世界的に異常な日本の労働時間、違法残業

 [目次] 各層・各分野での長時間労働   建設業の長時間労働   国際機関から勧告された日本政府   国際労働機関の雑誌

各層・各分野での長時間労働


 各産業分野・職種での過労死が増えています。その背景となる長時間労働の実態を明らかにする調査やアンケートも増えています。こうした調査や過労死裁判で指摘された労働実態等をできるだけ集めて、官庁統計・調査には表れない職場の実態に少しでも迫りたいと思います。関連した調査などをご存じの方は、メールでお知らせ下さい。メールは(S.Wakitaのメール・アドレス)まで。

○看護師
 看護現場実態調査  2002/05 日本医労連(京都集計版抜粋) (京都医労連のHP
 残業時間は平均16.9時間と、全国集計の9.0時間を大きく上回っている状況で、サービス残業なしは3分の1程度(34.6%・平均6.2時間)に止まりました。
○高校卒業生(青年労働者)
 高校卒業生の生活と労働アンケート  2000/06 日本高等学校教職員組合
 「残業手当」が実績通り支給されているのは5割にも満たず、「ほとんど支給されない」が23%もあることです。
○生協労働者
 生協労連青年部会「第6回不払い残業実態調査アンケートまとめ」
○国家公務員(霞ヶ関)
 環境庁職員の勤務実態(全環境庁労働組合「残業問題アンケート」の集計結果)
 霞ヶ関に多発する過労自殺--過酷な長時間労働と人員不足(1999年8月11.21日合併号:国公労新聞1025号)
 菊池光男「霞ヶ関官庁街の長時間労働の実態」(国公労連『国公労調査時報』2000年8月号、No.452)
○新潟県
 時間外労働の現状等に関する実態調査結果 2001/07(新潟県の労働者)
 「サービス残業は、45.2%の労働者が行っている」
○家族
 サービス残業いっせい調査の結果  2001/03 夫や子ども等、家族の長時間労働を告発(新日本婦人の会HP)

○これらの調査には、驚くべき長時間、サービス残業の実情が表れています。それぞれが労働基準法に反する内容です。いかに実態として違法残業が広がっても、法違反は法違反です。この事実をきちんと問題にすることが基本です。
 財界や規制緩和論者は、まだ、違法な実態を追認するだけの「裁量労働制」の拡大や「ホワイトカラーへの労働時間規制の緩和」などを論じています。皮相な実態認識に基づいた、もっともらしい理屈です。しかし、その結論は、実態を隠蔽するだけで、過労死を一層増大してきた1990年代以降の間違った労働政策をさらに推進するものだと考えます。
○最近、「新社会人サイト」というHPを見つけました。そこに、就活中には聞けなかった大きな疑問「残業代はつくの?」という記事がありました。このサイトから企業へアンケートを取っています。驚くことに、残業代を付けない会社や時間の上限を決めている会社などもあります。新入社員の声も掲載されており、興味深い内容です。(S.Wakita)
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建設業の驚くべき長時間労働

 建設業での長時間労働、サービス残業の実態を明らかにした「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)」の労働時間アンケートが、同協議会のホームページに掲載されており、大いに参考になります。

 改善の見られない建設産業の労働時間の実態(リンク:2001年度日建協時短アンケートから)

 なかでも外勤者は、2001年で残業時間だけで887時間もあり、合計2772時間の長時間労働にも達しており、「他産業の多くでは年間総労働時間が2,000時間を切っていくなか、私たち建設産業の労働時間はますます悪化の一途をたどり、その較差も一層広がってきています。」と指摘しています。

 サービス残業についても、アンケートの分析で、「2001年4月6日に厚生労働省から公表された『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準』を紹介しました。これは労働基準法によって、使用者は労働者の労働時間を適切に管理する義務を有しているのに、自己申告制などによって労働時間の適正な把握を怠り、割増賃金の未払いや過重な長労働時間といった問題が生じている現状を是正しようとするものです。これを受け、2001年10月から11月に全国の労働基準監督署が2589箇所の事業所(全産業)に立ち入り調査をした結果、サービス残業が指摘された事業所は29%にあたる750箇所になり、今後悪質なケースは書類送検を検討しているという報告がありました。もし私たち建設産業の事業所に集中的な調査が入ったとすれば、結果は火を見るより明らかです。」と指摘されています。

 そうしたなかで、「図20 内外勤別 健康に対する不安項目の推移」では、過労死に至る健康不安が表明されています。

○建設業の長時間労働は以前からも問題として取り上げられてきました。このアンケートの結果は、建設業の状況が改善されるどころか、深刻になっていることを示すものです。必見のアンケートです。
 アンケートの分析記事でも指摘されているように「過労死基準」を超える長時間労働が広がっています。アンケートでも「サービス残業」が多いことが明らかにされています。
 このアンケートの結果は、これからも建設業で働く人のなかで「過労死」の悲劇が増える危険性があることを心配させるものです。日建協事務局長の谷口氏の論考記事も掲載されていますが、深刻な内容です。犠牲者を出さないためにも、関係者、労働行政の抜本的な対策が重要かつ緊急だと思います。(S.Wakita)
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国際機関から労働時間の長さを指摘・改善勧告された日本政府

