クローン捜査官


今年(2002年)の1月17日に米国で大統領生命倫理委員会なる会合が開かれ、クローン研究が生命の尊厳を脅かす可能性がないかなどを話し合った、というニュースが流れていました。また、米国の科学アカデミーは今後5年間はクローン人間を作る研究を法律で禁じるべきだとする報告書をまとめた、といった報道もありました。この話しは科学の進歩や生命の尊厳といった深遠な問題を含んでいるのだが、あまりややこしいことは考えずにエンターテイメントに徹するとエリック・ラストベーダーの「クローン捜査官」のようなミステリができあがる。

メディアによってペイル・セイントと名づけられた連続殺人鬼。被害者の脳から松果体を抜き取るという異常な犯行を続けていた。生化学研究者のカサンドラ・オースティンは、そのペイル・セイントに検事である夫を殺される。しかし、カランドラは犯行現場に残ったペイル・セイントの血液からクローン人間をつくりだす。ペイル・セイントを追いつめるために彼と同DNAを持ったクローン人間ロレンスを利用しようというのだ。しかし、ロレンスの存在を知ったペイル・セイントは・・・。

冒頭紹介したような問題について、まじめに議論されているぐらいだから、クローン人間をつくりだすのは多分可能なんでしょうね。しかし、その成長を促進し、一日で一年分の成長をはかり、かついろいろな知識も持たせるというのはいくらなんでも話に無理があろうと思うのだが、マァここは目をつぶるしかなさそうだ。

「一日に一年ぶん年をとっていく人間には、一瞬一瞬がこのうえなく大切なんです」両手の指を広げる。「大好きな場所を全速力で走り抜けるみたいなものですよ。速度を落とすことはできないとわかっているから、かぎられた時間のなかで、できるだけ吸収しようとつとめるんです」

最後はおきまりのロレンスとペイル・セイントとの対決にむかって、なかなかそつのない展開だが、もう一工夫ほしい気もする。本書を読みながら、原題は「ペイル・セイント」ではないかと思ったのだが、案の定そうでした。ペイル・セイントとは”青ざめた聖者”といった意味だろうが、「クローン捜査官」という邦題はあまりに安直すぎるでしょう。


書名 クローン捜査官
作者 エリック・ラストベーダー
翻訳 皆川孝子
出版社 徳間書店
ISBNコード 4-19-891653-5