ネルソン・デミルの新作「王者のゲーム」だが、主人公ジョン・コーリーがこんな感想をもらすシーンがある。
ファーストクラスの食事はわるくなかったし、ジョン・トラヴォルタが陸軍犯罪捜査局の捜査官を演じた機内上映の映画は−ロングアイランド・ニューズデイ紙には酷評が載っていたと記憶するが−すばらしい出来ばえだった。
このジョン・トラヴォルタが陸軍犯罪捜査局の捜査官を演じた映画とは、デミルが原作を書いた「将軍の娘」のことなんでしょうね。ちゃっかり、こんなことを書いているところが面白いが、さて肝心の物語のほうはどうだろうか?
テロリスト、アサド・ハリールをニューヨークに護送中のジャンボジェット機は、交信が途絶えたままJFK空港に無事着陸する。しかし、レスキュー隊員が飛行機に乗り込んで見たものは三百人の乗員・乗客のの死体だった。そしてその中にアサド・ハリールの姿はなかった。ジョン・コーリーたち連邦テロ対策チームの懸命の捜査にもかかわらず、ハリールの足取りはつかめなかった。しかし、一方で1986年にアメリカが行ったリビア爆撃に怨みも持つアサド・ハリールは復讐のため、ある人物たちを狙っていた・・・。
主人公ジョン・コーリーは行動派、かつなかなかの皮肉屋でその語り口は読んでいて楽しい。彼はニューヨーク市警出身ということもあって、FBIやCIAといった機関の官僚的な思考に対して鋭い指摘をする。たとえば・・・。
「ほら、わかっただろう? とりあえず既成事実をつくってしまえば、連中はおれたちがすでにやったことに承認を出すんだよ。ところが、最初に許可を願いでると、連中はなんとかしてノーという口実をさがじはじめるわけさ」
確かに、役人根性を揶揄して、その通りなのだが、そんな官僚制度を描くことにページをさいて、本筋のハリールの捜査の進展が一向に進まないのだ。従って、いくら読んでも追いつ追われつのハラハラドキドキの展開にならないので、読者としてはストレスがたまる結果となる。アサド・ハリールの隠されたもう一つの目的が判ってから、かろうじてコーリーとハリールの対決らしきものがあるのだが、この結末もなにやら肩すかしをくらったようで、1500枚も読んできたわりには物足りない。
| 書名 | 王者のゲーム |
| 作者 | ネルソン・デミル |
| 翻訳 | 白石朗 |
| 出版社 | 講談社 |
| ISBNコード | 4-06-273308-0 4-06-273309-9 |