 国連:経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の最終見解 2001年9月24日(外務省・仮訳より)
経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会
第26(特別)会期 2001年8月13日-31日
規約第16条及び第17条に基づく締約国により提出された報告の審査
日本
C.主な懸念される問題
19.委員会は、締約国が公的部門及び私的部門の両方での、過大な労働時間を容認していることに重大な懸念を表明する。
E.提言及び勧告
46.委員会は、締約国が、公的部門及び私的部門の双方において、労働時間を削減するために必要な立法上及び行政上の措置をとることを勧告する。
○日本政府は、国連・社会権規約委員会から日本における社会権の状況について鋭い指摘を受けています。この点では、外務省のホームページにある関連資料は必見です。
 なかでも労働時間については過労死を生む長時間労働が世界的に知られており、懸念される問題と提言・勧告の中で明確に指摘されています。
 なお、国際的な労働法・労働安全に関する情報については、国際安全センターのHPと、そのリンク集が参考になります。(S.Wakita)
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日本の労働時間は長い 国際労働機関の雑誌より


○労働時間の国際比較(その1)
一人当たり年間労働時間
  1990年 1991年 1992年 1993年 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年
オーストラリア 1,869.0 1,858.0 1,850.0 1,874.0 1,879.0 1,876.0 1,867.0 1,866.0 1,860.0 1,864.0 1,860.0
カナダ 1,789.8 1,769.5 1,761.0 1,765.4 1,783.3 1,779.8 1,787.4 1,776.9 1,767.4      
日本 2,031.0 1,998.0 1,965.0 1,905.0 1,898.0 1,884.0 1,892.0 1,864.0 1,842.0 1,842.0   
アメリカ 1,942.6 1,936.0 1,918.9 1,945.9 1,945.3 1,952.3 1,950.6 1,965.9 1,956.8 1,975.8 1,978.7
韓国 2,514.0 2,498.4 2,478.0 2,476.8 2,470.8 2,484.0 2,467.2 2,436.0 2,390.4 2,497.2 2,474.4
ニュージーランド 1,820.1 1,801.7 1,811.7 1,844.0 1,851.2 1,843.3 1,837.9 1,822.7 1,825.3 1,841.5 1,817.3
フランス 1,657.0 1,645.0 1,646.0 1,642.3 1,638.9 1,613.9 1,607.7 1,605.3 1,604.2      
ドイツ 1,593.3 1,572.7 1,622.1 1,610.3 1,576.6 1,557.2 1,545.3 1,546.1 1,503.1 1,556.2 1,480.1
アイルランド 1,728.0 1,708.0 1,688.0 1,672.0 1,660.0 1,648.0 1,656.0 1,604.0 1,552.0 1,524.0 1,520.0
ノルウェー 1,432.0 1,427.3 1,436.9 1,434.0 1,431.0 1,414.0 1,407.4 1,399.4 1,398.6 1,395.1   
スウェーデン 1,546.3 1,533.2 1,550.6 1,567.4 1,605.7 1,613.2 1,623.0 1,624.0 1,629.4 1,635.1   
イギリス 1,767.4 1,767.8 1,728.9 1,722.8 1,736.5 1,740.0 1,738.0 1,736.5 1,731.0 1,719.9   
オランダ 1,433.0 1,421.0 1,413.0 1,404.0 1,388.0 1,384.0 1,374.0 1,365.0         
出所:ILO労働統計 Annual hours worked per person
なお、「より長時間働くことが、より良い労働につながるか?」(ILO)(JISHAのHP)参照
ILO発行「World of work」1999年10,11月号(訳 国際安全衛生センター)
○日本の労働時間はこんなに短い?1987年の労働基準法改悪で導入された「裁量労働制」等によって実際の労働時間が統計に表れなくなった。少なくとも1990年代に入って過労死が急増している。その背景に膨大なサービス残業の蔓延があるが、統計はこれを捉えていない。
 お隣の韓国は2000時間をかなり超える労働時間数を示している。しかし、サービス残業時間数を考えると日本の労働者のなかには韓国に近い長時間働く人も少なくない。むしろ、韓国は支払い残業が多いとも考えられ、不払い残業の多い日本よりマシな面もあると言える。
 なお、アメリカは依然として長時間労働であるが、日本では統計から除外される有給休暇を労働時間数に含むという。
 要するに、日本は、依然として世界一、二の長時間労働の実態をもつ国であると思われる。(S.Wakita)
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last update: August 14, 2002