英国の新人作家モー・ヘイダーのデビュー作「死を啼く鳥」である。著者は日本でクラブのホステスをした経験もあるというから、ひょっとしてお世話になった人もいるかもしれない。猟奇的連続殺人事件という、いささか食傷気味のネタではあるけれど、「猟奇的」だけに依存せずに、うまくまとまった作品になっている。
場所はロンドン。ある廃材置き場から同時に五つもの腐乱死体が発見される。そして驚くべきことに被害者たちは胸を解剖され、なかに小鳥が縫いつけられていた。この猟奇的な連続殺人の捜査に重要犯罪捜査隊に所属するジャック・キャフェリー警部たちがあたる。被害者たちには、あるいかがわしいパブに出入りしていたという共通点があり、やがて一人の男が容疑者として浮かび上がってきた。しかし、警察の監視の中、その容疑者は・・・。
たくさんある猟奇殺人ネタでも被害者の胸に小鳥を縫いつけるというのはかなりショッキングな部類にはいると思うが、物語の展開もなかなか巧みな構成になっている。実は、読者にはかなり早い時点で犯人とおぼしき人物が提示される。それだけに読者としては、なにか裏があるのではないかと疑いながら読みすすむことになるのだが、その先にもう一ひねりがしてあって油断がならない。
また、主人公ジャック・キャフェリー警部は、少年時代に兄ユーアンが失踪したまま行方不明になったという過去をもっており、トラウマになっているのだが、ここらは二作目以降の物語にもつながっていきそうだ。事件を通じて知りあった女性レベッカはジャックに言う。
「自分の人生を生きられない言い訳にしているなんて、いただけないわ。過去を。なにがあったのかよく知らないけれど、これだけは言える。一人前に大人になったからには、過去になんか縛られているべきじゃないわ−先へ進まなきゃ」
そして、真犯人はこの女性レベッカにもその魔手を伸ばすのだが、はたしてジャックはレベッカを救えるのかがクライマックスとなっている。二作目も読みたくなる作者であることに間違いはない。
| 書名 | 死を啼く鳥 |
| 作者 | モー・ヘイダー |
| 翻訳 | 小林宏明 |
| 出版社 | 角川春樹事務所 |
| ISBNコード | 4-89456-962-0 |