第1回山歩会ゴルフコンペ開催・激闘の軌跡!

96年卒  ミスターC・B


 男の朝は早い。まだ日も上がらない午前5時、目を覚ますと外は未だ暗闇に包まれ ている。すると、そこへ電話の音が響く。
ライバルの声、「オキテル?」。
 このオレの眠りを邪魔するための汚い手に違いない。何と言っても彼は今日の勝負 に負ければ来年のシード権を失いかねないのだから。
必死になるのも仕方あるまい。だが、しかし、この日に合わせた猛特訓のおかげで体 調はバッチリ、体の底から力がみなぎって来る感じ、絶好調だ。
 世間ではタスガ―・ウッズ、マルヤマヒデキが本命視されてるようだが、誰が相手 だろうと負ける気がしねえ。今期開幕戦にして、最終戦のこの試合に勝って歴史に名を残すのは、この俺しかいねえぜ。
 
 決戦の舞台、淀川ゴルフクラブは何年かの歴史を持つ名門、ゴルファー憧れのコー ス、庶民の憩いの場、幼児の遊び場である。
 例によってスタートは山歩会タイムで30分遅れ、そのため1番ホールのスタート はこの俺見たさにギャラリーが騒いでいる。俺たちの前の組は スギハラユキオ、ジャンボ蟹江、オカモトアツコ。トロそうなのが揃ってやがる、迷 惑かけるんじゃねえぞ!
問題の俺の組は、精密機械の異名をとるビリット・デュバル、さぞショットも正確に 違いない。ゴルフなのに皮のコートを着てプレーしている。恐る べし!
 もう一人はクラブも持ってない。俺のクラブを借りるつもりらしい。なんという余 裕!要注意だ。
 
 普段せっかちな俺だが、いいプレーをするための極意は肝に銘じている。それは常 に平常心、周りを気にしないことだ。他の連中のことなど 知ったことか。遅れた奴は気にしてるフリをしつつおいて行く、山での教訓だ。俺は 俺の自分のゴルフに徹するのだ。
 その日の調子は1番ホールのティーショットで掴めるものだが、この俺はいきなり ピタリとピンに寄せる、べたピンだ。歓声が湧くことに慣れてい る俺もちょっと嬉しい。今日は予想通り絶好調だ。俺の打った球は吸い寄せられる様 にグリーンに向かっていく。年増のキャディー(ヤスイ)は俺 が打つ度に「ナイスショット!」を連呼する。
 
   ライバルたちはというと、精密機械男は残り100ヤードだろうが、または10 ヤードだろうが、正確に50ヤードのショットを打つのだった。う〜ん 恐るべし!
 またある者は、残り100ヤードのところから10ヤードづつ進んでいっている、 驚くほど堅実な男だ!
そんなライバルたちにも負ける気がしないほど今日の俺は調子が良かった。しかし、 油断は禁物、このままこの変則12ホール(PAR35)を攻め て攻めて攻めまくるのだ。  ・・・つづく
 
 
 ゴルフの1ラウンドは長丁場である。重いクラブを背負い1打づつ進んで行く姿 は、ザックを背負い1歩づつ進む山登りにも通じる。
「大切なのは楽しむこと。」と言ったのは”世界のササキイサオ”だが、勝負の世界 は厳しい。「大切なのは勝つこと。」と言ったのはダイエーの ラオー監督だ。
 この俺にとっても大切なのは勝つこと、結果がすべてだ。山頂にさえ着けばロープ ウェイを使おうがヘリを飛ばそうが構わねえ。
登ったという事実は残るじゃねえか!
 若手の注目株のナルシアや初の賞金王を狙うムラグチフミアキとの中盤の激しい バーディー争いを制し、ベストスコアを確信した俺はついに 最終ホールのティーグラウンドに立つ。
 ズボンは激闘を物語る様に泥まみれだが、雨のテント内での生活に比べれば何でも ない。息は多少乱れてはいるが高地トレーニングの おかげで心地良いリズムを踏んでいる。優勝を意識してパッティングの手がシビレた が、慎重に最後のホールにボールを沈める。
 大きな歓声が湧き上がり、この俺はそれに応えて右手を高々と振り挙げるのだっ た。
 
 
最終結果 :  優勝       元副会長     71打(ハンデ36)
         準優勝      ミスターC・B   54打(ハンデなし)
         ベストグロス賞  ミスターC・B     〃
         ブービー賞    ミスターC・B     〃
 
 
 第1回山歩会ゴルフコンペは終わった。・・・これ以上ない最高のゴルフを演じ優 勝間違いないと思われたこの俺は、あのクラブも持たない、 10ヤードづつ、少しづつグリーンに向かう堅実な男の前に、いや、36という大き なハンデのキレットを越えることが出来ずに破れ去ったのであ る。
 結局、ロープウェイで登るよりも自分の足で少しづつ登った方が早い場合だってあ るのであった。おめでとう!
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