葬儀屋の未亡人


フィリップ・マーゴリンの新作「野性の正義」を読んで、前作「葬儀屋の未亡人」を読み逃していたことに気がついた。もっぱら文庫本を中心にチェックをかけているので時折こうしたことが起こる。そろそろ文庫になりそうな気もしたが、近所の図書館にあったので借りてきた。

上院議員を目指して熾烈な選挙戦をくりひろげているエレン・クリース。ある夜自宅に強盗が侵入、葬儀屋を営むエレンの夫が殺害される。もと警官でもあるエレンは果敢に反撃し、強盗を射殺する。しかし警察の捜査は思わぬ方向へ展開、エレンが殺人罪で逮捕されてしまった。そして、その裁判を担当することになったクィン判事に対し、実に巧妙な罠がしかけられる。裁判をある方向に誘導するように脅迫されるのだが・・・。

さすがにフィリップ・マーゴリン、面白い。しかし序列をつけるとすれば、「黒い薔薇」や「野性の正義」よりは少しおちる。事件そのものより、脅迫を受けたクィン判事の苦悩が物語の中心ということもあるし、はたして誰が真犯人かという部分も選択肢が限られており、マーゴリンのアッと言わせるいつもの手並みが発揮されていない。そうは言っても、無論水準以上の面白さは保証されているし、一読して損はない。

欧米のミステリではタフな女性にことかかないが、「葬儀屋の未亡人」でもエレンの弁護をするメアリー・ギャレットなる女性弁護士が登場する。そのメアリーのエレンへの言葉。

「アドヴァイスがるの。ほとんどの依頼人は実行できるほどタフじゃないんだけど、あなたならできると思う。なんであれ、起きてしまったことは起きてしまったことよ。どんなに変えたいと思っても過去を変えることはできない。だから、旦那さんが殺されたことをあれこれ考えるのはやめなさい。それはわたしがやるわ。そのために人は弁護士を雇うんだから。だからあなたはあなたの人生を生きて、心配はほかの人にやらせなさい。わたしがふたり分心配してあげるから」

いやぁ、実にプロフェッショナルかつタフ。小生も仕事でこれぐらいの啖呵をきってみたいものです。


書名 葬儀屋の未亡人
作者 フィリップ・マーゴリン
翻訳 加賀山卓朗
出版社 早川書房
ISBNコード 4-15-208257-7