シャドウ・ファイル/覗く


捜査する側が超能力を持ちいるミステリがあるが、筋道のたった論理や理屈を重んじるミステリの中にあっては、この種のものはどうしてもキワモノといった印象があるし、好き嫌いがはっきり分かれるでしょうね。肝心なときに超能力で犯人がわかってしまっては、あまりにご都合主義で、そこらの匙加減が難しい。さて、ケイ・フーパーの「シャドウ・ファイル/覗く」もそんな超能力を持った主人公が連続殺人事件を追う物語だが、思いのほかうまくまとまっている。予想外の掘出し物といって良いだろう。

他人の心のなかに入り込むことができるという特殊な能力をもつキャシー・ニールは、過去にもその能力をいかして捜査に協力したことがあった。しかし、ある事件での失敗と超能力者ならではの苦悩から、閑静な片田舎に引っ込む。ところが、偶然、強烈な殺意を察知したことから、警察に殺人事件を予告する。はたして予告どおりに連続殺人事件が発生し、田舎町は恐慌をきたす。キャシーはその能力をつかって犯人をつきとめようとするが、犯人もまたキャシーの存在を察知し・・・。

超能力を信じない保安官との軋轢や、主人公の恋愛(ケイ・フーパーはロマンス小説の作家らしくお手の物)、思わぬどんでん返しと、上手くツボを押さえて読みやすい小説に仕上がっている。ただし、装丁は感心しない。書店で新刊の文庫本を物色していたのだが、あまりに安っぽい表紙に最初は手にも取らなかったのだが、他に面白そうな本がなかったので目がいったしだい。書店で表紙をみても、毛嫌いせずに手にとってみることをおすすめする。

さてキャシーの母や伯母もまた超能力の持ち主という設定なのだが、その母の言葉を紹介するキャシー。

「わたしの母から言われていたの。医学が進んで脳についてもっとずっと多くのことがわかるようになるまでは、超常能力はとても理解してもらえないだろうと、母は信じていたわ。科学というものは、理解できないものについては全力をあげて反証しようとするきらいがあるのよ」

一応、自分を技術屋だと思っている小生としても良くわかるのだが、”科学”に限らず人間は、自分が理解できないものを否定したいものらしい。


書名 シャドウ・ファイル/覗く
作者 ケイ・フーパー
翻訳 幹遙子
出版社 早川書房
ISBNコード 4-15-040981-1