アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞最終候補作というふれこみのサリー・ライト著「難事件鑑定人」である。最終候補作ということは賞には選ばれなかったということなのだが、さてその評価はどうしたものか。
大学で古代の骨董品を鑑定し、修理や管理をする仕事についているベン・リースのもとに、教え子であるエレン・ウィンターから依頼がまいこむ。エレンは、病気で急死した大学教授の叔母ジョージーナ・フレッチャーからその豪邸を遺産相続することになっていた。しかし、生前のジョージーナからエレンにあてた手紙が届く。そして手紙には「どのような原因でわたしが死のうと、それは誰かによって仕組まれたものだ」と書いてあった。はたしてジョージーナは本当に殺されたのか、そして犯人は誰か、ベンはエレンに協力しながら犯人を突き止めようとする。しかし、ジョージーナのまわりには彼女と利害関係のある人物がたくさんいた・・・。
なんと言うか、古式豊かな(?)探偵小説ですね。探偵役のベン・リースが被害者と関係のあった人物ひとりひとりに話をききながら、手がかりを追う。しかし、「難事件鑑定人」というほどの推理の冴えは見うけられない。おまけに巻頭の登場人物の紹介に52名の名前が載っているのだが、誰がだれやら、読んでいる方はそれを追っかけるだけで苦労する。最後に作者サリー・ライトの主人公ベン・リースへのインタビュー記事をはさんだり趣向はこらしてはいるものの、肝心のミステリ部分が弱い。稀覯本などに関心のある人には面白いかもしれないが、まあ平凡な作品ですね。
ところで、この物語の時代設定は1961年。キューバ危機のあった頃で、ケネディに関する話題が登場人物によってかわされる。
「ケネディの父親がイギリス大使を務めていたころに、女の尻を追いかけたりせずに大英博物館で歴史書を読んでいれば、息子のジョンにももっとためになるアドバイスをあたえることができたかもしれない」アレックスがほくそえんだ。
そうなのか、ケネディが女の尻を追っかけていたのは父親譲りなのですね。
| 書名 | 難事件鑑定人 |
| 作者 | サリー・ライト |
| 翻訳 | 長島水際 |
| 出版社 | 早川書房 |
| ISBNコード | 4-15-172951-8 |