メスカール


世の中にはほんとうに珍酒と呼ぶべきお酒があるもので、このメスカールなどその代表格だろう。メスカールについて調べようとインターネットを検索しても意外に情報が少ないのだが、とんでもない酒を飲まされた経験として、このメスカールについて書いている方が何人がいる。どこがとんでもないかと言うと、テキーラのなかに甲虫の幼虫がはいっているのだ。

ロケーション・スカウトを生業とするジョン・ペラムを主人公とするジェフリー・ディーヴァーの「ヘルズ・キッチン」で登場してくる。本編でペラムは事件解決のため知り合ったヒスパニック系ギャングの首領ラミレスと酒を飲む。

ぺラムは彼に、メキシコでロケーションの仕事をしたときの話をしてやった。非番の照明係や撮影助手、スタントマンたちと、太った白い虫入りのメスカール酒を延々と飲み、どんな幻覚作用が起きてきたか自慢しあったものだった。「おれは虫を飲んでも幻覚なんて起きなかったがね」
「いや」ラミレスは意義を唱えた。「確かにこいつらは頭をおかしくさせる」と言って、自分の虫を飲み込んだ。

幼虫が頭の中を這いまわるような連想をするからなのだろうが、すすんで手を出したい酒ではないなぁ。一説には唐辛子をかじりながら飲むと結構いけると言う方もいるが、御免被りたい。日本にもマムシ酒なんてのがあるが、あれは漬けておくだけでマムシを食するわけではないからね。それとも、そう思っているのはわたしだけで、あのマムシも食する人がいるのかな、滋養強壮にいいと言って。