路上の弁護士


ジョン・グリシャムは「法律事務所」、「ペリカン文書」の相次ぐヒットで一躍有名になった作家だ。小生にとってもハードカバーで購入するお気に入りの作家の一人だったのだが、「処刑室」という取りあげているテーマも本も重たい、失敗作があって、それ以来、文庫本になってから買う作家に格付けを下げております。そんな訳で、今回文庫になった「路上の弁護士」を紹介しましょう。

マイクル・ブロックは全米で五本の指に入るという巨大法律事務所で働くエリート弁護士だった。ある日、事務所に侵入したホームレスの男に銃を突きつけられ人質となる事件が発生する。ホームレスの男が警官に撃たれ死亡したことで、事件は解決したが、マイクルには疑問が残った。ホームレスの男は何が目的だったのか、謎を追うマイクルはホームレスを支援する法律相談所を訪ねる。そこでマイクルはホームレスたちの実態と彼らを助ける弁護士たちの存在を知ることになる。そして、自分の法律事務所がホームレスたちの強制立ち退きに関与していたことを知る・・・。

この「路上の弁護士」は一言でいってしまえば、社会性には富んでいるが、事件性には乏しい。確かに強制立ち退きの件はあるものの、それがこのミステリの骨格をなしているわけではない。むしろ、この事件をきっかけに自らの人生の生き方を変えようとする若い弁護士の青春小説といった方がいいだろう。ジョン・グリシャムは社会性のあるものを書きたいという欲求が強いらしく、冒頭の「処刑室」以降もエンターテイメント性を維持しながらタバコ訴訟の問題をとりあげたりしている。今回もホームレスの問題をとりあげ、彼らの相談にのる弁護士の日常など丹念に描かれており、興味深い。ただし、ミステリとして読むとあまりに起伏がなく、面白みにかける。

大規模法律事務所で追越車線の人生を送っているときには、金は無限に流れこむように思えるのだ。

主人公マイクル・ブロックの独白だが、まさに高速道路の「追越車線」を走っている弁護士の報酬はこの本の中にも出てくるが、半端ではありませんね。最初から、一般道で渋滞に巻き込まれているわれわれには想像もできないが、一般道には一般道の幸せがあるということでしょうか。


書名 路上の弁護士
作者 ジョン・グリシャム
翻訳 白石朗
出版社 新潮社
ISBNコード 4-10-240917-3
4-10-240918-1