、11)

  n=6 のとき、 3n22=108/π2≒10.9  (実際の項数は、13)

  n=7 のとき、 3n22=147/π2≒14.9  (実際の項数は、19)

  n=8 のとき、 3n22=192/π2≒19.5  (実際の項数は、23)

    (小さい n については、全然遠いかな...f(^_^;) )


 上記で、数 0 を分数 0/1 で表したように、正の無限大(+∞)を分数 1/0 で表すことに
する。このとき、2つの既約分数 a/b ,  c/d から、新しい既約分数 (a+c)/(b+d)
が順次生成される。

0/1                               1/0
                1/1                
        1/2               2/1        
    1/3       2/3       3/2       3/1    
  1/4   2/5   3/5   3/4   4/3   5/3   5/2   4/1  

 上記表の構成方法から、出現する分数は全て相異なる。

上記表を、スターン=ブロコット(Stern-Brocot)の木構造という。

0/1 から 1/1 までに注目すると、ファレイ数列の各項が大きさの順に出現している。

 上記表の太字の数列が、ファレイ数列 4 で、項数は、7 である。

 上記の表から、次の性質が成り立つことが推察される。

 2つの既約分数 a/b ,  c/d があるファレイ数列の隣り合う2項であるとき、
中間分数 (a+c)/(b+d) はファレイ数列の Fb+d の項となる


例 分数 1/ と 2/ は、ファレイ数列 3 の隣り合う2項であるが、その中間分数
  3/5 は、ファレイ数列 5 の項になっている。

(追々記) 平成19年5月30日付け

 上記では、全く機械的にファレイ数列の各項を計算したが、幾何学的に次のような意味
合いがあることを最近知ることができた。

 当HPの「平成15年度前期 東京大学 理科系」の問題でお世話になった東京大学の坪
井先生がファレイ数列を幾何的に説明されている。(日本数学会市民講演会2006)

 下図は、2つの円 C1:x2+(y−1/2)2=(1/2)2  C2:(x−1)2+(y−1/2)2=(1/2)2
と x 軸に対して順次外接する円を描いたものである。

 

 このとき、円 D の中心のx 座標は、1/2 で、円 E1 の中心の x 座標は、1/3 、円 E2
中心の x 座標は、1/3 となることに驚かされる。

 これは、正にファレイ数列の3 なのだ!

 実際に、手計算でこのことを確認してみよう。

 円 D の中心の x 座標が、1/2 であることは明らかだろう。円 D の半径を R とすると、

三平方の定理より、 (1/2−R)2+(1/2)2=(1/2+R)2 が成り立つ。

 これより、 R=1/8 である。

また、円 E1 の半径を r 、中心 E1 の x 座標を a とすると、三平方の定理より、

   (1/2−r)2+a2=(1/2+r)2   、 (1/2−a)2+(1/8−r)2=(1/8+r)2

が成り立つ。これより、

    a2=2r  、  a2−a+1/4=r/2

第2式より、 4a2−4a+1=2r なので、 4a2−4a+1=a2

すなわち、  3a2−4a+1=0

よって、 (3a−1)(a−1)=0 より、 a=1/3 、1

a=1 は不適なので、 a=1/3

 同様にして、中心 E2 の x 座標が 2/3 であることも示される。

また、円 C1 と円 E1 および x 軸に接する円の中心の x 座標を b 、半径を s とすると、

上記と同様の計算から、

    b2=2s  、  b2−(2/3)b+1/9=2s/9

が得られ、これを解いて、 b=1/4 、 s=1/32 となる。

(コメント) b=1/4 もファレイ数列の4 の項である。順次、原点に近づいて行くにした
      がって、自然数 n の逆数 1/n が円の中心の x 座標を与えている点、さらに
      半径が 1/(2n2) のような雰囲気である点がとても面白い。

  上図の円のことを、フォードの円(Ford circle)と言うらしい。

 このことを一般的に証明してみよう。

 円 E の中心の x 座標が、1/n
で、半径が 1/(2n2)  であるとき、
円 En+1 の中心の x 座標と半径は
それぞれ
       、 

で与えられることを示す。





三平方の定理より、

   (1/2−r)2+a2=(1/2+r)2   、 (1/n−a)2+(1/(2n2)−r)2=(1/(2n2)+r)2

が成り立つ。これより、

    a2=2r  、  a2−(2/n)a+1/n2=2r/n2

第2式より、 n22−2na+1=2r なので、 n22−2na+1=a2

すなわち、  (n2−1)a2−2na+1=0

よって、 ((n+1)a−1)((n−1)a−1)=0 より、 a=1/(n+1) 、1/(n−1)

 a=1/(n−1) は不適なので、 a=1/(n+1)

