シャドウ・ファイル/潜む


この本はケイ・フーパーの<シャドウ・ファイル>三部作の二作目にあたる。この三部作では一貫して超能力や超常現象がテーマになっているが、事件そのものや登場人物は独立しているので、前作「シャドウ・ファイル/覗く」を読んでいなくても充分楽しめる構成になっている。

交通事故で瀕死の重傷をおったフェイス・パーカーは奇跡的に一命をとりとめるが、過去の記憶を一切失ってしまった。入院中の自分の面倒をみてくれたのが、雑誌記者のダイナ・レイトンであったことを知らされるが、そのダイナが行方不明となってしまった。その頃からフェイスは奇妙な夢を見るようになる。夢のなかでダイナとおぼしき女性が、入手した証拠のありかを吐けと責められていた。ダイナは何かを事件を追っていたらしいのだが、そもそもフェイスとダイナの関係も定かでない。ダイナの婚約者のケイン・マグレガーに協力し、ダイナの行方を探すフェイスだったが、やがてフェイスの交通事故にも不審な点が多く、仕組まれた事故だったことがわかった。一体、事件の背後には・・・。

前作の感想でも述べたように超常現象をとりあげながら、それに寄りかかることなく、ミステリとうまく融合できている。とくに今回はフェイスの過去の人生が少しづつ浮きぼりになっていき、それに伴い事件との関係が見えてくるあたりがうまく描けている。また、ケイ・フーパーはロマンス小説でデビューした作家らしく、しっかりフェイスとケインの恋物語をおりこんでいる。二人が惹かれあうには、それなりの理由があって結末でそれが明らかにされる(少しオカルト的ではある)が、ここらの恋愛もあまりくどくなく、作者のバランス感覚の良さを見せている。

次に紹介するのは、フェイスに惹かれることに悩むケインと友人ビショップの会話である。

ビショップは静かにいった。「ダイナのほかにも愛する人ができたからといって、彼女の思い出を裏切ることにはならない」
「じゃあ、そのことで自分を責めたくなるのはなぜなんだ?」
ビショップは少し考えていった。「自分の気持ちを認めるより罪悪感にひたる方が楽だからさ」

このビショップはFBIの捜査官でもあり、三部作を通して登場する人物で、三部作の最終作「シャドウ・ファイル/狩る」では重要な役回りになるらしい。この「シャドウ・ファイル/狩る」も来月には出版の予定だ。このように前作の記憶があるうちに、一連の本が出るのは読者にとってありがたいことだ。


書名 シャドウ・ファイル/潜む
作者 ケイ・フーパー
翻訳 宮内もと子
出版社 早川書房
ISBNコード 4-15-040986-2