シークレット・サービスの捜査官ビリー・ツリーは職務中の失敗から同僚を死なせ、自らも銃弾をうけた。そして失意のうちに職を辞し、故郷フォールズ・シティにもどってくる。しかし、穏やかなはずの田舎町でも高校で狙撃事件が発生、友人の保安官の依頼で事件の捜査に協力することになる。やがて、麻薬の汚染がこんな片田舎にも及んでいることを知らされる・・・。
アイルランドの血をひき、勇敢であることを義務づけられているビリー。一方で職務中の失態から自らの異なる一面と、恐怖を体験したビリー。その狭間で時に無謀との思える行動もとる。友人の保安官パット・カンケルの次のセリフが本書の基本的なテーマを表している。
「おまえはおれになにも証明しなくてもいいんだ、ビリー。おまえはやっかいな状況下で当然なすべきことをなした。おまえは生き延びた、やり抜いた。おれにはわかる、だれにでもわかる、おまえがどれほどの代価を支払ったかがな。いつまでも払いつづけなくてもいいんだ。ここらの人間をかたはしから納得させなくていいんだ。なにがあろうと、おまえはここいらじゃあ、いつだって英雄なんだ」
失意のうちに故郷へ戻った主人公とまちうける事件、そして意外な犯人(実は登場人物が少ないこともあって、それほど意外ではないのだが)と、全体の枠組みは結構面白いのだが、話の運びは少しもたつく感もあって、残念なところだ。クライマックスの巨大な穀物工場を舞台としたアイデアは秀逸。これではアメリカの農業に勝てるわけがないと、変な感心をしてしまった。
| 書名 | 故郷への苦き思い |
| 作者 | デヴィッド・ウィルツ |
| 翻訳 | 汀一弘 |
| 出版社 | 扶桑社 |
| ISBNコード | 4-594-03369-5 |