このとき、半径は、 1/(2(n+1)2) となる。

(コメント) 証明を眺めていると、今更ながらに美しい結果ですね!坪井先生に感謝します。

 さて、話を元に戻そう。上記で述べたように、下表のように中間分数が種々得られた。

0/1                               1/0
                1/1                
        1/2               2/1        
    1/3       2/3       3/2       3/1    
  1/4   2/5   3/5   3/4   4/3   5/3   5/2   4/1  

 この中間分数に新しい概念が次のように付加される。

 2つの分数 a/b < c/d に対して、正の数 p 、 q を用いて作られる分数

            (pa+qc)/(pb+qd)

は、不等式  a/b < (pa+qc)/(pb+qd) < c/d  を満たす。

 実際に、 (pa+qc)/(pb+qd)−a/b={(pa+qc)b−(pb+qd)a}/(pb+qd)b

                         =q(bc−ad)/(pb+qd)b>0

    なので、 a/b < (pa+qc)/(pb+qd) が成り立つ。

    (pa+qc)/(pb+qd) < c/d  も同様に成り立つ。

 このとき、分数 (pa+qc)/(pb+qd) のことを、

   2つの分数 a/b < c/d に対する重み p : q の中間分数という。

例  上記の表において、

   分数 1/1 は、2つの分数 0/1 、 1/0 に対して、重み 1 : 1 の中間分数である。

   分数 1/2 は、2つの分数 0/1 、 1/0 に対して、重み 2 : 1 の中間分数である。

   分数 1/2 は、2つの分数 0/1 、 1/1 に対して、重み 1 : 1 の中間分数である。

   分数 1/3 は、2つの分数 0/1 、 1/0 に対して、重み 3 : 1 の中間分数である。

   分数 1/3 は、2つの分数 0/1 、 1/1 に対して、重み 2 : 1 の中間分数である。

   分数 1/3 は、2つの分数 0/1 、 1/2 に対して、重み 1 : 1 の中間分数である。

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   この計算から、

        分数 1/2 は、2つの分数 0/1 、 1/1 の間にある

        分数 1/3 は、2つの分数 0/1 、 1/2 の間にある

   ことが分かる。

  同様にして、

   分数 2/3 は、2つの分数 0/1 、 1/0 に対して、重み 3 : 2 の中間分数である。

   分数 2/3 は、2つの分数 0/1 、 1/1 に対して、重み 1 : 2 の中間分数である。

   分数 2/3 は、2つの分数 1/2 、 1/1 に対して、重み 1 : 1 の中間分数である。

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   この計算から、

        分数 2/3 は、2つの分数 0/1 、 1/1 の間にある

        分数 2/3 は、2つの分数 1/2 、 1/1 の間にある

   ことが分かる。

  また、重みの変化に着目すると次のように変化している。

   たとえば、

     分数 1/3 の場合は、 3 : 1 → 2 : 1 → 1 : 1

     分数 2/3 の場合は、 3 : 2 → 1 : 2 → 1 : 1

   このことを一般化すると、重みが等しくなるまでは、

      大 : 小小 : 大 ) → 大−小 : 小小 : 大−小

  と変化しているようだ。

   以上をまとめて、分数 2/3 の動向を絵にしてみた。

    

 このように重み p : q の値如何によって、上から下に水がしたたり落ちるように、分数の
落ち着き先(重みが 1 : 1 になるまで)が定まっていくことは、とても面白い現象だ。

練習問題A  重みの変化に着目して、分数 3/5 は、どのように変化するか?

