ボディーガード、アティカス・コディアックを主人公とするこのシリーズもいよいよ三作目となり、快調だ。ボディーガードという特殊な職業なだけに、プロとプロとが火花を散らすといった状況こそが、もっとも読みごたえのあるストーリーだと思うのだが、その点、この「暗殺者」はシリーズでも最高の出来といってよいだろう。
煙草訴訟で決定的な証言をする予定の原告側の重要証人。その証人を亡き者にしようと、煙草メーカー側は世界で十指に入るテンと呼ばれる超一流の暗殺者の一人を送りこんできた。本来であれば、アティカスのような一匹狼のボディーガードの手に負えるような仕事ではない。しかし、ひょんな経緯からアティカスは警備保障会社センティネル・ガード社に協力して、その証人を警護することになる。センティネル・ガード社との軋轢のなか、警護をすすめるアティカス達に暗殺者が襲いかかる・・・。
本シリーズも三作目になり、シリーズ物らしい楽しみも増えてきた。前作「奪回者」で警護にあたった少女エリカはアティカスと一緒に暮らしている。今回はあまり目立たない役回りだったが、今後重要な位置づけになりそうだ。そして、おなじみのボディーガード仲間も登場する。また、二人の女性の間でゆれるアティカスの女性問題も前作から引きずっている。前二作では、いささかほろ苦い結末だっただけに、今回は納得のエンディングといって良いだろう。
ただ、世界でも屈指の殺し屋を登場させて、大いに盛り上げてくれたのはいいのだが、今後の展開が心配になってくる。すでに米国で出版されている次回作では今回とつながりのある物語になっているようだ。
さて、重要証人ジェリー・ピューは日中からウオッカを飲んでいたりする人物なのだが、その彼の紹介する話。
「ウィンストン・チャーチルはみんなにアル中だと思われていた。いつだってスコッチを片手に持ってたからな。最初に一杯を注ぐのは朝の九時だったんだ、嘘じゃない。マンチェスターが書いた評伝を読んでみてくれ。わしの話を裏付けてくれるから。しかし、ほとんどだれにも知られていなかったのは、酒を水で薄め、そのまずい代物を何時間もちびちび舐めていた、ということなのだ。(後略)」
| 書名 | 暗殺者 |
| 作者 | グレッグ・ルッカ |
| 翻訳 | 古沢嘉道 |
| 出版社 | 講談社 |
| ISBNコード | 4-06-273373-0 |