ポーラ・L・ウッズの「エンジェル・シティ・ブルース」は、なかなか硬派な読み物だ。主人公シャーロット・ジャスティスはロス市警の殺人課の女性刑事だが、黒人ということもあって、全編を通して人種問題という根深い問題が横渡っている。ただし、黒人といっても貧困に喘ぎながら成長したわけではなく、黒人としては成功した親の元で、中流の生活をおくっている。そのせいかどうか分からないが、飲むアルコールの方もちょっと洒落ている。本書「エンジェル・シティ・ブルース」のなかでは、こんなシングルモルトが登場する。
わたしはついに起きあがり、わたしだけのおとぎ噺の本を捜しにいった。それとグラス一杯の温かいミルクで、どうにか眠りにつけるかもしれない。結局、父が”大人のためのおっぱい”と呼ぶ、潮の香りのする十二年もののブナバインを飲むことにして、そのシングルモルトのスコッチを一フィンガーと寄せ集めの捜査ファイルを手に腰をおろした。
本書の翻訳ではブナバインという音をあてているので、そのまま引用したけれど、日本ではもっぱらブナハーブンと呼ばれている。ゲール語で河口を意味するbunと川を意味するabhainからきているようだから、ブナバインという方がより正確かもしれない。もっともここらはわたしの英語の知識だから、かなりいい加減ですよ。
ところで、ブナハーブンはいわゆるアイラモルトに属する。このコーナでも紹介しているラフロイグなどがその代表格だが、うがい薬のような味と香りを特徴としている。だが、このブナハーブンはそういったクセが少なく、マイルドなアイラモルトだ。そのためアメリカでは最も人気のあるアイラモルトなどと言われている。なんでも先代のブッシュ大統領の時代にはホワイトハウスのパーティーには必ずこのブナハーブンが出されていたという。
これを一杯飲んでぐっすり眠れるということから”大人のためのおっぱい”という表現になっているのでしょうが、なんとなくエロチックな連想をしますね。おっぱいからシングルモルトが出てきたら嬉しいなぁ。いまのブッシュさんはどうだか知らないけれど、クリントンさんあたり、例のモニカさんのおっぱいからシングルモルトを飲んでいたりして・・・。