トム・サヴェージの「捕食者の貌」は最近多いジェット・コースター風ミステリの一種だが、意外な結末も含めて最後まで楽しめる作品だ。トム・サヴェージの作品を読んだのはこれが初めてだが、今後はしっかりマークしておく必要がありそうだ。
作家マーク・スティーヴンソンは、11年前に実際に起こった5家族24人が殺されるという連続殺人事件を題材にした「深い闇」で一躍有名になる。しかし、そのマークのもとに一枚のフロッピー・ディスクが届く。中身はファミリーマンと名付けられたその殺人鬼の正体を知りたければ、指示通りに行動しろというものだった。スカベンジャー(捕食者)と名乗るその送り主がファミリーマンではないかという疑いを抱いたマークはその指示に従うのだったが、途中で殺人事件も発生し、抜き差しならない状況に陥っていく。そして、マーク自身の秘密とファミリーマンの謎がしだいに見えてくるのだが・・・。
注意深い読者ならマークの過去の秘密も、スカベンジャーの正体もある程度予測がつくであろう。その程度にはヒントが与えられている。が、それにしても後半の展開は予想外で思わず唸ってしまう内容だ。読者によってはフェアでないと感じる人もいるかもしれないが、小生は大いに楽しみました。無論、ゲーム性の強いストーリー展開なだけに、この目的のためにわざわざこんな事をする必要はないという批判もあるだろうが、まぁそれを言うのは無粋というものでしょう。
ところで、作中にこれといったセリフがなかったので、今回は訳者あとがきのヒッチコックの言葉を引用しておきましょう。
かのヒッチコックが、サスペンスとスリルとショックの違いを説明した有名な話がある。乗るべき列車に間に合うかどうかはらはらしながら駅に駆けつけるのがサスペンスで、動きだした列車に飛び乗ってステップにしがみつくのがスリル。ほっとひと息ついたのち、それが自分が乗ろうとした列車でなかったと気づくその一瞬がショックだというのだが、(後略)
| 書名 | 捕食者の貌 |
| 作者 | トム・サヴェージ |
| 翻訳 | 奥村章子 |
| 出版社 | 早川書房 |
| ISBNコード | 4-15-172801-5 |