本の腰巻きには「ジェフリー・ディーヴァーも脱帽」などと書いてあるが、なんともはや、評価のしようがないんだな、これが。ラッセル・アトウッドの「Aアヴェニューの東」のことです。とにかく、とらえ所のない作品だ。
マンハッタンのイーストヴィレッジで私立探偵をいとなむペイトン・シャーウッドは男たちにからまれていた若い娘を助けるが、逆に男たちにのされてしまった。おまけに助けたその娘はペイトンが持っている唯一の高級品ローレックスの時計を盗んでいった。時計を取り戻すために、その娘の行方をおうペイトンだったが、娘と関係のあった男の死体と出くわすことになる。そして、麻薬をめぐるいざこざに彼も巻き込まれていく・・・。
こんなストーリーなのだが、これといった盛り上がりもないまま主人公がイーストヴィレッジをうろうろしているうちに、事件は解決をしてしまう。まあ、この種のミステリでは事件そのものよりも、主人公や主人公を取り巻く人々、そして街のイメージのほうが主題なのだろうが、その肝心の魅力的な主人公の造形にも失敗しているように思える。ペイトン・シャーウッドという名前は語呂がいいのだけれど。
イーストヴィレッジらしく多彩な若者が登場してくるが、それに対するペイトンの独白。
二人の男の奇想天外な様子を見ても、わたしは少しもひるまなかった。自分の経験からすれば、外面が複雑怪奇な人間のほうが、自分というものを内面深く隠している人間よりはるかに御しやすい。警戒を要するのは、この後者のような連中だ。
| 書名 | Aアヴェニューの東 |
| 作者 | ラッセル・アトウッド |
| 翻訳 | 塩川優 |
| 出版社 | 早川書房 |
| ISBNコード | 4-15-172701-9 |