シャドウ・ファイル/狩る


正直に白状すれば、いわゆるロマンス小説など読んだこともないのに、一等低く見ておりました。ところがロマンス小説出身というケイ・フーパーのシャドウ・ファイル三部作を読んでそれが偏見であったことを痛感したしだい。この「シャドウ・ファイル/狩る」は三部作の締めくくりの作品ということもあって、前二作で脇役を演じたFBI捜査官ビショップが中心となり連続殺人事件の謎を追う展開となっている。

閑静な田舎町グラッドストーンで十代の少年少女が連続して殺害されるという事件が発生する。しかも死体には一滴の血も残されていなかった。あまりに異様な犯行に女性保安官ミランダ・ナイトはFBIの応援を要請する。そして特殊能力を用いて捜査にあたる特別チームが派遣されてくるが、そのリーダー、ビショップ捜査官とミランダの間には過去の事件に根ざした緊張感がただよっていた。超能力とも呼ぶべき特殊な能力を用いた捜査陣をからかうように新たな殺人事件が発生するのだが、自らも予知視という特殊能力を持っているミランダには、この事件の最後の犠牲者が誰であるかが判っていた・・・。

無論、真犯人はだれかという興味もあるが、それ以上にビショップとミランダの間にあった過去の出来事とは何かという謎もあり、それが物語の展開にあわせて少しずつ読者に明かされる仕掛けになっている。そしてミランダの予知通りの結末が待っているのかハラハラしながら読むことになる。超能力というキワモノがテーマではあるが、それに寄りかからずにストーリーで楽しませてくれるケイ・フーパーの力量はたいしたものだ。

「いえ、まあ、ちょっと訊いてみただけです。ときどき、考えるんですよ。われわれのようにいわゆる超常能力をもっていると、ときおりほかのそうでない人々よりぬきんでてて、彼らを助けてやれると考えがちです。でもそうじゃない。われわれもほかのみんなと同じように、暗闇のなかをよろめきながら進んでいくだけなんだ」

とは、ビショップの部下の捜査官トニーのセリフだが、このセリフが示すように超能力者といえども普通の人間と同じように悩みや愛を抱えている。ただ、セックスの後に超能力が効かなくなる設定などは、セックスに過大な評価を与えすぎとも思えるし、最後の土壇場での超能力の使い方は、ちょっと禁じ手の感もあるが、まあハッピー・エンドのためには致し方ないか? ここらあたりはロマンス小説作家らしいと言える。

ところで本書の解説は作家の恩田陸さんなのだが、この解説がケイ・フーパーの作風を良く伝えているし、読み物としても面白くできている。生意気な言い方だが、秀逸な解説である。こちらの方もおすすめです。


書名 シャドウ・ファイル/狩る
作者 ケイ・フーパー
翻訳 幹遙子
出版社 早川書房
ISBNコード 4-15-040990-0