和田誠さんの「お楽しみはこれからだ」のシリーズは映画の名セリフを集めた作品で、このホームページの「とりあえずハードボイルド」のコーナーの着想のもとになっていることは言うまでもない。その「お楽しみはこれからだ」にこんな会話が紹介されている。
スナックを経営する女性に客が「ここの自慢の料理は何だい」と聞く。彼女は「○○よ」と答える。客が「他には?」と聞くと彼女「それのおかわり」と言う。気のきいたやりとりだが何の映画だか忘れてしまった。「荒野を歩け」のアン・バクスターだったような気もする。
近頃、リチャード・ノース・パタースンの「最後の審判」を読んでいて、上の会話を思い出すシーンに出くわした。女性弁護士キャロライン・マスターズは姪の巻き込まれた殺人事件の弁護のため久しぶりに故郷に戻り、そこでかつての恋人で今は検事をしているジャクソンと旧交を温める。
「中の雰囲気を味わいたいかい? それとも、外で何か飲む?」
「外がいいわ。飲み物は何があるの?」
「スコッチか、さもなくばスコッチだ」
(中略)
やがて、アイスバスケットをひとつ、皿洗い機で傷のついた乳白色のグラスを二個、グレンリヴェットのボトルを一本持って戻ってくる。「上等のスコッチね」キャロラインは言った。
「スコッチか、さもなくばスコッチだ」とはいいですね。こんど飲みにいった時に使ってみよう。ところで、ここで登場するグレンリヴェットだが、スペイサイドモルトと呼ばれるスペイン川(むろんスコットランドの)流域で産するウィスキーの中でも、その蒸留所がスコットランド最初の政府公認蒸留所第1号となったことで有名だ。また、19世紀後半にグレンリヴェットの名声にあやかろうと、勝手にグレンリヴェットを名乗る蒸留所が続出して裁判沙汰となり、本家本元には「ザ」をつけて、「ザ・グレンリヴェット」と呼ばれることになりったなんて逸話もある。ものの本には大麦の味わいと蜂蜜のような風味なんて書いてあるが、さてそんな味だったかなぁ。小生の記憶は曖昧だ。