確信犯


最近では法廷ミステリもちっとも珍しくない、というより雨後の竹の子のごとく次から次へと出てくるので、食傷気味の感もあるのだが、ペリー・メイスンの昔から好きなものだから、つい手が出てしまう。スティーヴン・ホーンの「確信犯」もそんな法廷ミステリだが、なかなか面白い作品だった。

一度は成功をおさめながら、それを捨て場末の弁護士に甘んじているフランク・オコーネル。彼のもとに世間の耳目を集めるたいへんな事件が持ち込まれる。依頼人は社交界の花形、美貌のアシュレー・ブロンソン。彼女は元商務長官殺害の容疑で逮捕されていた。しかも、彼女は父親の復讐のために元商務長官を殺害したことをフランクに告白する。しかし、フランクは司法取引も拒否し、あくまで無罪評決を目指して法廷でたたかう決意をする。被告自らが認める犯行からいかに無罪を勝ちとろうというのか? 事件の背景を調べるうちにFBIの奇妙な関与か判明、裁判は予想外の展開をみせる。

被告を見たという目撃者の証言をめぐる弁護側の戦術はトリッキーで興味深いものがあるし、事件の真相に対しても意外な事実が用意されており、充分たのしめると思う。ただ、裁判の決着の仕方は多分に政治的で、ミステリとしてみた場合に賛否が別れるでしょうね。

フランクは妻子とは別居中で、妻は別の男との再婚を考えているという設定なのだが、息子へのクリスマス・プレゼントとして野球のグローブを贈るのは自分でなければならない−再婚相手の男ではなく−というこだわりから妻と喧嘩をするシーンがある。最近、イチロー効果でアメリカ人の野球に対する思い入れに接する機会が多いだけに、妙に感心していまったのだが、こんな細かな点もふくめて良く描かれている。ご多分にもれず美貌の依頼人との危険な関係もあるのだが、そんなこんなも全てうまくおさまって大団円をむかえるのが、ちょっと出来過ぎではありますが・・・。

さて、今回紹介するセリフは、事件に関係していると思われる富豪について調べるために、長年勤めたの元家政婦をたずねた際の、元家政婦の言葉です。

「ここにいらっしゃって、正解だったわ。汚れた場所を一番知っているのは、古い箒だもの」

書名 確信犯
作者 スティーヴン・ホーン
翻訳 遠藤宏昭
出版社 早川書房
ISBNコード 4-15-172901-1
4-15-172902-X