エノケンから始まって、渥美清、萩本欽一、ビートたけしなど日本を代表する喜劇人・コメディアンを次々と生み出してきた”笑いの聖地”浅草六区にショー&ビア・レストラン「ロックン・ロック」が誕生して今隼で三年目。連日、「欽ちゃん劇団」によるコントとダンスのショーが繰り広げられている。ここのステージで、どのコントにも顔を出し、大人が中心の観客の笑いを一人でかっさらっている感のある実質上の座長格が、佐藤あつし(三二)である。コメディアンの芸やキャラクターが限りなく”素人”に近づきつつある昨今、この人の”プロ”の芸を観るたびに何だかホッとする。あつしは非常にびりぴりした芸神経の持ち主で、エノケンの”身軽さ”と”ひらめき”、八波むと志のゾクッとするような”精気”、渥美清の”押し出し”の立派さ、堺駿二の瓢々とした芸の”軽み”、由利徴の持つ”いかがわしさ”と”不良性”をすべて身に備えていると言ったら、いささか大仰か。
『ドキド欽ちゃんスピリッツ』のレギュラー出演者に抜擢され、萩本欽一と出会ったのが今から十一年前。その後、萩本のもとを一時離れて結成した「AKIK0」が久し掻りに現れた王道ドタバタコント・トリオとして各方面の注目を集め、トントン拍子に売り出していったが、さあ、これからという時に、あつしの独裁的な性格が災いしてか、解散に追い込まれてしまう。メンバーの二人(伊勢浩二、河田貴一)はあつしを外した形で、「BOOMER」というコンビを組んで『ボキャブラ天国』などで活躍。あつしも別の租捧と二度にわたってコンビを組むが、いずれも一年前後で解散。世間的な知名度では、BOOMERにすっかり差をつけられてしまった。
二、三年前までのあつしはテレビのお笑いの世界で天下を取ることを目標にしていたが、ここにきて、「テレビで売れよう一生をが売れまいが関係ない。かけて、”うまいコメディァン”になりたい。そのために、萩本欽一という素晴しい人に笑いを教わっていきたい」といった具合に考え方が変わったようだ。
僕に言わせれば、今の段階で、あつしは十分にうまい。あの”うまさ””面自さ”をテレビを利用して全国的に認知させるべき時が来ていると思うのだが。現代の”浅草の暮劇王”、”ヒロポンが似合うコメディアン”あつしの活躍に期待する。
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