          (答)  5 : 3 → 2 : 3 → 2 : 1 → 1 : 1

練習問題B  左側大→右側大→左側大→重み 1 : 1  と重みが変化するとき出発点の
        分数を求めよ。

          (答)  1 : 1 → 2 : 1 → 2 : 3 → 5 : 3 より、求める分数は、3/5

 練習問題A、B からも分かるように、分数 3/5 と 重みの変化は 1 : 1 に対応している
と言える。

 そこで、重みが左側大のときは数字の「0」を、右側大のときは数字の「1」を対応づける
ものとすると、

  分数 3/5 には、 数の並び 010 が対応する

例 分数 3/4 に対応する数の並びを求めよ。

   4 : 3 → 1 : 3 → 1 : 2 → 1 : 1 なので、 011 が対応する。

 ところで、分数 3/4 について、

      3=4×+3

      4=3×+1

      3=1×

から、分数 3/4 の連分数表示は、[ 0 ; 1 , 3 ] となる。

 重みの変化の計算では順次大きい数から小さい数を引いているが、これは割り算をして
「余り」に換算していることに等しい。

 最後は、余り「0」の一歩手前で計算が終了するので、実質は、

      3=4×+3

      4=3×+1

      3=×

という計算に等しい。

 そこで、第1行には、数の「1」を対応させ、これが「」回、

      第2行には、数の「0」を対応させ、これが「」回、

      第3行には、数の「1」を対応させ、これが「」回、

と翻訳すれば、 011 という数の並びが出現する。

例 分数 3/5 についても同様な計算で、数の並びを見いだせ。

      3=5×+3

      5=3×+2

      3=2×+1

      2=×

 以上から、求める数の並びは、 010 となる。

 分数 3/5 の連分数表示が、[ 0 ; 1 , 1 , 2 ] であることを考えると、

 分数 Q/P の連分数表示が、[ a ; b , c ,・・・, d ] であるとき、

分数 Q/P に対応する数の並びは、

1 を a 個 、 0 を b 個 、 1 を c 個 、 ・・・ 、 1 または 0 を d−1 個並べたもの

となることが分かる。

 前にあげた表

0/1                               1/0
                1/1                
        1/2               2/1        
    1/3       2/3       3/2       3/1    
  1/4   2/5   3/5   3/4   4/3   5/3   5/2   4/1  

において、 0/1 、 1/1 、 1/0 以外の分数について、数の並びに置き換えてみると、

0/1                               1/0
                1/1                
                             
    00       01       10       11    
  000   001   010   011   100   101   110   111  


 隣り合う分数 1/2 と 2/3 の中間分数として、分数 3/5 が作られたわけだが、分

数 3/5 の数の並びが 010 で、分数 1/2 、2/3 の数の並びがそれぞれ 0 と 01

であることを考えると、分数の落ち着き先が、 010 → 0 と 01 を端点にもつ範囲に

なるものと推察される。

 すなわち、「01」は「01」の左側で、かつ、「0」は「」の右側に位置する。

 数学セミナー 2007年3月号で、浅井哲也さんは、「エレガントな解答をもとむ」に、次の
ような問題を出題された。

 分母が100以下のすべての既約分数が大きさの順に並んでいる。分数 17/66
の両隣りの分数を求めよ。


 これまでに学んだ理論をこの問題に適用してみよう。

まず、
      17=66×+17

      66=17×+15

      17=15×+2

      15=2×+1

       2=×

 以上から、分数 17/66 に対応する数の並びは、 000100000001 となる。

したがって、両隣りの分数に対応する数の並びは、

     00010000000    0001000000

となるはずである。

 これらの連分数表示は、それぞれ [ 0 ; 3 , 1 , 8 ] 、[ 0 ; 3 , 1 , 7 ] なので

分数に直せば、それぞれ、 9/35 、 8/31 となる。

 このとき、2つの分数 9/35 、 8/31 は、 9×31−8×35=−1 より隣り合う分数で、

分数 17/66 は、それらの中間分数である。

 さらに、2つの分数 9/35 、 17/66 の中間分数を考えると、 26/101 となり、これは、

分母が100以下という条件に反するから不適である。

 同様に、2つの分数 17/66 と 8/31 の中間分数 25/97 を考えると、分数 8/31 よ

り分数 25/97 の方が、より分数 17/66 に近い。

 以上から、
        分母が100以下のすべての既約分数を大きさの順に並べたとき、

      分数 17/66 の両隣りの分数は、9/35 と 25/97 である


ことが示された。

 上記の問題について、当HPがいつもお世話になっているHN「攻略法」さんからレポートを
頂いた。(平成22年12月7日付け)

 y/x、17/66 (ただし、 y/x<17/66) が隣り合う分数から、 17x−66y=1 となる。

不定方程式 17x−66y=1 を解くと、一般解は、

      x=35+66t 、 y=9+17t  (t は整数)

 17/66の片方の親は、F66では、 0<x<66 だから、 t=0 の 9/35 となる。

もう1つは、ファレイ数列の中間分数の生成方法から、

    分子=9+c=17 、 分母=35+d=66 より、 8/31 である。

 よって、 9/35、17/66、8/31 である。

 また、F100 とすると、17/66、25/97、8/31 と中間分数ができる。

(コメント) 3年半ぶりにこのページを見て、まだまだ書き足りないところがあるような...予
      感!攻略法さんに感謝します。


 攻略法さんからの補足です。(平成22年12月8日付け)

 不定方程式 17x−66y=1 ( y/x<17/66 で隣り合う分数)の一般解

      x=35+66t 、 y=9+17t  (t は整数)

は、t=0、1、2、3、・・・ とすると、 9/35、・・・、17/66 の中間分数を生成する。

・・・
9+17 9+17×2 9+17×3 ・・・ 17
35 35+66 35+66×2 35+66×3 ・・・ 66

同様に、17/66<y/x は隣り合う分数から、 −17x+66y=1 となる。一般解は、

      x=31+66t 、 y=8+17t  (t は整数)

