代表あいさつ


労働基準オンブズマンの活動への参加・協力のお願い
 私たちは、2001年6月、大阪で「労働基準オンブズマン」の活動を始めることにしました。
 もう二度と「過労死」や「過労自殺」の悲劇を繰り返してはならないという切実な思いからです。

 日本では、1980年代以降、労働者が働きすぎて心臓・脳疾患で亡くなるという過労死が問題になってきました。21世紀に入った現在、過労死は無くなるどころか、ますます増加しています。とくに近年になって、過労が原因となっての自殺、過労自殺も増えています。

 過労死をめぐる労災申請や裁判も増えています。その職種も、トラック、タクシー、バスの運転手、証券外務員、営業職、銀行・金融機関職員、広告代理店社員、新聞・雑誌編集者、テレビ番組制作者、進学塾講師、SE、プログラマー、国・自治体の公務員、学校教員、小学校長、保育士、消防士、警察官、研修医、デザイナー、設計技師、工事の現場責任者、測量会社社員、中間管理職、フリーカメラマン、派遣労働者・・・と実に広い範囲に及んでいます。
 年齢層も、40歳、50歳といった働き盛りの年齢だけではなく、最近では、23歳や24歳といった、働いてまだわずかな期間にしかならない若い人にも広がっているのが特徴です。

 たしかに、過労死・過労自殺をめぐって事後的な労災認定、裁判を通じての原因究明、さらに補償・賠償は重要な意味をもっています。 しかし、何より大切なことは過労死・過労自殺の悲劇をこれ以上生み出さないことだと思います。
  「過労死110番」の相談活動でも、「このままでは夫が過労死しそうだ」「長時間のサービス残業が当たり前になっている」「何とか娘の今の無茶苦茶な働き方をやめさせたい」などと、過労死をしたくない、させたくないという本人や家族からの相談が増えているのです。

 労働者は、人間として健康に働く権利をもっています。
 第2次大戦が終わってすぐ1947年に制定された労働基準法は、その第1条で 「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」と定めています。
 また、この労働基準法から分かれて、労働安全衛生法が労働者の健康や安全を守るために1972年に制定されました。
 労働基準法は労働条件の最低基準を定めたものです。 「労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」(第1条第2項)と規定しています。
 労働安全衛生法第1条は、職場における労働者の安全と健康を確保し「快適な職場環境の形成を促進すること」を目的とすると明記しています。
 こうした労働基準法や労働安全衛生法がしっかりと守られていれば、過労死や過労自殺が生ずることはありません。

 しかし現在の日本では、多くの職場で労働基準法や労働安全衛生法は最低基準ではなく「最高基準」となっているのが実態です。
 労働基準法が定める労働時間の上限を守れない人員しか雇わず、違法なサービス残業をさせたり、有給休暇をとらせないことを前提にした人員配置さえ日常化しています。これは、使用者(企業や当局)の多くが労働基準を守らない労務管理政策をとってきたからです。中小零細企業だけでなく、大企業、さらには模範となるべき官公庁を含めて使用者が、労働基準法や労働安全衛生法に違反する労務管理をしている場合も少なくないのです。
 労働基準法違反は経営者のモラルにも反する恥ずべきことですし、違反は罰則を伴う重大な犯罪であることを認識しなければなりません。
 人間らしい労働と生活を取り戻すために労働基準法や労働安全衛生法を守ることを当然の思想とすべきです。

 残念ながら政府は、こうした法定の最低基準を守らせるのに不熱心でした。法違反の蔓延(まんえん)に対して監督体制を整備するなど必要な取り組みをせず、過労死・過労自殺の広がりに手をこまねいてきました。むしろ、裁量労働制の拡大など、「規制緩和」の名目で法違反や監督不備を追認してきました。1日8時間労働を定めたILO第1号条約さえ、いまだに批准していません。

 違法状態がまん延しているだけに、現行の労働基準法や労働安全衛生法を守らせるだけでもかなりの改善が勝ち取れます。過労死や過労自殺の悲劇を少しでも予防することが可能だと思います。

 労働基準オンブズマンは、こうした思いを共にする市民の自主的な活動です。
 まだまだ小さな組織です。力も不足しています。しかし、一歩一歩、試行錯誤を繰り返しながら、波紋を広げていくつもりです。この波紋が大きく広がれば、世界でも異常な日本の職場の現状を変えるきっかけにできると思います。

 是非、「労働基準オンブズマン」活動の趣旨を知っていただき、多くの皆さんの、ご賛同、ご協力、ご参加、ご教示、ご支援をいただければ幸いです。
 どうかよろしくお願いします。
2001年9月5日
労働基準オンブズマン代表  脇  田     滋

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