英国ミステリ界の巨匠とか、重鎮といった紹介がなされているが、そんな評価がちっとももおかしくない存在となりました。そう、ピーター・ラヴゼイのことです。ピーター・ラヴゼイといえばダイヤモンド警視を主人公とした人気シリーズが有名だが、わたしにはなんといっても「偽のデュー警部」の印象が強い。この「偽のデュー警部」では、悪い企みをもって豪華客船にのった人物が有名な警部と間違われるという設定であったが、ラヴゼイはこのての小悪党(?)を描かせると実にうまい。
フォクスフォードという小さな田舎町で牧師をつとめるオーティス・ジョイはその美貌とさわやかな弁舌で圧倒的な支持を得ていた。しかし、彼のまわりで急死する人間や失踪者が多いこと、そして教会の資金の横領といった疑惑が浮かびあがってくる。そして、彼に心を寄せる人妻レイチェルとの関係は・・・。
この小説、この牧師オーティス・ジョイを中心に物語が進展するのだが、本の腰巻きに「本書の結末は悪魔的で破壊的」なんて書いてあるものだから、なんとなくエンディングが想像ができてしまう。したがって、スリリングな展開などないのに、最後までじっくりと読ませる力量は確かである。何人も人を殺している悪いやつなのだが、なぜか読者は肩入れしたくなるような存在としてうまく描かれている。さすが、ラヴゼイと思うゆえんである。
ただ気になるのはオーティス・ジョイのくすねている金がいかにも小額である。ちりも積もれば山となるとも言えるのだが、最近不良債権問題などでとんでもない額が取りざたされるので、こちらが麻痺しているのだろうか。
ところで、今回はオーティス・ジョイが信徒に紹介するジョークをお教えしましょう。
「ディナーパーティでのテート大主教の話などもそうです。年老いた大主教はサザランド公爵夫人のとなりにすわっていたのですが、不意に顔面蒼白になり、夫人のほうを向いてこっそりささやきました。『弱ったことになりました。これを恐れていたのです。脳卒中の発作がおきたらしい』公爵夫人は彼のほうを見もせずに答えました。『ご心配なく、猊下がつねってらっしゃるのはわたしの足ですのよ、猊下のじゃなくて』」
ネッ、この牧師に人気があるのが判るでしょ!
| 書名 | 死神の戯れ |
| 作者 | ピーター・ラヴゼイ |
| 翻訳 | 山本やよい |
| 出版社 | 早川書房 |
| ISBNコード | 4-15-074718-0 |