ミチェラーダ


ミチェラーダと聞いて、さっとレシピが判る人は、バーテンダーの中にも少ないと思う。だが、ビールをベースにした、れっきとしたカクテルです。そんな、めずらしいカクテルが登場するのはジェフ・アボットの『海賊岬の死体』。のうてんきな治安判事ホイット・モーズリーが活躍するシリーズだ。同じ町の女性警官クローディアがつきあっているベンとのデート・シーンでミチェラーダが登場する。

ベンがうなじにキスをする。「ワインでもどう? ビールがいいかな。ミチェラーダを作ろうか?」
「ミチェラーダがよさそうね」
ベンがキッチンに入って、丈の高いグラスふたつに氷をたっぷり入れ、タバスコとウスターソースを少々と、コショウを振り、ライムの絞り汁を一滴たらした。さらに、冷えたドスエキス・ラガービールをそれぞれのグラスに注ぐ。
(中略)
そのミチェラーダは最高においしいステーキに似た味だが、冷たくて喉ごしがよかった。

わたしが調べた範囲でも、ミチェラーダというカクテルは確かに存在する。正しくはサルサ・ソース(サルサとはスペイン語でソースという意味だから変な言い方だが、ここでは世間での呼び方に従おう)を使うのが正統だと思われる。ジェフ・アボット流のミチェラーダは、サルサ・ソースがない場合に、その代用として手近なタバスコとウスターソースを使用したものと考えて良いでしょう。

ところで、このミチェラーダ。わたしの行きつけのバー葡萄(千葉市中央区富士見)で、本編で紹介されるようなレシピでつくってもらいました。タバスコの量にもよるでしょうが、なかなかピリッとした味わいがある。『海賊岬の死体』で書かれているようにおいしいステーキに似た味という表現はピンとこないし、何杯も飲めるカクテルではありませんが、今年のような猛暑の夏にはいいかもしれない。ただし、バー葡萄でつくてもらった時の作り方が『海賊岬の死体』と違うのは氷の使い方。本書では先に氷を入れているが、これだとビールが泡だってしまうので、最後に氷を入れて軽くステアするのが正解です。この点に気をつけてお試しあれ。


ホームへ戻る酒とミステリの日々へ戻る