ジェイムソン


ケン・ブルーウンの『酔いどれに悪人なし』でデビューしたアイルランドの私立探偵ジャック・テイラー。なにしろアル中だから、基本的には何でも飲めるのだが、やはりアイルランド人らしくアイリッシュ・ウイスキーが登場してくる。

暴漢に襲われ負傷し、入院したジャックを友人が訪ねてくる。

彼は上着に手を入れ、ジェイムソンのハーフボトルを取り出した。
「ありがたい」
ボトルからラッパ飲みすると、折れた鼻がウィスキーの威力で動いたように錯覚した。ウィスキーは心臓に当たって跳ね返り、痛む肋骨にぶつかりながら下降していった。

いかにもアル中らしいとも思いますが、酒飲みならどこか理解できる感覚だろう。こうまでならずにお酒を楽しめるのが良いとは思うが、まぁそれだと小説にならないしね。

さて、そのジェイムソンだが、アイリッシュ・ウイスキーなので、麦芽を乾燥させる工程でピートを使わずに乾燥させるため、スモーキーなフレーバーがつかず、よりまろやかで軽やかな味わいが持ち味ですね。ただ最近の私のようにアイラ・モルトを好んで飲んでいると、ちょっと物足りないと感じるかもしれない。ちなみに、スコットランドでは“whisky”と綴りますが、アイルランドでは“Whiskey”と綴るとか。

本書はさすがに、酒飲みの心理をよく判っていて、なるほどと思えるのはこんなシーン。

行きつけのバーを失い、新しい店を探してとびこんだあるバーでのジャック・テイラーの独白を紹介しておこう。

バーテンは五十代の男だった。それだけの年齢が必要な職業はふたつだけ。
バーテン
床屋

そういうわたしは、最近では一回千円の床屋を愛用しているので、そんなことにこだわる余地はないのですが・・・。


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