で、t=0、1、2、3、・・・ とすると、 17/66、・・・、8/31 の中間分数を生成する。

・・・
8+17 8+17×2 8+17×3 ・・・ 17
31 31+66 31+66×2 31+66×3 ・・・ 66


 当HP読者のK.S.さんから、ファレイ数列に関する話題をメールで頂いた。
                                      (平成23年10月7日付け)

 ファレイ数列において、

 数列 1 : 0/1,1/1 より、分子の和=1、分母の和=2 である。

 数列 2 : 0/1,1/2,1/1 より、分子の和=2、分母の和=4 である。

 数列 3 : 0/1,1/3,1/2,2/3,1/1 より、分子の和=5、分母の和=10 である。

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 このことから、次の命題が成り立つことが予想される。

命 題  ファレイ数列において、(分子の和)/(分母の和)=1/2 が成り立つ。

 自然数 n に関する数学的帰納法で証明できる。

(証明) n=1 のとき、明らかに成り立つ。

  n=k(k≧1)のとき、命題が成り立つと仮定する。すなわち、

   数列 F において、(分子の和)/(分母の和)=1/2

  n=k+1 とする。分母が、kまでのファレイ数列の分母の和=A、分子の和=Bとすると、

 帰納法の仮定より、B/A=1/2 なので、 A=2B

 一方、k+1を分母に持つ既約分数は、オイラーの関数から、Φ(k+1)個あり、分母の和

 は、(k+1)Φ(k+1)となる。

  一般に、n/m が既約であれば、(m−n)/m も既約であるので、分母が k+1 のときの

 既約な分数の分子の和は、等差数列の和の求め方と同様の方法(ガウスの方法)を用いて、

  Φ(k+1)(1+k)/2 ( ← 項数×(初項+末項)/2 )

 となる。このとき、分母=k+1 のときのファレイ数列の分母の和=C、分子の和=D とす

 ると、D/C=1/2 より、C=2D となる。

  よって、n=k+1 のときのファレイ数列について、

   分母の和/分子の和=(B+D)/(A+C)=(B+D)/(2B+2D)=1/2

以上により、すべての自然数 n について、命題が成り立つ。  (証終)

(コメント) ファレイ数列の美しい性質ですね!K.S.さんに感謝します。


 当HPがいつもお世話になっているHN「空舟」さんから、関連する話題を頂いた。
                                      (平成25年2月10日付け)

 「隣り合う分数」に関連する重要な性質が見当たらなかったので紹介します。特に、(1)か
ら導かれる(2)の性質がとても面白いと思います。

(1) 分数が隣り合う ⇔ ファレイ数列の項として隣り合う

 すなわち、以下が成り立つ。(a、b、c、d:自然数)

  2つの分数 a/b、c/d が(分数として)隣り合う

 ⇔ |ad-bc|=1

 ⇔ (0,0)、(a,b)、(c,d)、(a+c,b+d)で囲まれる平行四辺形の面積=1

 ⇔ 上記の平行四辺形の辺・内部には格子点が存在しない

 ⇔ a/b と c/d の間には、Max(b,d)以下の分母を持つ分数は無い

 ⇔ ファレイ数列Fn[n=Max(b,d)]において、a/b と c/d は(項として)隣り合う。

(参考:ピックの定理(Wikipedia) 、当HP「ピックの定理」)

(2) 中間分数の意義

 a/b と c/d が隣り合う時、中間分数 (a+c)/(b+d) は、a/b、c/d と隣り合う。

 そこで、それぞれの間で(1)を適用して分かることは、

  中間分数は、a/b と c/d の間にある最も分母が小さい分数

である。


(追記) 平成25年11月16日付け

 上記では、隣り合う分数について、いろいろ見てきたが、「隣り合う」とくれば、やはり順番
に数えたくなるのが人情だろう。

       

 上図のように、分数を並べれば数えられる(可算集合)ことは明らかだが、如何せん、分数
が重複しているので、このままではダブったまま数えられてしまう。ダブりがないように数える
ことができれば、その分数が最初から数えて何番目かも分かるし、逆に、ある順番にある分
数が何であるかも分かってしまう。(→ 参考:「分数と有理数の違い」)

 このような夢のようなことが可能であることを、次の書籍で最近知ることができた。

 寺澤 順 著 「有理数をカウントする数式」 (数学セミナー ’13年12月号 (日本評論社))

 関数
     

を用いると、n番目の有理数は、 (0) で与えられる。

(例) 1番目の有理数は、F1(0)=F(0)=1(=1/1)

   2番目の有理数は、F2(0)=F(F(0))=F(1)=1/2

   3番目の有理数は、F3(0)=F(F(F(0)))=F(1/2)=2(=2/1)

   4番目の有理数は、F4(0)=F(F(F(F(0))))=F(2)=1/3

   5番目の有理数は、F5(0)=F(F(F(F(F(0)))))=F(1/3)=3/2

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


(コメント) 計算していて、ワクワクしてきますね!


   以下、工事中!