本書のまえに読んだエリック・ラストベーダーの「クローン捜査官」でもそうだったのだが、このナンシー・ピカードの「狂った真実」でも犯人は被害者の脳から松果体を抜き取るという犯行におよんでいる。俄然、脚光をあびたかたちの松果体だが、妙なブームではある。しかし、「狂った真実」ではそうした衝撃的な犯行内容に焦点をあてているわけではない。
犯罪ノンフィクション作家のマリー・ライトフットはある事件を追っていた。六歳の幼女が殺された事件で、犯人としてレイモンド・レイントゥリーという青年が逮捕されていた。レイモンドは犯行は認めたものの、彼の生い立ちなどは一切謎につつまれたままだった。そして、レイモンドは有罪判決のでた日に、裁判所から逃走し、マリーに一度だけ電話をしたのち、行方をくらませてしまった。そんなある日、元保安官となのる男から、過去に自分があつかった、子供の行方不明事件とレイモンドとに関係があるというメールがマリーに送られたきた。やがて、レイモンドの意外な過去と、事件の真相がわかってくるのだった。
確かに、レイモンドの意外な過去という展開もミステリとしておもしろいが、それ以上に、ノンフィクション作家として取材をするマリーをとおして、事件の犠牲者の家族の苦しみや悩みをしっかり描こうとしている点に好感がもてる。
ほかの犠牲者の家族から学んだことをキャサリンに伝えることはできる。裁判や刑罰の”満足感”は長つづきしないこと、怒りと悲しみがそれで消えるわけではないことを。でも、わたしは口をつぐんでいる。そんな講釈をこの場でするのは、思いやりがなさすぎる。
最近、日本でも犯人に対する量刑の問題が取りざたされることが多いので印象に残りました。難しいけれど、考えさせられる問題ですね。
マリーの書くノンフィクションの部分と、一人称で語られる部分を交互におりまぜながら、物語全体をすすめる手法もそれなりに成功していると思う。ただ、なんとなくタッチが似かよっているので、もう少しはっきりと書き分けてあればと思います。
| 書名 | 狂った真実 |
| 作者 | ナンシー・ピカード |
| 翻訳 | 宇佐川晶子 |
| 出版社 | 早川書房 |
| ISBNコード | 4-15-078361-6 |