最近では海外にも日本料理店があり、海外ミステリの登場人物が日本料理を食べたからといって驚くことはないけれど、日本酒の銘柄まで特定してあるのは珍しいかろう。ポール・マックエルロイの「航空管制官」では、主人公の管制官ライアン・ケリーがデートする場面で日本酒が登場する。
「サケは飲んだことがないんだ」
「なんにでも最初はあるものよ。郷に入ってはっていうでしょ。わたしにまかせて」
クリスティがメニューを見て、値の張る上等な酒は読み飛ばし、値のこなれた辛口の特選銘柄を指さした。キモノ姿のウエイトレスがお辞儀をしていったんさがり、鬼ころしのはいったとっくりと、指ぬきほどの大きさのおちょこをふたつもってまた現れた。
「鬼ころし」と言えば飛騨高山の老田酒造のそれだろうが、老田酒造のホームページによれば「鬼ころし」というのは鬼もころす程の辛口という意のほかに、粗悪な酒という意味もあって、「鬼ころし」なる銘柄は各地にあるようだ。
なぜ著者のポール・マックエルロイが「鬼ころし」に興味を覚えたかはあくまで推測ですが、ネーミングに関係ありますね、絶対に。英語でどのように紹介されているか知らないけれど、「水のような酒」だとか「寒い時期の梅」だのと言うより余程インパクトはあるだろう。
なお、老田酒造さんからは数年前、航空会社の機内雑誌(英語)の日本酒紹介ページの表紙に載ったことがあったようで、マックエルロイがそれを見た可能性もあるとのメールをもらいました。